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金15:金の加工技術(金粉)

おはようございます。
今日は絵に描いたような快晴で、朝から日差しも強くて絶好の洗濯日和と言えそうな朝(平日は回せないけど)。

金を金属同士で合わせて使う地金ではなく、木工や漆に使われる金素材について、以下の4つを学んでいる。
金箔
切廻し
金粉
金泥

今日は三つ目の金粉を見ていきたい。

金粉

文字通り金の粉末のことで、金をやすりにかけて粉状にするという方法で作られたり、金箔や切廻しを粉砕して金粉を作ることもある。金粉は片状に粉砕した粉末を、粒度別に分級し艶付工程で研磨する。一般的に粉末状態の金粉を消粉と呼び、膠などで溶いて混ぜたものを状態を金泥と言う。
化学的製法としては、塩化金の溶液を化学的に処理することでも金粉が作られる。
金粉は蒔絵をはじめとした工芸品の仕上げに多く用いられる。また、ご承知の通り昨日学んだ切廻しと同様、料理やスイーツの仕上げの際に少量添えたりお酒や日本茶などに少量入れたりして使うこともある。

粉といってもただ目で見た感じ細かくなっていれば良いというものでもなく、職人の経験と勘が延びや艶の良し悪しを左右する。
蒔絵で使われる蒔絵粉にフォーカスして見ていきたい。

金粉の種類

金粉は大きく以下の5種類に分けられる。

消粉・・・最微細無な丸い金粉
丸粉・・・消粉と比べて粒が大きい金粉
平極粉・・一番薄い粒子が板状の粉
梨地粉・・中間の厚さの板状の粉
平目粉・・厚みのある板状の粉

この中で、特に金継ぎでよく使われるのが消し粉、丸粉、平極粉の3種類。

それぞれの仕上がり

粒子が細かければ細かい方が良い様にも思えるが、蒔絵や金継ぎの場合はそうでもない。

丸粉はその仕上がりがまさに金といった雰囲気強い光沢感があり、手間はかかるがその分仕上がった時の耐久性が高く見た目のインパクトは大きい。また、基本的には粉が厚い=耐摩耗性が高いので、日常使いの器に蒔絵をする場合は粉が厚い方が剥げにくくなる。相対的に粒が大きければ同じ重さでも蒔ける面積が狭く、結果より多くの金粉が必要(=お金がかかる)。
一方で一番微細な消粉は、白っぽく光沢が弱い。粉が小さいため、生地にも馴染みやすく蒔ける面積も大きくはなるが、その分薄く耐久性は弱くなる。
平極粉は丸粉と消粉と間で、バランスが取れた素材と言える。

金らしいはっきりとした色味・光沢(彩度が高い感じ)を出したい時は丸粉、マットで光沢があまり無い白っぽい印象(明度が高い感じ)に仕上げたいなら消粉、そのバランスを取りたい場合は平極粉と使い分けるのが良いだろう。
丸粉の中にも「粗いもの~細かいもの」まであるが、仕上がりの色味としては、粗いもの(大きいもの)ほど金属的な光沢になり、細かいもの程その光沢は鈍く(白っぽく)なる。

それぞれの特徴は、粒子の差に大きく起因する。
丸粉・・・10μ(ミクロン=1000分の1mm)
平極分・・0.6μ
消粉・・・0.3μ
実際のサイズを見てみると、丸粉は平極粉の33倍も厚みがあるのだ。

丸粉

地金をヤスリでおろしたヤスリ粉を球体に加工したもので、研ぎ出したり磨いたりできる。いろいろな大きさの粒があり、号数で分かれている。
1号(直径約6μ)~17号(300μ=0.3㎜)

丸粉を使って素材に蒔いていく工程を見ていこう。

1st step

1.弁柄漆(または黒漆)を「極薄に」塗る(←地塗り)
2.漆を塗った脇に、粉匙ですくった多目の丸粉を乗せる
3.丸粉をあしらい毛房で押しながら移動させ、塗った漆の上を手早く何往復も通過させる
4.全体に蒔き終わったら、3∼4分待って、もう一度、丸粉を蒔き詰める
5.息を吐きかけた真綿で、器に残った微粉を絡め取って、蒔き詰める
6.湿し風呂に入れて3日間待つ

2nd step

  1. 丸粉の上から、漆を薄く塗る

  2. 余分な漆をティッシュで拭き切る

  3. 湿し風呂に入れて1週間待つ

3rd step

  1. 油を薄く敷き、布に鳴滝砥の粉など磨き粉を付けて磨く
      ↓
    ゴムシートで磨く(艶が上がる)
     ↓

    〈これで完成としてもよい(胴摺り仕上げ)〉

  2. 丸粉の上から、生漆を薄く塗る

  3. 余分な漆をティッシュで拭き切る

  4. 湿し風呂に入れて1日待つ

4th step

  1. 油を薄く敷き、指に呂色磨き粉を付けてササっと磨く

  2. 完成(呂色磨き仕上げ)


平極粉

地金をヤスリでおろしたヤスリ粉をさらに砕いたもの。
厚さ約0.6μ(0.0006㎜)、幅約5~6μ(0.005~0.006㎜)の微粉
平蒔絵に使う(つまり金継ぎで使える)
漆を擦り重ねてから表面を砥石粉、コンパウンド、胴摺り粉などで磨く。炭や砥石、ペーパーなどで研ぎ出しはしない。
丸粉を使う蒔絵より簡単

基本的な工程は丸粉と同じだが、平たい板状になっているので、1st stepで平極粉を真綿で押しながら移動させ塗った漆の上を手早く何度も通過させてしっかりめに擦りつけて立っている粉を寝かせることが大切。

消粉

金箔を細かく擦り潰してパウダー状にしたもの(蒔絵粉のなかで最も細かく薄い)
光沢が弱くマットな表情で、他の粉と比べるとちょっと白っぽい。基本的には研がない、磨かず蒔きっ放しで使う。
作業工程に手間が掛からず、少量で広い面積に散布できるので、安価な漆器の加飾に用いられる事が多い。しかし、粉に厚みがないので他の粉と比べると摩耗して下地が出てきやすい。
蒔絵の中では一番簡単◎


*上記の情報は以下のリンクからまとめています。

一言で金粉と言ってもその粒子には大きな差があり、それに伴って扱いやさすさも扱い方も仕上がりも変わってくる。しかし、その結果として様々な症状が楽しめるのも事実で、ミクロンという認識がなかった遥か昔から、これにはこの金粉と決まっていてそのためにその微細なものを狙って作っていたことに驚かされる。


僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。


皆様も、良い一日を。

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