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タンパク質、質と量だけ考えていませんか。【健康面のコスト編】

前回の記事、「さあ、みんな大好き「タンパク質」の話をしましょうか。【基本・質編】」では、

アミノ酸とタンパク質について
・タンパク質の働き
・タンパク質の摂取基準
・タンパク質がより必要な人
・タンパク質が足りないとどうなるか
・動物性 VS 植物性:タンパク質の質

についてお話ししました。今回の記事では、動物性 VS 植物性の続き(健康面のコスト編)についてお話ししていきます。

最近はタンパク質摂取や糖質制限を煽るマーケティングをよく目にするようになりました。タンパク質を積極的に摂ると、

・筋肉量アップ
・太りにくい
・脂肪燃焼
・短期間で痩せる
・肌のハリツヤUP
・お腹が空きにくくなる
などなど、

ついつい釣られてタンパク質を摂りたくなってしまうような魅力的な文句がよく使われています。そして、動物性タンパク質の方が”質が高い”ため、動物性食品の摂取量を増やしたり、動物性のプロテイン食品を選びがち。

もちろんタンパク質を積極的に摂るのは良いのですが、どのタンパク質を摂るのかによって体にダメージを与えることがあるので、今回は結構怖いお話もしますが、普段からタンパク質をたくさんとっている方にはぜひ読んでいただきたいなと。

結局自分の体を守れるのは自分だけなので。(「お医者さんが守ってくれるよ!」って思った方、思考がどれだけ歪んでいるか自覚しましょう。)

前置きが長くなりましたが、早速始めていきましょうか。

今回の目次はこちら。


動物性 VS 植物性:健康面のコスト編

前回の動物性 VS 植物性(タンパク質の質編)では、動物性タンパク質が賞杯を挙げました。今回の健康面のコスト編ではどんな戦いが見られるのでしょうか。

今回、動物性と植物性のタンパク質の健康へのリスクを考える際に

・動物性の食品と植物性の食品のマクロ栄養素の割合
・動物性の食品と植物性の食品に含まれるタンパク質以外の成分
・それぞれのタンパク質を食べた時に起こる体内での反応

の3つに着目してお話ししていこうと思います。


1.マクロ栄養素の割合

まずは、動物性の食品と植物性の食品のマクロ栄養素の割合について。

前回の記事でマクロ栄養素について少しお話ししましたが、食事全体のバランスを考えるときに、私たちの人間の体に合っているとされる炭水化物、タンパク質、脂質の割合(マクロ栄養素の割合)があります。

タンパク質は私たちの食事からくるカロリーの13-20%をしめるように食べるのが良いと言われています。ちなみに、炭水化物は50-65%脂質は20-30%をしめるようにするのが◎。

植物性のホールフードに含まれるタンパク質の割合を見てみるとこんな感じ、

・緑色の葉野菜や豆類:10-37%
(豆腐や植物性ミートの場合、この割合はもっと高くなる。)
・ナッツ、シード、穀物:9-17%
・フルーツ:2-10%

この割合を見てお分かりの通り、【穀物・豆類・葉野菜・ナッツ・シード・果物】を含むバランスの良い食事(健康的な菜食)をしていれば、タンパク質は大体13-20%の範囲に収まります。これに加えて、植物性の食材は炭水化物からくるカロリーの割合が高く、脂質の割合は低めなので、理想的なマクロ栄養素のバランスを保ちやすいです。

続いて動物性の食品を見てみましょう。

肉、卵、チーズは効率良くタンパク質をとれる食品でカロリーの24-36%がタンパク質から来ます。でも、脂質からくるカロリーはなんと60-75%。そして炭水化物(動物性食品には食物繊維が含まれていないので糖質)に関してはほぼ0%(牛乳や生クリーム、クリームチーズなどを除く)。

これを見て、動物性の食品を主にタンパク質源として取り入れた場合、一気にマクロ栄養素のバランスが崩れてしまうのはすぐにわかるのではないでしょうか。ちなみに、植物性のお肉(大豆ミートなど)はタンパク質の割合は動物性のお肉よりも高く、コレステロールを含まず、脂質もずっと少ないです。(もはや本当のお肉よりも強い説。)


2.タンパク質摂取源に含まれるタンパク質以外の成分

続いて動物性の食品と植物性の食品に含まれるタンパク質以外の成分について。

突然ですが、2010年に歴史上で初めて栄養過多で苦しむ人々の数が栄養失調に苦しむ人々の数を世界規模で上回ったことは皆さんご存知でしょうか。昔は栄養素をちゃんと摂れるようにしっかり食べるというのが基本でしたが、動物性の食品を多く含み、精製・加工のされた食品が当たり前に食べられている現代では、必要な栄養素を摂るだけではなく、体に悪いものをどれだけ食べないかということも重要になってきます。

1990年以前は、心臓病糖尿病がん肺疾患などの慢性的な病気は、贅沢に食べ、あまり動く必要のなかった人々の間で起こる病気だったため、「金持ち病」として知られていましたが、現代ではこれらの病気は貧しい国々でも確認されるようになり、世界人口の3/4はこれらのような生活習慣病により亡くなっています

ここでYukaのちょっとした語り。
2018年の日本の5大死因(2019年11月発表)
1.悪性新生物(癌):27.4%
2.心疾患(心筋梗塞など):15.3%
3.老衰:8.0%
4.脳血管疾患(脳卒中など):7.9%
5.肺炎:6.9%
男女別で見ると、
男性:悪性新生物(31.1%)、心疾患(14.0%)、脳血管疾患(7.5%)、肺炎(7.5%)、老衰(4.0%)
女性:悪性新生物(23.4%)、心疾患(16.6%)、老衰(12.3%)、脳血管疾患(8.4%)、肺炎(6.4%)
日本の死因5大トップに糖尿病を除く3つが入っていることにお気づきでしょうか。でも、糖尿病にかかった方は糖尿病で亡くなるのではなく、糖尿病による動脈硬化によって起こる心臓病や脳卒中、腎不全などの合併症で亡くなられることがほとんど。このことを考えると、生活習慣病4つ全て日本の5大死因に入ってます
女性の方が老衰が多いのは、女性の方が体に気をつけて食材を選ぶことが多かったり、美容のために生活習慣に気をつけることが多いからかなと。

世界保健機関(WHO)は、この4つの生活習慣病の主な病因は、不健康な食生活運動不足喫煙、そして飲酒だと発表していて、要は自らとった選択の結果によってこれだけの規模の人たちが苦しんでいるのです。(厚生労働省はこの4つに加え、ストレスも深く関与していると言っています。)

生活習慣病リスクを上げてしまう不健康な食生活でによく含まれているの食品や成分が、

①精製された穀物や砂糖
②塩分が加えられた食品
③トランス脂肪酸
④飽和脂肪酸
⑤コレステロール

そして、

⑥食物繊維不足

もかなり問題視されています。

できる限り市販の加工食品精製食品を排除もしくはできるだけ避ければ、①、②、③は結構簡単に排除できるのですが、

加工食品:
肉加工品(ハム、ソーセージ、ベーコンなど)、乳加工品(加糖ヨーグルト、アイスクリーム、練乳、チーズなど)、水産練り製品(魚肉ソーセージ、かまぼこ、さつま揚げ、ちくわ、つみれなど)、油脂食品(バター、マーガリン、ショートニング、ラード、マヨネーズ、ドレッシングなど)、レトルト食品、即席食品、冷凍食品、 嗜好食品(菓子パン、菓子、ケーキ)等
精製食品:
白い小麦粉、白米、白い麺類、砂糖、飴、シロップ、オイル等

④、⑤、⑥に関しては、ホールフード中心で健康的かなと思う食事でも避けられないことがあるので、飽和脂肪酸・コレステロール・食物繊維の三つに着目してこちらはお話ししていきます。

ホールフード:「Whole(まるごと)」の「Food(たべもの)」。食べられる前の加工や精製を行わない、もしくは可能な限り抑えた食品のこと。お米で例えると、精米を行なっていない玄米がホールフードで、白米や米粉、米麺は加工・精製食品に分類される。


2-① 飽和脂肪酸

飽和脂肪酸は、常温でも個体のままの脂質のこと。コレステロール値を上げたり、インスリン抵抗性を高めたり、中性脂肪値を上げたり、腸癌や肺がんのリスクを上げると言われていて、できるだけ摂取を控えるように言われています。

主に肉や乳製品に含まれていて、植物性の食品だと、ココナッツ食品やパーム油脂に含まれています。ココナッツ食品やパーム油脂は、タンパク質摂取源としては食べませんし、たくさん摂るものでもないことと、ホールフード中心の菜食の一部として食べる分には健康に悪影響は与えないと言われています。

問題なのは、牛肉、豚肉、鶏肉、牛乳、ヨーグルト、チーズなど、タンパク質を摂ろうとして食べるときに知らぬ間に飽和脂肪酸を摂ってしまう食材。

このような食材は、タンパク質摂取するのに手っ取り早く便利に感じてしまうかもしれません。今は見た目が引き締まり、筋肉も付き、無駄な体重も落ち、外見はよく見えるかもしれませんが、内臓の状態や血液、血管などの体の内側がどんどん悪化し、10年後20年後にメタボ、脂肪肝、動脈硬化、2型糖尿病、心臓発作、心血管疾患などにつながる可能性もあります。


2-② コレステロール

コレステロールステロールと呼ばれる脂質の一種です。

細胞を構成する大切な要素で、コレステロール値を安定させるためにコレステロールをとった方がいいということが言われたりもしましたが、コレステロールを摂取してもコレステロール値は上がらないと言われています。また、コレステロールは体が必要なときに必要な分だけ作り出すことができるので、食事で摂取する必要はありません。

そして、コレステロールは動物性食品にしか含まれていません。よく動物性食品の中でも体にいいとされる、卵や魚、貝、えびなどにももちろん含まれていて、ココナッツオイルみたいな飽和脂肪酸がたくさん含まれている植物性食品には含まれていません。

コレステロールの多い食事は生活習慣病(特に心臓発作や心血管疾患などの心臓と血管関連の病気)のリスクを上げると言われています。


2-③ 食物繊維

食物繊維はコレステロールとは正反対に、植物性の食品に含まれていて、動物性の食品には含まれていない成分です。

食物繊維にもいろいろ種類があり、働きも様々ですが、食物繊維が豊富や食事は

・便秘、憩室症、痔を防ぐ
・大腸癌、胆石、炎症性腸疾患から守る
・体に良い腸内細菌を増やすのを促す
・有害な物質の体内への吸収を抑える
・ミネラル吸収を上げる
・食品過敏症やアレルギーを軽減する
・抗癌作用を持つ
・脂質と糖質の代謝にいい影響を与える副産物を出す
・心臓血管疾患の発症リスクを下げる
・満腹感を感じやすい
・血圧を下げる
・血栓を取り除く
・インスリン感受性を向上させる
・メタボリック症候群と2型糖尿病のリスクを減らす
・血糖値をゆっくり上げる
・食べすぎや体重の増加を抑える
など、嬉しい効果がたくさん。

厚生労働省は、食物繊維の1日の摂取目標量を18歳以上の男性は21g以上女性は18g以上に設定していますが、世界中のいろいろな研究成果から得られた理想的な食物繊維量は、1,000kcalあたり14g以上です。これに対して私たちはどれくらい食物繊維を取れているのかというと、12-15g程度。全く目標値に届いていません。

日本人は1950年ごろまでは1000kcalあたり14g以上という理想値を満たしていたのですが、戦後から食生活の欧米化で肉や乳製品の摂取が増え、米の摂取量が減ったことや大麦などの雑穀を食べなくなったことなどが、食物繊維摂取量がここまで減ってしまった理由と言われています。

他にも、動物性食品は病気を引き起こしてしまうような化学物質(ホルモン、抗生物質、残留性有機汚染物質など)を含んでいることが多いのですが、今回は深くは触れません。

食物繊維を効率よく摂取したいのであれば、食物繊維を一切含んでいない動物性食品ではなく、植物性食品からタンパク質を摂るのがおすすめ。


3.タンパク質を食べた後の体内の反応

最後にそれぞれのタンパク質を食べた時に起こる体内での反応について。

3-① インスリン様成長因子

私たちが動物性タンパク質を食べると、体内の『インスリン様成長因子(IGF-1)』の量が増えます。これは、動物性タンパク質を食べることでIGF-1の分泌が促進されるのというのと、乳製品にはもともと仔牛を成長させるための成長ホルモンとして入っています

筋肉量の増加や、育毛作用、肌の再生などを期待して摂取する人もいるのですが、IGF-1は『癌細胞も成長させてしまう』んです。美肌になるとか筋肉が付きやすくなるとか、そういう魅力的な文句を聞くと忘れがちですが、ぜひ注目したい「なぜ?」の部分

IGF-1:肝臓で産生される成長ホルモンの一種で、私たちの体内の細胞の成長を促してくれる。

IGF-1に筋肉量増加作用や美肌作用、育毛作用があるのは、体内の細胞の成長を促進するから。成長することよりも、体のメンテナンスをしていくことが大切な大人にとっては、IGF-1は少な過ぎても多過ぎてもよくありません

ストレスをできるだけ減らし、規則正しく、健康的な生活習慣と菜食生活を送っていれば、IGF-1は理想値に保たれるのですが、外部からIGF-1を取り込んだり(サプリや乳製品)、その分泌を促す様な食べ物(動物性タンパク質)を食べてしまうと、体の調子が崩れていきます。

『肉製品・乳製品は、発癌リスクを上げる』
『肉製品・乳製品は、癌を育てて増殖させる』

という報告が、科学的証拠と統計を伴って発表されているので、癌にかかりたくない方はできるだけ避けたいですね。

植物性のタンパク質にはIGF-1自体も、それを誘発する様な成分も入っていません。

↓↓↓気になる方用に学術論文色々↓↓↓



3-②ストレスホルモン

動物性タンパク質摂取の体への影響としてあまり知られていないのが、ストレスホルモンを上げること。動物性タンパク質を多く含む食事を食べると、コルチゾールというストレスホルモンのレベルが上がると言われています。

その結果としてお肉、乳製品、魚、卵などを毎日食べ続けると、コルチゾール値が常に高い状態が続き、高血圧、インスリン抵抗性上昇、中性脂肪の増加、コレステロール値上昇などが起こると言われています。

高血圧:血管の壁に強い圧力がかかり、血管が傷めつけられて動脈硬化が早く進んでしまう。動脈硬化が進行すると、心疾患(狭心症、心筋梗塞など)や脳血管疾患(脳卒中、脳梗塞、脳出血など)を引き起こす恐れがある。
インスリン抵抗性上昇:インスリンに対する感受性が低下し、インスリンの作用が十分に発揮できない状態できなくなる。この状態が続くと膵臓のインスリン分泌機能が低下し、血糖値が常に高い状態になり、2型糖尿病を引き起こす。
中性脂肪の増加:肝臓に負担がかかり肝機能が低下し、皮下脂肪や肝臓などに過剰に脂肪が蓄積されて、脂肪肝になる恐れがある。そして、脂質異常症やメタボリックシンドローム、肥満などへとつながっていく。動脈硬化を引き起こす恐れも。
高いコレステロール値:血流が悪くなり、動脈硬化が進行する恐れ。

と、体によくない影響を与えることがほとんどです。

気になる方用に動物性タンパク質の摂取とコルチゾール値の関係についての学術論文をいくつか載せておきます↓

High-Meat, Low-Carbohydrate Diet in Pregnancy - Relation to Adult Blood Pressure in the Offspring


3-③ 腎臓への負担

最後にタンパク質を取ることによる腎臓への負担について。

腎機能の低下の要因となる食事に含まれる成分で毎度リストに上がるのが、動物性タンパク質動物性脂肪。両方ともすべて動物性食品にしか含まれていない成分です。(コレステロールも腎臓に悪影響があると言われていますが、動物性脂肪の中に含まれるので今回はあえて触れません。)

動物性タンパク質は腎臓の過剰ろ過を促して、腎臓にかかる負担を増やしたり、動物性脂肪は腎臓の毛細血管などの血管を詰まらせてたり動脈硬化を引き起こして腎機能を低下させてしまいます。

植物性タンパク質や植物性油脂にはこのような作用は今のところ確認されていません。

↓↓↓気になる方用にこちらも学術論文いくつか貼っておきます↓↓↓

The Western-style diet: a major risk factor for impaired kidney function and chronic kidney disease


他にもまだ動物性食品を食べることによる体への望ましくない影響はありますが、今回は生活習慣病に特化して、この3つでストップ。

もっと気になる方は、「The Game Changers(ゲームチェンジャー: スポーツ栄養学の真実)」と「What The Health(健康って何?)」というドキュメンタリーがとてもわかりやすくまとめてあるのでおすすめです⭐︎両方ともネトフリで日本語字幕で観れます。

Yukaのちょっとした語り(ラストです)。
動物性タンパク質って本来はあんまり摂りたくない食材なんですけど、皆さん動物性タンパク質の悪いところそっちのけで良いところだけしっかり見ている印象があります。
私的にはその良いところをしっかりと見つめてあげることのできるポジティブで優しい心を、動物性たんぱく質にではなく自分自身や自分の周りの人々に向けてあげて欲しいです。


はい、今回はタンパク質の質だけではなく、タンパク質と一緒に知らないうちに体に取り込む成分や、タンパク質が体に入ってからどんな作用があるのかをまとめてみました。

こんなこと、前から知ってたよって方、びっくり仰天された方、別に気にしないやって方、反応は人それぞれだと思いますが、今回の情報をもとにこれからの食材選びのヒントにしていただければ幸いです。

次の記事では、
「タンパク質の取り過ぎってあるの?」
という疑問にお答えしていきます!

noteには載っていないより詳しい情報をご希望の方や個人的な質問・ご相談のある方は菜食栄養学セミナーにてお伺いいたします!

では、また次の記事でお会いしましょう♡

I hope you are having a wonderful morning, noon, evening or night, whenever you are reading this.

Lots of love,
Yuka

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