紫がたり 令和源氏物語 第百九話 須磨(十六)
須磨(十六)
さて、播磨は明石の浦に“明石の入道”と呼ばれる人がおりました。
現在の播磨守は源氏の側近・源良清の父ですが、先の播磨守を務め、出家して明石に隠棲しているのです。
入道には十八歳の妙齢な娘がおります。
大切にかしずかれ、都の貴族の姫にも負けないほどの教養を持ち、見目形も麗しいという噂でしたので、地元の富豪や名士からの求婚が殺到しましたが、入道はどうしても結婚を許しません。
良清も長年想いを懸けてきた姫で、色よい返事がもらえずやきもきしておりましたが、どうやら入