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大学時代に不登校になったこと②~要因編~

4.なぜ不登校になったか

私の不登校の原因ははっきりしている。成績・性格・生活リズムの3つである。私は不登校の3Sと呼んでいる。

1) 成績が悪かった

最も大きな要因だ。私は物性化学とか量子化学とかそういう分野の研究室にいたが、自分の研究室が何をやっているかさっぱりわからなかった。もっと言うと量子化学の研究室に在籍していたにもかかわらず、量子力学、量子化学の基礎が全く受け入れられなかった。

化学とは電子の動きを理解することに尽きる。そして電子は量子力学に支配されていて、よく知られているように物質性と波動性の両方を持っている。物質性とは1つ、2つと電子の数を数えられることで、波動性とは電子の存在確率が波動関数に従って空間的な広がりを持つことだ。

これは大学1年生が学ぶ量子化学の基礎で、私も当然、大学1年生の時に授業で習っている。

しかし、当時の私にはそれを受け入れることができなかった。
古典力学では両立しない物質性と波動性が量子力学では共存しうる。その概念をつかむことができなかった。あるときは一つ、二つ…と電子を数えることがあれば、あるときは電子は波として物質の中に広がって一つ、二つと数えることができなくなることもある。そういった電子の性質をいろいろな角度から経験的、理論的に整理して体系化しているのが化学という分野だ。有機化学、無機化学、量子化学、物性化学、分析化学いろいろな化学の分野で経験的に知られている結果をうまく説明するためには、分野ごとに電子の物質性と波動性の特徴にあてるスポットライトが変わってくる。たとえば有機化学では電子の物質性に注目して、電子が一つ二つと数えることが多いが、物性化学では電子の波動性に注目して、電子は固体の中に広がって存在していると考える。その結果、どの分野でも同じ電子を扱っているのに、私には各分野で出てくる電子が同一のものと思うことができず、電子の良い描像を得ることができなかった。

また、量子化学の理解には数学の知識が必要なのだが、そういった数学の基礎力も足りていなかった。当時の自分は、『大学の授業が理解できない』→『勉強や演習へのモチベーションがわかず勉強しない』→『ますます大学の授業が分からなくなる』の悪循環に陥っていた。

それでも何とか授業の単位だけはとれていたが、研究室に入って、いざ自分の研究テーマが与えられたとき、自分にはその研究テーマを理解するための学術的な体力を持っていなかった。

じゃあ、量子化学ではなくもっと別の分野の研究室を選べばよかったのでは?という指摘もあるだろうが、おそらく当時の自分の壊滅的な成績では理系の研究室に行く限り、どの分野であっても似たような結果に陥っていた可能性が高い(数学、物理、情報すべてで水準以下の成績だった)。

院試勉強をしていた4年生ごろはまだ比較的、精神は安定していた時期だったのだが、そのころから勉強は全く手が付かなかった。院試を受けたが、ほとんどの問題が分からず壊滅的な出来だった。しかしなぜか受かった。100人受験して95人が受かるような泡沫大学院に進学したからかもしれない(大学院に失礼)。

2) 性格が悪かった

意地が悪いということではない。性格が不登校を発生するのにおあつらえ向きであったということである。

当時も今も私は、思索的で、内向的で、自信がなく、人に相談することがなく、自分のことをあまり語らない性格であった。

このような性格であったことで、研究室でうまくいかない現状に対して、必要以上に自分の現状に対して自責的になり、自分が研究をしていることが恥ずかしくなり、研究室に行くことが億劫になっていった。その一方で、研究のレベルにない現状を解決する方法を自分のだけで行おうとしてしまい、周囲への助言を求めることをしなかった。
結果、周りへの相談が遅れ、精神のバランスを正しく引き戻すきっかけを遅らせてしまった。

内向性という点についてだが、大学時代に深い友人関係をまったく築けなかったわけではない。多くはないが友人と呼べる人はいた。しかし、大学4年間ではクラスメイトと打ち解けようとする努力を払わなかったため、友人と大学の授業を一緒に受けたりする中で学習の疑問点を質問しあったり、早い段階で自分の現状を友人に相談するケースに至れなかった。

あるいは、自分の現状を研究室の先生、先輩や両親、心療内科医にもっと早く相談するケースに至れなかった。自分で何とかしようとしてしまっていた。

後から振り返ると分かるのだが、精神的なバランスを崩したときに、自分の力だけで回復しようと考えてしまうことは悪手だ。しかし、精神的に参ってしまっているとき自身の思考は正常に働いていないが、それを自身では認識できない。

私はそのような一人で悩む状況に自分を置いてしまいがちな性格で、実際にそのような渦中に身を置いてしまっていた。

そのことが症状を悪化させ、長期化させた。

3) 生活リズムが悪かった

一人暮らしの学生の生活である。生活リズムはずっと良くなかった。大学初年度から朝起きられず1限目の授業に遅れる、ということは日常茶飯事だった。そういったことが大学の成績が下降する遠因になるのだが、大学の成績が悪くなり、研究が分からなくなると、それに加えて大学に行きたくなくなり、ますます朝が起きられなくなった。さらには夜寝れなくなった。

生活リズムが悪かったことが、不登校に陥りやすい状況を生み出してしまった。

あるとき、夜寝てしまうと朝が来て大学に行かなければならない。それがどうしても嫌で、夜眠りにつくことができなくなった。そのような生活リズムのずれによって、だんだんと夜眠りにつく時間が遅くなり、不登校のころには朝4時くらいに眠りについていた。

まったくもって個人の見解だが、生活リズムの乱れと不登校は密接に関連する。生活リズムが悪くなることが不登校を誘発し、不登校がますます生活リズムを乱し、朝登校するきっかけを失わせる。

この負の循環が私を不登校へと導いた。

(③に続く)

以下、過去記事


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