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生活に彩りを。新しい器の歓迎会。

2人で使える徳利とお猪口が欲しいねえ、とずっと2人で話していたのだ。

器は生活を彩る。食卓も彩る。気持ちも楽しくなる。
酒飲みの姉妹にとって、ちょっと2人で一杯やるときのお供は必要なものだった。 

だがしかしそれを阻んでいたのは、「食器棚せまい問題」。

1、2人用の食器棚は狭い上に、元から私が持っていた食器に妹が和歌山から持ってきた食器にと大混雑だったのである。料理が好きで映えも意識する妹の存在も大きかった。

そもそも最初から入りきっておらず、入れるのを諦めた大きめの食器を重ねて棚の上のレンジの上に置いておいたところ、ある日いきなり全部落ちてきたのだ。 

怪我をしなかったのと皿たちが全滅しなかったのは不幸中の幸いだったが、お気に入りで大学の頃から使ってきた絵入りの皿が割れて悲しかった。

その事態を重く見て、日曜大工にて一段増設したのもつい最近のことなのだ。

新しい子を迎える余裕はないように思われた。

思われたのに、出かけてきてしまった茶わん坂。

お盆なのに雨降りで人も少ないとなれば、休みが合うなら少し出かけようかとなった結果だった。

最近姉妹酒が多く、妹はやはりもう少し雰囲気のある皿たちが欲しかったようだ。
姉は姉で、やっぱり趣のあったり好みに合う徳利を見れば欲しくなる。  

2人して、あれがいいこれがいい、こんなのあったら飲みは楽しいと侃侃諤諤言い合って、その時間はまことに楽しいものなのだった。

僕も連れてってと隣の皿が手を伸ばしてくる。
いいやだめだ、どんなに頑張ってももう入らない君は連れてけない、えっ、君なら私の得意なだし巻き卵の黄色をもっと映えさせられる?

そう言われると心が揺れるじゃないか。うーん…。

揺れまくる心。
物理的に増えない収納スペースと財布の中のお金。

お値段やサイズと綿密に相談しながら、長く使える仲間たちを一つ一つ探し出していく。

今や100均だってそこそこしっかりとした可愛い皿がいくらでも買える。
我が家にもそれなりにお世話になっている皿がある。

でもやはり、毎日使う器は、愛着を持って使える子たちを揃えておきたいなあと思うのだ。100均のお皿が悪いわけじゃない。

割れてしまって「あ、代わり買ってこなくちゃ」ではなく、心から惜しいと思えるような子たちを、そんなに多くない数で手元に置いておきたいなあと思う。それこそ、金継ぎしてでも直したいと思えるくらいの。

ちなみに私は以前金継ぎをしたときに、漆に対しては舐めても平気なくらいの耐性があることが判明している。

そのうち家でも挑戦してみたいと思っている。

そして今回、選りすぐりのお皿たちを我が家にお迎えした。

そしてとうとう、徳利とお猪口もやってきた。
ふらりと寄った百貨店で2人して一目惚れ、値段もそんなに高くないという奇跡のような出会いを果たす。

親切な店員さんが、冷酒、熱燗など飲み方の違いによる徳利の使い分けを教えてくれた。でもそうするともう一組必要なのか……??

だってこれに冬に日本酒入れたら凍えそうじゃない?見た目的に。

悩みがさらに深まった気はするが、とりあえず姉は食器棚の最下段をまるっと占領するグラスやぐい呑みやマグたちを別の場所に独立させるべく近いうちに日曜大工をすることになる。

その日の夜は日本酒を買って帰って庭のシシトウとオクラも収穫して、新しい器の豪華な歓迎会を行い、美味しいお酒を楽しんだ遊布野姉妹なのである。

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