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妹が、家に居ないでと言ったから⑤

5週目は友人を巻き込んで。前日突然の誘いに乗ってくれたベテランバイカーの友人が、京都のちょっと北の方の美山の辺りまでいっしょに行ってくれた。

彼がいなければ私は公道に出る勇気を持てなかったと思うので、恩人である。

市街地を抜けるだけでこんな解放感なのかと思うくらい、緑、緑、緑。
癒されるし何より風が心地良い。故郷の香り。

「ソースカツ丼!!」の看板に惹かれて立ち寄った定食屋さんも、なんだか懐かしい香りと雰囲気。そしてこのお店、看板に偽りありの逆をゆく、写真以上のデカ盛り店だった。

ダメもとでタッパーが欲しいと言ったら、プラスチックケースを輪ゴムとビニール袋とともに流れるように渡してくれたあたり、よくある例なのだと察する。

この辺りはツーリングコースになっているらしく、たくさんのバイカーさんたちとすれちがう。人にもよるけれど軽く手を挙げたり振ったりして挨拶してくれる方も多く、とても優しい気持ちになった。

単独で走っておられた女性が、手をまっすぐ高々と振って、メット越しでもわかるくらいの笑顔で挨拶をしてくれた。とても、幸せな気持ちになった。どこかでまたお会いできるなら、ぜひすれちがいたいものである。

彼女はきっと、今日もどこかで誰かを幸せにしながら走っているのだろう。

そんなバイカー同士のコミュニケーションや暗黙の了解などについても無線で教えてもらいながら、のどかな風景をゆく。

カーブもそこそこあり、慣れていない私は一度だけ大きく膨らんでしまってひやりとした。対向車が前から来ていなかったのは幸運。その後は気を引き締めて。

途中で立ち寄った道の駅では、たくさんのバイクが止まっていた。400cc越えのかっこよくていかついバイクの中に並んだ私のバイクは、とても細く見えた。並べてみないとわからないが、私のバイクは確かにレトロだなー、でもそこが好き、と、ジェラートを食べ食べ眺める。

友人は、めったに出会わないという、自分と全く同じ型のバイクを発見したらしく、盛り上がっていた。

その後はもう少しだけ進んでカメラスポットへ。

えっちらおっちらと映えポイントへバイクを動かす私の取り回しを眺めながら友人が一言。

「初心者~~~~~~……って感じやね」

「こんなひよこが玄人に見えたら逆に危ないやん」

久しぶりにこんな山の空気をおなかいっぱい心いっぱいに吸い込んだ。
故郷の香りであり、自分ができるようになったことの実感であり、ここまで私は来ることができるんだという自信でもある。

そして、仕事で嫌なことがあって、緑が見たい、と浮かされたように言っていたのを知って付き合ってくれた友人の優しさ。海が見たい海が見たいと言っていたら、ちょっとドライブしようと神戸まで連れて行ってくれた友人もいる。私は友に本当に恵まれている。

そしてバイカーの彼は、来月いっぱいで京都を発つことが決まっている。

今も目の前で「俺がいなくなってもいろんなところに行けるように」と、私のグーグルマップを操作して至る所にピンを落としてくれている。その優しさが少し寂しくて、とても嬉しくて、やっぱり少し寂しい。

そしてきっと一人ならもっともっと軽快に飛ばしたいだろう道をいっしょに合わせて走ってくれて、「俺もこんくらいで走るよ、ついてこれてるから大丈夫大丈夫」と褒めてくれる。バファリンか。バファリンなのか。ほんと、貴方に出会えてよかったよ私は。

休みが普段は会わないので次があるかはわからないが、「絶対また行こうね」と約束した。こりゃ私が仕事をサボるしかないな(使命感)

ごはんとお茶をごちそうするくらいでは足りないくらいの一日をもらったのだった。楽しかった。

そして妹へのお土産を、お菓子にするかお茶にするかポストカードにするかと悩み過ぎて暴走した結果、まっしろなズッキーニを買って家路につく、姉なのである。




 

 

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