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ゼロから始める伊賀の米づくり28:畦塗りをして田植えに備える

農閑期である冬から春にかけては、もっぱら長靴を履いて渇いた田んぼの中へ入り、石拾いをしていました。

田んぼの隅々まで石を拾いながら歩くことで、大地と一体化するような、田んぼの土がどのような状態で、何を訴えているのか、というようなことにも同調できるような心境になってきました。

やがて、早朝に霜の降りる冬から春になってくると、雑草や生き物たちにも変化が現れてきます。

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冬の間から生えてきている仏の座(ホトケノザ)は茶色から徐々に瑞々しい緑色に染まり始め、テントウムシも活動が始まったようです。

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また、瑠璃唐草(オオイヌノフグリ)の青く小さな花が見られるようになり、春の訪れを告げてくれています。

このような春の兆候が見えてくると、いよいよ田植えシーズンがやってくるな、という気持ちになります。(例年、5月連休に行っています)

今回は、昨年発覚していた畦道の弱さを補強するべく、畦塗りを行うことにしました。

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遠くの目線では一見よくわからない田んぼの状態ですが、

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ある一角に目を向けると、畦道を補強した形跡がわかるでしょうか。

畦道は、隣の田んぼとを隔てる境界であり、田んぼに水を水を貯めておく為の敷居でもあります。

しかし、自然の営みの中で時に畦道が崩れたり、脆くなったりすることがあります。

昨年の場合、いざ田植えのために水を入れた時、畦道に開いた穴から水が漏れ出し、隣の田んぼに浸水してしまっていました。

どうやら、モグラにやられたようでした。

結局、昨年は何度も何度も泥を穴に手で突っ込むことで塞ぎ、無事に田植えも終えたのですが、今年は前もって対策をしておくことにしました。

無事に畦道を補強して、これでバッチリです。

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ちなみに、もう一方の我が家の田んぼ……神社に面する田んぼの畦道は高く強く設計されており、こちらは浸水被害や穴等も無事だったため、このまま行ければと思います。

用事があって田んぼに出かけた日は、この流れで神社に参拝することが習慣となってきました。

参道を通り、神社へ参拝することにします。

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以前の記事で書いたように、ここ数年の農に関わる活動を通して私は森づくりに関心を持つようになりました。

それは、日本において神社等で見られる鎮守の森には、その土地本来の植生……潜在自然植生が保たれている、ということを知ったことも大きく影響しています。

私が生まれる以前から営まれていた、先祖たちによる米づくりの営みを、この神社の森は数百年と見守ってきてくれていた……そう考えた時、自分がこの時代に生まれ、米づくりを行っていることが奇跡的なことのように思えたのです。

そして、人間一人の意図や想い、人生を超えて営まれてきた人と自然の営みを、何か一部でも自分は後世に遺していきたい……そう考えた時、土地本来の植生の森を遺していくことに辿り着きました。

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鳥居をくぐると、見上げるような巨木が何本も立ち並んでいます。

何度も通うことで、ようやく、ここに生きる樹木たちの種類もある程度把握できてきました。

最も長生きで高く伸びている樹木は、樟(クスノキ)。

そこにドングリを落とす荒樫(アラカシ)、檜の系統である匂檜葉(ニオイヒバ)、沼檜(ヌマヒノキ)等の高木が続きます。

杉も何本かが大きく伸び、社叢の樹冠の一部を形成しているようです。

亜高木や低木には、椿(ツバキ)や榊(サカキ)、鼠黐(ネズミモチ)という肉厚で艶のある濃い緑の葉をつけるものが生い茂っています。

椿は、3月末にかけて鮮やかな赤い花が見ごろになってきました。

自然のありのままに近い森の姿は、このように高木、亜高木、低木、そして草木がそれぞれに競い合った結果行き着く秩序によって形成され、長い年月をかけて年老いた樹木は枯れ、同時に幼木が育ってくることで循環していくものだそうです。

農作業としての米づくりと、森づくり。

いずれも、人が自然といかに共存していくか……

農業においては、自然の猛威に対していかに立ち向かい、そして実りを得るか……という戦いでもあるわけですが、これらの営みは繋がっているのだと感じます。

自然は、自らがその命を全うしようと競い合い、その中で淘汰も起こりつつ、ある一定の秩序だった動的なバランスに辿り着く。

そしてそのプロセスは、かつて私自身が探求してきていた人間の組織、システムの病理や強みを読み解くヒントにもなりえるものであり、人と自然の共存へのヒントになりうるあり方だと直感しています。

野良仕事の合間に……と言うより、それと地続きになる形で神社への参拝や、森の観察を行うことが、自分の中で自然な習慣となってきました。

さあ、ぼちぼち機械の点検も行っていかなくては。

今年の田植えは、どのような気づきや発見があるだろう。

楽しみです。


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