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『The Social Dilemma』と資本主義の限界

Netflixのドキュメンタリー『The Social Dilemma』(監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影)を見ての感想文です。

まずドキュメンタリーとしての演出がすごすぎて「Netflix、お前もそういうとこだぞ」というのが一番の感想ですが、現代の巨大テック企業を今後どのように倫理的に規制していくかが問われている作品でした。

現状の資本主義の仕組みではこれらの企業の膨張を止めることはできないので、それへの対抗策として中毒性の自覚による一人一人の「自制」や国際的な法制度による「規制」がこの先求められるように思います。

「userがproduct」であるビジネスモデルについて

"If you're not paying for the product, then you are the product."

プラットフォーマーの出現によって今までマーケティングにおいて不可能だったレベルでの「確実性」を企業に提供できるようになりました。目の前に機械のツマミを用意してそれらを少し調整するだけで消費者の行動を操作できるという表現が映像で出てきましたが、これはマーケターにとっては夢のようです。

それを実現できたのが、魔法でも心理学でもクリエイティビティでもなく、「データ」だったということが、この先の情報社会を物語っているような気がします。

しかしビジネスモデルとして、「データ」を持つものが無自覚な一般から搾取をしていると考えることも間違っていないと感じました。そのため、インタビューでも述べられているデータの保有量に応じた課税、というのは今後検討すべき規制だと思います。

自覚できないmanipulation

"they're controlling us more than we're controlling them."

膨大なdataによって成功が裏付けされたアルゴリズムは、「なぜ」「どうやって」「何を」を考慮することなくユーザーを誘導する最適解を日々更新しています。

毎日SNSやYoutubeで時間を浪費してしまうのは、「意思が弱い」とか「集中力がない」というレベルではなくもうそういう風に組み込まれているものとして考えなければいけないのだと気付かされました。いつの間にか企業やプロパカンダの目的に沿う方向へ自分が操作されてしまっているというのは怖いですけど、確かに言われてみればそういう面もあるような、、(特に物欲については)。

従来の広告のように、デジタルマーケティングでも売る側と売られる側双方の利益を訴求しつつ、それぞれが倫理観を持って自制し、ひたすらに効率化のみを追求してしまうことに規制をかけていくことが今後社会に求められると思います。

FAKE NEWSと情報拡散構造

"When you go to Google and type in 'Climate change is', you're going to see different results depending on where you live."

SNSによって情報拡散の仕方が変わっていることも自覚しなくてはいけないと感じました。

SNSの政治利用や、デモの扇動、フェイクニュース、陰謀論(さらに言えば2020年のBLMムーヴメント)に対して何とも言えない違和感をずっと感じていたのですが、この情報拡散構造が大きく影響しているように思います。

今やニュースサイトのアプリでさえも"マイニュース"といった形でユーザーそれぞれに合わせてニュースが表示されます。それはユーザー一人一人に最適化されたもので、新聞やテレビのように「何が正しいか」「何が重要か」は選定基準に含まれていません。パーソナライズが進んだ社会では文字通り、一人一人の見えている世界が違うのです。

人々が"欲しい情報"のみが拡散される社会では「正しさ」も「倫理」もなくなってしまいます。ニュースに対する自覚とメディアの役割をアップデートしなければいけないと思いました。

こんなプラットフォームがこのまま膨張し更新されていってしまっては、うちはマダラの月の眼計画も夢じゃなくなってくるなと思いました。

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