紫がたり 令和源氏物語 第二百六十一話 行幸(五)
行幸(五)
内大臣は大宮から文を読んで首を傾げておりました。
源氏の大臣がお忍びで三条邸を訪れ、折り入って話があるというのでお越しください、という旨のものです。
さてはとうとうあちらが折れて夕霧に雲居雁をという話か、そう内大臣は内心ほくそ笑んでおります。大宮の容体などを聞いてさすがの源氏も意地を張るのをやめたのかと勝った気分でいるのです。
こちらこそしびれを切らして待ち望んでいたのだから、せいぜい三条邸で首を長くして待っているがよい、などと機嫌よく身支度を整え始めました