たんぽぽのように生きる

旅に出る理由のはじめのいちばんは「ここにいたくない」だった。
この場所が嫌い。ここにいる自分が嫌い。考え方も、働き方も、生き方も、大嫌い。捨てたい。消えたい。消したい。なくなってしまえ。

今だって、そう思っていないと言い切れない。

でも、それだけでは他所に行っても意味がないのだと。どんなに離れようが私はここから生まれたのだから。

そこに目を瞑ってしまったら、私は自分の見たいものが自分の見たいように見えてこない気がした。
出会っても、出会えない。そんな気がした。

そういうことなら、見ていたいし、知りたい。忘れたくない。

自分を生んだ国のことを。

こう思えるようになったのは、心から悔しいがコロナのおかげでもある。
この半年は私にとって、この国と自分自身に対して向き合う時間になっていたから。

だから、これから私はたんぽぽのように生きようと思う。

生まれ落ちた地に深く真っ直ぐに根を張り、整然と世界を見つめる、慈愛に満ちた元気で優しいきいろの花に。

そして、わたげを飛ばして世界中を旅するんだ。

いろんな景色を見て、人に出会い、考えながら空を揺蕩う。

そしてその地に、少しでも何か残せるような。

誰かを少し、笑わせられるような。

そんな生き方が、どうか間に合いますように。

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