見出し画像

デザイナーとPMの役割の違いと重なりを整理してみた。

noteのデザイナーの松下です。最近、プロダクトマネージャーの領域にも挑戦しています。

noteのデザインチームがとらえる「デザイン」の幅は広く、どの段階から設計に入り、アウトプットは何かまで、とても柔軟です。
アウトプットはUIやグラフィックだったり、広報的な記事だったり、ときには運用ワークフローそのものだったりします。

そういった意味では、自然と、noteのデザイナーはプロダクトマネージャーの領域ともグラデーションになっていました。

これまでPM的役割はデザイナーやエンジニアが兼業しても成立していたのですが、ここ1~2年で事業的にも組織的にもスケールが大きくなり、専門職としてPMが必要になってきました。
そうして、私個人はPMの領域によりコミットしてみることになりました。

「じゃ、これまでからどうマインドを変えるといいのだろう?」
これまで境界が曖昧だったからこそ、違いを自分の中で整理してみる必要性を感じていました。
この記事では「一般的にPMとUXデザイナーはどう違い、どう重なるのか」、最後に「noteでやっていること」を書いていきます。

いまUXデザインをされていて、その延長として、PMについても興味があるかたはいるのではないでしょうか。
ご自分の選択肢にPM(あるいはUXデザイナー)が含まれるのかどうかの参考に少しでもなればうれしいです。

※PMとデザイナーの役割は、組織によって異なるファジーなものだと感じているので、現時点の私の解釈として読んでいただけますと🙇‍♂️

UXデザイナーとPMの役割の違い

一番抽象的かつざっくりいうとこうなります。

・UXデザイナーは、一気通貫したユーザ体験を、プロダクトを通して届ける
・PMは、ユーザー体験を含む、あらゆる要素の点と点を結び、プロダクトの成功を目指す

画像1

プロダクトを構成する要素は複数あります。ビジョン・ミッション、ビジネスモデル、価格、顧客、実装、そしてユーザー体験などなど…。ユーザー体験は要素のひとつなわけです。

ユーザー体験の専門家として、定義・具体化していくのがUXデザイナー。
要素を複合的に把握し、最終的にプロダクトとしての成功を目指すのがPMです。

具体的な担当領域の違いと重なり

プロダクトを作るフローは大きくCore、Why、What、Howに分かれます。

(この図は、及川 卓也,小城 久美子,曽根原 春樹氏 の著書、『プロダクトマネジメントのすべて』「プロダクトの4階層」を参考にさせていただきました)

プロダクトのフェーズや組織体制によって変わりますが、PMはこの階層すべてに関わる可能性があります。

ケースによっては、ミッション・ビジョンや、事業戦略の定義から入ることもあり、そのくらい深く真剣にプロダクトと向き合うポジションなのが「ミニCEO」とも言われるゆえんかなと。
ただし、事業自体が大きくなったり発展フェーズの場合、より限定・分担された目的にPMがアサインされるケースが多く、その場合はさらにフォーカスポイントが絞られた業務内容になります。

いずれにしても、「なぜやるのか?」「なにをやるのか?」「なにをもって成功といえるか?」を握って推進することが求められます。

対して、UXデザイナーは、どういう体験をもって届けることで、価値を正しく感じてもらえるのかを設計します。
対象はWhy「誰をどんな状態にしたいか?」What「ユーザー体験」、How「UI」まで一気通貫して取り組む場合も多いです。
新規立ち上げの場合、ユーザに価値を届けられるコアはなにか?の定義にも深く関わることになります。ここは、よりUXリサーチャー的なスキルセットも必要とされそうです。
特にITサービスにおいては、単純な機能面ではコモディティ化しやすいので、このユーザー体験をいかに高めるかが、イコールプロダクトの価値にも直結することがままあり、事業において重要ポイントです。

こう書いてみると、Howの逆算としてWhatやWhyを定義していくというプロセスは重りあっており、noteでのデザイナーとPMの領域が混ざり合っているのも納得です。

この小城さんの記事にもあるように、実際のところ、より具体的な業務はグラデーションになるし、ケースバイケースになるといえそうです。

もっとも大きな違い、「チームを作る」

このように、「プロダクトを作る」において、PMとUXデザイナーは重なり合う部分があります。
ですが、最も大きな違いは、そもそもPMの役割は「プロダクトを作る」「プロダクトのためのチームを作る」のふたつだということです。

画像3

具体的に「チームを作る」とは何を指すのでしょうか?

前提として、どんなに優秀なPMでもひとりでプロダクトは作れません。
必要なメンバーを集め、チームを立ち上げ、目的への共通認識や当事者意識をつくるためのコミュニケーションをし、成功に向かってメンバーを牽引する。これなしには、何も生み出されていかないわけです。

こういったチーム構築力もPMに求められるスキルのひとつといえます。そのためのノウハウやフレームも存在しますし、心理的安全性や、開発プロセス・運用手法への理解も役に立つでしょう。

UXデザイナーにとっても、チームでユーザー体験への共通理解をつくるためのコミュニケーションスキルは非常に重要ですが、PMに必須で求められるスキルとは、また性格が異なると感じています。

「チームを作る」への関心・資質があるかは、PMというキャリアを選択するかの判断に影響するでしょう。

PMの必要スキル

プロダクトを構成するのは、ビジネス・テクノロジー・UXの3つです。

画像4

PMの役割は、俯瞰して状況を把握し、向かう方向を定義・ジャッジしつつ、描いた画をチームで実行すること。基本的には、実作業はメンバーに引き渡していきます。
自身でプログラミングしたり、UIデザインはしないとしても、意思決定ができる程度には知識をもつのが重要です。

ただし、もちろん、より深い専門知識は強みになります。
担当領域によってどの強みがバリューを発揮するかは変わりますが、特にテクノロジーについての造詣の深さは有効に働きやすいのではないでしょうか。
実装は必須の工程なので、ジャッジや実行のスピードアップにつながりやすいです。ソリューションの選択肢もより具体的にイメージすることが可能になります。
実際、noteでも、エンジニア出身のPMが多く活躍されています。

デザイナーがPMになる強み

「テクノロジーへの造詣の深さ」が、PMにおいて有効に働くケースが多いのは前でも述べた通りです。

ですが、UXデザイナーがPMになる強みもあります。
新たな発想や仮説には、数字やテクノロジーとはまた別の思考のジャンプが必要になり、それはデザイナーが日ごろの業務で慣れ親しんでいるプロセスだからです。

例えば、特定の行動の数字が悪かったとして、数字をあげるために「とにかく目立たせる・増やす」などといった脊髄反射な解決策は本質的ではありません。
なぜそういう行動をとるのか、達成するにはユーザーにとってどういう状況を作ればいいのか、定量と定性を行き来しながらソリューションを思考する必要があります。

これはデザイナーの業務プロセスと似通っており、そういう意味で、もともと資質として似通った部分があるといえそうです。

noteでの動きかた

いま、noteでPM・デザイナーがどういった動きかたをしているのか簡単に触れます。
noteには、ミッション・ビジョンについてはすでに強固なものがあり、

創作のエコシステムを作っていくためのサイクルも定義されています。
(2017年の記事ですが、今でも実際に内部で使われているサイクルです)

私の所属するチームのPMに求められるのは、このサイクルを大きくするには?の具体化です。

「クリエイターが創作を楽しく続けるには?」「創作されたコンテンツを、読者が楽しく受け取るには?」「有料のコンテンツを、求める購読者に正しく届けるには?」などの課題設定から、さらに状況をブレイクダウンし、検証したい仮説をメンバーを交えて設定・実行しています。

実は、noteのデザイナーも同じような動き方はしています。
違いとしては、テクノロジーからのアプローチや、ビジネス上の考慮事項なども踏まえたうえでの選択肢までカバーするか、「チームを動かす」のにどれだけフォーカスするか、でしょうか。

「創作を応援するプラットフォーム」としての機能性と、「クリエイターが住み心地良い、noteらしさ」を両立するには?を日々考えているのは共通しています。

まとめ・参考書籍

・UXはプロダクトを構成する一部。構成要素それぞれをつなげながら、あらゆる手段でプロダクトの成功を目指すのがPM。
・PMは「プロダクトを作る」「チームを立ち上げ、まとめ、推進する」というふたつの役割がある。
・思考のプロセスではPMとUXデザイナーは重なる部分がある。

業務に取り組んでいくなかで、また認識にアップデートがあれば更新していきたいです。

▼参考書籍をご紹介します。
この記事で取り上げたのはごく一部の概要エッセンスなので、より深く知ってみたいかたの入門書籍におすすめです。

▼noteではデザイナー、PMともに募集しています。

▼noteデザイナーの働きかたをもっと知りたいかたはこちら。

サポート、あなたの想定以上にすごく励みになります!