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妹が、家に居ないでと言ったから⑧

さてさて、長雨が続いてバイクに乗れず悶々とした日々が終わりを告げた。と思いきやまた夏の暑さが帰ってきて溶ける心配をしながら長袖長ズボンでバイクに乗る日々である。

今日は嵐山に用事があったのだが、少し早く着いてしまいそうなのでしばしその辺を走ってみることにした。

というときに頭に浮かぶのは清滝である。
その辺随一という心霊スポットの清滝トンネルを越えた向こうの一帯を指し、愛宕山への登り口があることから休日は人でごった返す。が、最近はやはり少し人が少ないようだ。

そこへ向かう道に偶然出られてしまったこともあって、よしと思い行ってみることにした。

清滝トンネルにはよくわからないいわれがあって、直前の信号で一度引っかかって止まらないと良くないことが起こるのだという。

え、それって車とかバイクだったら運でしかなくない?
なんて思い出す頃には既に引っかかっていた、運のいい私だ。

なのに、怖い思いをした。
入った瞬間視界が暗〜くなったのだ。

電灯は見えるものの、こんなにここ暗かったっけ??と思うくらいの暗さ。
1人で来るとこんなに怖いのか、という気持ちと、もしかしてこれは世にいう心霊現象なのか、という気持ちがぶつかった。

とりあえず前の車にはぶつからないように慎重に運転しながらはたと気づく。

「あ、ヘルメットについてるサングラス下ろしてたんだった。

怖い話ではなく、ただのバカな話だった。「あ、私か」って思った。霊がもしいるなら、謝らねばなるまい。

この場所は、バイクを教えてくれた友人が以前連れてきてくれた場所である。

まだ私は免許を持っていなかったので、2人乗りで。

1人で来てみて何が分かったかというと、

彼がどれだけすごかったかということだった。

登山口の辺りはまだいい。

そこそこ坂だが道も広いし整備も掃除もされている。

怖かったのは、そこからトロッコ列車の走る保津峡へ抜ける道だ。

冗談じゃなくて、勾配が20度くらいあるんじゃないだろうか。
しかも、ほぼ360度のカーブである。急な。
しかも道の両側には落ち葉が。

踏んだら滑ること請け合いだ。

自分が運転して初めて知る、彼の運転テクニックの高さ。

あんなふうに運転できるようになりたい…と思いつつ、今は目の前の坂道の運転に必死な遊布野だった。

そしてあのときもいっしょに見た景色を、今度は自分の力で見て、感動したのだった。お

と、ここで終われば良い話なのに、ツメの甘い遊布野は低速での転回に失敗して久々の立ちゴケをかましたのだった。

近くにいた男の子たちがわらわらと集まって起こすのを手伝ってくれた。 

良い話でなく、あたたかい話、だった今回のツーリングなのだった。



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