見出し画像

藍7:もう一つの藍

おはようございます。
今日も朝からバッチリ晴れて、気温も10℃だけど寒さを感じさせない。とても穏やかで爽やかな朝。

さて、今日は藍色(インディゴ)に染めるもう一つの染料の話。

もう一つの藍

日本で蓼藍を原料に、育てて収穫して乾かして搗き潰して丸めて水かけて灰汁とか混ぜて発酵させて何度も漬けては乾かしてを繰り返して繊細に染め上げる技術を高めていった一方で、海外ではウォードにしてもインド藍にしても日本の藍ほどしっかり青色で染めきる術を持たなかった。日本では蓼藍のポンテンシャルを最大限に引き出す努力がされたのに対して、欧米ではその代わりに科学的に安定した強い青を手に入れようというアプローチが取られたのだ。

それを実現したのはドイツの化学者アドルフ・フォン・バイヤー。彼が1880年に石炭から天然インディゴとまったく同じ成分構造を持つ合成染料制作に成功。この合成インディゴを「化学藍」「合成藍」と呼ばれる。天然インディゴには不純物が含まれるのに対し、合成インディゴには不純物が一切含まれないことから「インディゴピュア」とも呼ぶ。
後にバイヤーは「有機染料およびヒドロ芳香族化合物の研究」でノーベル化学賞を受賞している。コーヒーの時もカフェインレスのコーヒー作ったのもドイツ人だったし、ドイツ人は合理的という一見ステレオタイプのような話を裏付けるストーリーは事欠かない。

ジーンズの起源

安定した青を提供できるようになり、現在では一般的なジーンズは木綿布を合成インディゴで染めて作られる。ここで、ついでにインディゴに因んだジーンズの話をしておこう。
そもそもジーンズの原型は19世紀頃にアメリカのカリフォルニアで作られた。当時、金鉱山などの過酷な環境で働く労働者達のために、丈夫な生地を用いて耐久性の高い作業用のパンツを開発したのが始まりとされている。開拓時代に作業着として作られたジーンズは、当初生成色(漂白あるいは染色される前の素材そのものの色)が主流だったが、当時ジーンズを着用して鉱山で働く労働者のために鉱山に潜む毒虫や毒蛇はじめ爬虫類や両生類の嫌う成分を含む天然インディゴの葉で青く染められるようになりそれが定着した(当然合成インディゴで染色された今のデニムにその効果はない)。

ジーンの語源

ジーンズの原料となるジーンは16世紀頃にイタリアの都市ジェノバという街のファスティアンは綿と麻が原料の織物、Jean fustian(ジーン ファスティアン)が語源。綾織とは、横糸の山が(通常は谷と交互に来るところ)縦糸2本ないし3本毎に来て斜めに入る線が特徴の伸縮性に富んだ織り方のこと。ジーン生地の産地であるイタリアのジェノバを表すフランス語Gêne(ジェーヌ)が英語でJean(ジーン)に転じ、そこから複数形のJeans(ジーンズ)になったと言われている。複数形になった背景は、左右の足に着用するものを別として捉えており、それぞれ英語で靴下(Socks)、パンツ(pants)、靴(shoes)など複数形で呼んでいたから。当時ジーン(Jean)は生地を指していたが、これらに倣ってジーンズ(Jeans)と複数形になったため、生地ではなくズボン(パンツ)を表すことになった。その後ジーンズは広義でズボンに限らずデニム生地で作られた衣類全般を指すことも。

デニムの語源

ではほぼ同義で使われるデニムとは何なのかと言えば、こちらは南フランスのニーム地方の綿の綾織Serge de nimes(セルジュ・ド・ニーム)が語源。当時フランスは綿花などの栽培も盛んで、国内や海外に綿製品の貿易も盛んに行われていた。特に港町に近いフランス南部の「ニーム」地方が織物生産地として繁栄しており、アメリカなどの英語圏で取引されるようになる。英語に訳される過程で「ド・ニーム」が英語読みして「デ・ニーム」になまり、「デニム 」へと変わっていった。

藍に話を戻そう笑
厳密な意味で日本の伝統的な「本藍染め」とは、すくも藍(蓼藍)のみで染められたものを指す。
本藍で染めた生地は、他の生地と一緒に洗っても色移りしないという特長がある一方で、化学藍は色移りするので注意が必要だ。
因みに、本藍(すくも藍)と合成藍をブレンドして染める「割り建て(わりだて)」というハイブリットな方法も存在する。

しまった、合成インディゴの話をまとめていたはずなのにほぼデニムの話になってしまった。
身近なインディゴ(=藍)の話として一旦は良しとして、また明日からは気を引き締めて藍を掘り下げていきたい。

*上記の情報は以下のリンクからまとめています。

https://led-ai.pref.tokushima.lg.jp/ai/

http://www.japanblue-ai.jp/about/index.html

https://www.metro.ed.jp/koishikawa-s/assets/filelink/filelink-pdffile-9695.pdf


僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。

皆様も、良い一日を。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?