「問い」と「アナロジー」の往復で、アイデアに磨きをかける
金属のレーザー加工を專門とする株式会社インスメタル様のご依頼で、自分だけの理想の空間をカスタマイズできる結界型オフィス家具「ADDMA(アドマ)」を開発・リリースしました。本プロジェクトは、スーパークラウズ、インクワイア、ツクルバなど贅沢すぎるほどの多様なパートナーにご協力いただきながら、ミミクリデザインの淺田史音・小田裕和らが主導してくれました。複数回のワークショップを通してプロダクトアイデアを練り上げたもので、実際に商品がかたちになって感慨深いものがあります。プロジェクトのドキュメンテーションは、プロダクトのウェブサイトに下部に掲載しています。
本プロジェクトのプロセスデザインの肝を一言で言えば、問いとアナロジーを往復しながらアイデアを磨きあげたところにあります。
ここでいう「問い」とは、プロジェクトの本質を探るための哲学的な問いのことで、たとえば「オフィスはなぜ必要なのか?」といったものです。
そして「アナロジー」とは、ある対象について考える際に、何か別のものに喩えて理解をしたり、創造したりする思考プロセスを指しています。
【問い】:プロジェクトの本質を探るための哲学的な問い
【アナロジー】:対象を理解・創造する際に別のものに喩えて考えること
本プロジェクトは、ベンチャー企業をターゲットとした今までにないオフィス家具を作ることでした。そこでプロジェクトの起点となるメタ的な問いを「"オフィス"とは何か?」とし、関連する問いとして「良いオフィスとは何か?」「なぜ"働き方"が問い直されているのか?」「ベンチャーにおけるオフィスの役割とは何か?」などを掲げ、非構成(※)の対話をするところからはじめました。※プログラムを用意しないこと
対話とリサーチを通してこれらの問いに対して「神社」というアナロジーを使いながら、一つの洞察が生まれました。
オフィスとは、会社のアイデンティティや所属意識を感じられる「シンボル」のようなものではないか。デスクでパソコンに向かって働くことが重要なのではなく、オフィスがあることによって「この会社で働いてるんだ」と感じられ、会社に宿った理念や思想を感じられるることが、オフィスの意味なのではないか。オフィスとは"神社"のようなものなのではないか。
このアナロジーを媒介とした洞察から、再び「神道とは?」「人はなぜ祈るのか?」「神社が持っている場の力とは?」といった新しい問いが立ち上がります。これらの問いに対して、リサーチとワークショップを通して思考を巡らせていきました。
これに対してワークショップで生まれたキーワードは「結界」というアナロジーです。神社は、他の宗教とは違い、建物に意味があるのではなく、「鳥居」というシンボリックな結界をまたぐことで、意味が生まれている。オフィスにおいてもまた、"結界"的な境界を作りだすことで、違った意味を作り出すことができるのではないか。そんな洞察に行き着いたのです。
これが、結界の力で自分だけの空間を構成できる「ADDMA」のコンセプトの核となりました。まさに、問いとアナロジーを往復することで、アイデアを磨き上げるプロセスでした。
【問い】オフィスとは何か?ベンチャーにおけるオフィスの役割とは何か?
↓
【アナロジー】ベンチャーにとってオフィスとは"神社"のようなものである
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【問い】神社が持っている場の力とは何か?
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【アナロジー】人は"結界"から空間の意味や境界を見出すことができる
このようなアイデア発想のプロセスは、いわゆるユーザー中心主義的な考え方で「オフィス家具のニーズ調査」などをしていても、なかなか辿り着けない着想です。プロジェクトの本質に迫る哲学的な問いをデザインし、またそれに対して見立ての遊び心を備えたアナロジーを使ってアイデアに磨きをかけていくプロセスは革新的な意味を持ったプロダクトをデザインする上で、有効な手段になるはずです。
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ミミクリデザインでは、ワークショップを活用した意味のイノベーションプロジェクトの設計を得意としています。プロジェクトのご依頼は、ウェブサイトのCONTACTからお気軽にお問い合わせください。
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参考:WDA会員限定動画コンテンツ
082 意味のデザイン
091 商品開発のためのワークショップデザイン論
092 意味のデザインの事例を探る|意味のデザインを科学する
093 課題のリフレーミング|問いのデザイン概論
094 ワークショップの中心の問いの設定|問いのデザイン概論
101 意味の生まれる瞬間を探る|意味のデザインを科学する
117 アナロジー思考
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