アカペラをやめた今思うこと

こんばんは。尾花由佳理です。
自身の経歴を遡れば音楽経験のスタートは3歳ごろに始めたYAMAHA音楽教室のレッスンです。そして中高生時代の合唱・声楽の経験を経て、大学でアカペラサークルに所属しました。ポピュラーミュージックを積極的に演奏しはじめたのはこのアカペラサークル時代で、音楽活動という意味合いで言えばアカペラこそがスタートではなかったかと思います。ちなみに、アカペラというのは声だけで演奏する無伴奏のボーカルアンサンブルのことです。

大学卒業後、所属アカペラグループの解散があり、その後何度かグループに参加しましたが、現在はアカペラは一切演奏していません(企画的に演奏する場合はあります)
今回はアカペラをやめた私がアカペラという音楽について、今だからこそ思うことを書いていこうと思います。もちろんこれはあくまで私の推測やイメージ、感想であり、アカペラを褒めそやすつもりでも貶めるつもりでもありません。

これから音楽を始めたい人にはピッタリ

これまで音楽経験があまりなく、楽器経験もない、という方にとって音楽活動というのはなかなかハードルの高いものです。楽器を始めるにしても楽器を購入する初期費用が必要だったり、レッスンに通うことが難しい場合もあれば、続けられるかどうか不安を感じる人もいるかと思います。
アカペラの場合は「声」「歌」を使った演奏形態ですので、楽器は必要ありませんし、音楽経験が0の方でもチャレンジしやすいと思います。
また、私は音楽というのは励まし合える仲間、競い合える仲間がいた方が楽しみやすいと思っています。アカペラはグループで演奏しますし、コミュニティもしっかりしているので、仲間が作りやすいです。
アカペラが気になった方はとりあえず身近にあるアカペラサークルを訪ねる、というのがスタートしやすい方法なのではないでしょうか。

始めやすいけど、難しい

と同時に、アカペラははじめやすいですが、演奏の完成度を上げるのはなかなか難しい演奏形態だなと思っています。歌というのは取り組みやすいものではありますが、ピッチのコントロールが多くの楽器に比べて難しく、無伴奏での演奏となると特に初心者の方には安定した演奏が難しくなります。楽器と違い一曲を演奏する、ということは比較的は早くできるかもしれませんが、安定した演奏ができるようになるまでの道のりはとても長いと思います。
アカペラの演奏を見て「私にもできそう!」と思ったものの、想像以上に難しくて気持ちがめげてしまった、という人も何人か見てきました。

「アーティスト性」が弱い

これに関してはあくまで私のイメージですが、いわゆる「アカペラー」(アカペラを演奏する人たちのこと)や「アカペラグループ」は音楽知識や演奏技術が優れた方が多いものの、全体的に見ればアーティスト性というものが弱いと感じています。ここでいう「アーティスト性」というのは砕いて言うと「一般人ではない感じ」のことです。
私は「アーティスト」(直訳すると芸術家・美術家・その道の達人という意味らしいです)というのは「観客」とは大きな隔たりのある「特異な能力を持った人」である必要があると思っていて、アーティストとしてステージに立つからには、作為的であるにせよないにせよその「特異性」が強調されている必要があると思っています。音楽性であるとか、振る舞いであるとか、ファッション性であるとか、あらゆる面において「一般人ではない」必要があるということです。
ですが、正直アカペラーは「一般の方がステージに上がっている」というイメージがとても強いように思います。アカペラをしていない多くの方もそう感じている場合が多いのではないでしょうか。

もちろん観客と大きく変わらない一般人がステージに立つ姿に輝きを感じるというのも、一つのエンターテインメントだと思います。
ですが、この「アーティスト性の弱さ」というのが、私がアカペラと少しばかり距離を置いた理由でもあります。サウンドクリエイターとして、トレーナーとして、これまた作為的ですがプロとしてのイメージを強くしていきたいと考えた時、そういった「アカペラー」の特性が今後の活動にあまりいい影響を与えないように思ったのです。(なので今後も積極的にアカペラを演奏することはないと思います)

プロの数が少ないから?

なぜそういう特性があるように感じるのかを改めて考えると、きちんと商業ベースで活動できているプロが少ないからだという気がします。他の演奏形態でもアマチュアの方は多くいらっしゃいますし、アマチュアのレベル感もアカペラとそこまで大きな差はあるように感じてはいないのですが、逆に言えば手の届かないメジャーな「プロ」の存在が圧倒的に少ないように思えます。
魅力的なオリジナル曲を数多く持った、洗練されたアーティスト性のあるグループはもちろん存在します。ですが、数が少なく、アカペラー以外の方に浸透していないのも確かです。有名楽曲のカバーが主流なのも原因のひとつかもしれませんが、今後一般の方と大きく隔たりのあるスター性のあるプロアカペラグループが多く出てくれば、イメージは変わってくるのかな、と思います。

アカペラ以外の音楽も楽しんでほしい

アカペラをやめて、アカペラ以外の音楽に触れれば触れるほど、アカペラーのアーティスト性の弱さというのは痛感するところでもありました。私自身アーティスト性の強い音楽家というわけではないので難しい問題ではありますが、アカペラーだからこそアカペラ以外の音楽にチャレンジすべきでは?というのが私の結論です。
楽器をはじめてみるでもいいですし、ソロボーカリストとして活動してみる、アカペラ以外の音楽グループとコラボしてみる、などでもいいのではないかと思います。「アカペラ」よりも更にもう一つ大きい「音楽」の枠でチャレンジを広げてみることで、見えてくるものがありそうです。

アカペラが活躍できるフィールド

ただ、やはり私がアカペラを魅力だと感じるのは、最初に言った通り年代関係なく誰でもスタートしやすく、かつアカペラを通した密接なコミュニケーションがとりやすいという点です。そういった魅力を考えれば、海外でそうされているように、子どもの音楽教育や情操教育に積極的に活用されるようになるのが理想的ではないでしょうか。
アカペラをアカペラーのコミュニティの中だけで完結させたくない、という方にとっては教育という観点からアカペラという音楽を子ども世代に広めていくのも一つの手なのかもしれません。
また、アカペラはコミュニティがしっかりしている分、そのコミュニティの中で能動的に音楽を学ぶ機会を作りやすいのも魅力の一つかなと思っています。音楽教育の場面でアカペラが活用される時代がくるといいなあ、と純粋に願っています。

アカペラがあったから音楽活動と向き合えた

大学でアカペラをスタートし、アカペラーのコミュニティに所属できたことで学べたことや、築けた人間関係があります。私の場合、現在の音楽活動もすべてそこから派生しています。
そして改めてアカペラから離れたからこそ見えてきたアカペラの魅力、特性があるようにも思います。アカペラに感謝を持ちつつ、アカペラのフィールドから更に大きく羽ばたくような活動を行うために、今後も頑張っていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?