紫がたり 令和源氏物語 第五十九話 葵(二)
葵(二)
六条御息所の苦しくも悲しい心裡を察し、一人御胸を痛められている御方がおりました。
式部卿宮(しきぶきょうのみや)の姫君です。
式部卿宮は桐壺院の弟君なので、姫は源氏とは従兄妹という間柄になります。
源氏は昔から美しくて聡明であるという噂のこの姫に並々ならぬ関心を抱いておりました。
ふとした時に庭の朝顔の赤紫がなんとも鮮やかで美しかったもので、その花と共に文を贈ったことから、「朝顔の姫君」とお呼びしております。
朝顔の姫君からの返事は、初夏を思わせる爽やかな香が焚