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【文学編27冊】佐渡島庸平氏(コルク代表)

小説はわからないからいい。

経歴

1979年生まれ。
東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社。
週刊モーニング編集部にて、『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティ形成・運営などを行う。現在、漫画作品では『オチビサン』『鼻下長紳士回顧録』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)『ドラゴン桜2』(三田紀房)等の編集に携わっている。従来の出版流通の形の先にあるインターネット時代のエンターテイメントのモデル構築を目指している。

1、読んでいない本について堂々と語る方法

題名こそふざけているが、「本を読むとはどういうことか」「既読と未読の違いはどこにあるか」などについて真剣に論じた書です。「本格的な読書論はこの本か、もしくは次に挙げた『読書について』がお薦めです。


2、読書について 他二篇

「読書とは他人にものを考えてもらうことである」「ほとんど丸1日を多読に費やす勤勉な人間は、次第に自分でものを考える力を失っていく」。哲学者・ショウペンハウエルによる読書に関するアフォリズム集です。


3、本の読み方 スロー・リーディングの実践

芥川賞作家が、速読・多読が求められる現代人に対し、あえて1冊の本を丹念に読む「スロー・リーディング」を提唱しています。真の読書の楽しさを説いています。


4、「罪と罰」を読まない

翻訳者、作家、装丁家など出版に関わる仕事をしながらドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことのない4人が、わずかな手がかりを基に、内容を好き勝手に想像していきます。既読の人も未読の人も爆笑必至です。


5、反共感論 社会はいかに判断を誤るか

一般的に他人に共感するのは良いことだと思われています。だが「安易な同情」と呼べるような共感は、時に合理的な判断の妨げになります。心理学、脳科学、哲学の観点から人間の「共感」の本性に迫ります。


6、文学効能事典 あなたの悩みに効く小説

「小説には気を紛らわせ、我を忘れさせる力がある。」歯が痛い時にはトルストイの『アンナ・カレーニナ』を薦めるなど、小さな悩みから大きな悩みまで、悩み別に「効く」小説を紹介してくれます。


7、書記バートルビー/漂流論

「人間はその存在ではなく、『何をしているか』で判断される。主人公の謎の行動は、そのことへの違和感を表明しているのではないか。大学時代にはじめて読んでから16年経ち、ようやくこんな感想を抱くようになりました」。


8、ゴドーを待ちながら

「ゴドー」なる者を待ちながら道にたたずむ2人の男たちの会話劇です。「ゴドーとはゴッドか、それとも死か。ストーリーは全く面白くないのに魅了されます。」


9、新編 不穏の書、断章

ポルトガルの詩人、フェルナンド・ペソアの散文集です。「ペソアは詩もすごくいいけれど、まずは散文が読みやすいかもしれません。彼の言葉を中心に連想をしてみるのは、とても価値のある行為です。」


10、一九八四年(新訳版)

1949年に近未来としての1984年を想定して書かれた作品です。「今のネット社会は、この物語の舞台となっている『監視社会』を想像させる。改めて今読むと、すごく面白いと思います。」


11、悪童日記

戦時下、祖母の元へ疎開した双子の男の子の独白で、暴力やセックスをドライに描きます。「文学というのは、何らかの美しさを持っていると思う。その美しさは必ずしも人間の高貴な姿や状態とは限らない。」


12、インド夜想曲

失踪した親友を探しにヨーロッパからインドに来た男は、ボンベイ、マドラス、ゴアと旅を続けるうちに不思議な体験を重ねます。果たして探しているのは誰なのか。


13、その名にちなんで

アメリカに移住してきたインド人一家の30年間の物語です。若き日の父が事故で九死に一生を得たとき、ゴーゴリの本を読んでいたことにちなんで「ゴーゴリ」と名付けられた主人公は、やがてその名を嫌うようになる。


14、存在の耐えられない軽さ

舞台は1960年代のチェコスロバキア。腕のいい外科医だが女遊びを繰り返すトマシュは、純朴な田舎娘テレザと結婚する。だがどうしても浮気がやまない。やがて2人の運命を「プラハの春」が翻弄する。


15、百年の孤独

いとこ同士の結婚で奇形児が生まれたホセ・アルカディオとウルスラ夫妻。彼らによって開拓された村「マコンド」が隆盛の末に廃虚と化すまで、一族に受け継がれる運命を7代にわたって書いた長編。


16、Carver’s dozen

かつてレイモンド・カーヴァーの全作品を翻訳した村上春樹が、彼自身の「パーソナル・ベスト」をチョイスした短編集。訳者による全作品解説付きで、カーヴァー初心者にもその魅力を余すことなく伝える。


17、グレート・ギャツビー

「ギャツビーの抱える寂しさは、年を取らないと理解できない。読み返すたびに、新しい発見がある。これを若くして書いたフィッツジェラルドはすごいと思う。」村上春樹による意欲的な新訳も話題に。


18、死をポケットに入れて

無頼派作家ブコウスキー最晩年の日記です。「ブコウスキーは詩もお薦め。詩を読む習慣のない人は多いでしょうけど、読書会などで誰かと一緒に読むといいですよ。緩やかに意味がわかっていくのが面白い。」


19、スラップスティック

人類を孤独という病から救うため、大統領は人々に新たなミドルネームを与えた。同じミドルネームを持つ者は「家族」になるのだ。人間の愚かさを皮肉交じりのドタバタ喜劇として描くSFファンタジー。

20、老人と海

不漁続きで運から見放されたと85歳の漁師・サンチャゴは、彼を尊敬する助手の少年を別の船に乗せ、たった1人で漁に出た。4日間にわたる大魚との戦いの末に勝利するが、彼の乗った小舟をサメが襲う。


21、ダロウェイ夫人

ロンドン在住のダロウェイは、お茶会の準備のために買い物に出る。彼女の思考は過去から現在へ、また現在から過去へと自由に行き来する。「意識の流れ」という手法が使われたことで文学史に残る作品。


22、樅ノ木は残った

主人公・原田甲斐が、仙台藩伊達家のお家騒動に巻き込まれていく時代小説。「山本周五郎さんはいわゆるエンタメ小説に分類されることもありますが、色々なことを考えさせてくれます。」


23、哀愁の町に霧が降るのだ

昼でも薄暗い江戸川区小岩の6畳のアパートに貧しい男4人が同居することに。作者の自伝的青春小説。「椎名誠さんの小説には、読みやすさの中に浮かび上がってくる情景の美しさがある。」


24、世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド

現代日本が舞台の「世界の終わり」と、壁で囲まれた街を舞台とした幻想的な「ハードボイルド・ワンダーランド」という2つの全く異なる物語が交互に進み、やがて2つの物語には関連が見えてくる。


25、新装版 コインロッカー・ベイビーズ

コインロッカーに捨てられた赤ん坊だった、キクとハシ。やがてハシは本当の母親を探しに上京するが……。「この作品の素晴らしい世界観は一言では伝えられない。ぜひ読んでみてほしい。」


26、冷血

1959年、カンザス州の村で農場主の一家4人が惨殺された。この事件を『ティファニーで朝食を』などで知られる作家カポーティが自ら取材。実話を物語形式で描く「ニュージャーナリズム」の源流となった。


27、心臓を貫かれて

「『冷血』の現代版のようなもので、村上春樹が訳しています。僕たちにとっては遠い昔の事件なので、ノンフィクションといってももはや過去のフィクションとほとんど同じ。読み応えがあります。」

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