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SABETSUする心を変えるデザインを探そう 連載第3回

医療の問題は政治の問題

西村(NPO法人Reジョブ大阪)
医療費のことですが、現代の日本の医療では、飲まなくてもよいお薬を使っています。そもそも薬の飲みすぎですし、そこにお金が大量につぎ込まれています。同時にお金のない方にまで医療費を請求することも行われています。また、そういう人たちに補助も出ていません。
障害者は投票に行けない人もいるので、なかなか声が反映されないのだと思います。
そして、年寄りにお金をかけすぎですよね。

出口
高齢者の立場から言いますね(会場爆笑)

何かあったときの優先順位は世界共通です。まず子ども、次に女性、そして男性、最後に高齢者です。これが世の中の常識です。でも、日本は違う。「お年寄りを大切に」と言います。
医療に関してですが、日本は点数が大事ですよね。だから、不必要な高い薬を出すようなお医者さんの点数を下げればいいんです。
今後の日本に必要な、例えば、ACP(アドバンスドケアプランニング)を指導したら「1000点やるで」と言ったら、医者は全員ACPをやるでしょう。そして、医療の問題は100%政治の問題です。だから、きちんと自分と考えが合う候補者を、選挙で選べばいいんです。
ところが、日本人は選挙に行かない。
外国人がびっくりしてましたよ。
「日本では居酒屋で、熱く政治の話をする人が多い。こんなに意識の高い国はほかにない。きっと投票率は100%に違いない」と(笑)
ところが実際の投票率は50%程度。
「酒屋で政治論を話していた人はどこへ?」ということです。

西村
厚労省でACPのニックネームを募集中らしいんですが、そんなイベントより、ACPの指導に点数つけてって声を上げればいいんですね。

出口
ACPの指導に点数をつけたら瞬時にできるでしょう。さらに3年ごとに更新するようにして、そのたびに1000点やるっていうたら、全員やりますね。国のお金はそういうところに使うべきですね。

ヒロセ(ASP)
私はウイッグを使っています。ウイッグには、2種類あることをご存知でしょうか。ファッション用のウイッグはものすごく安いんです。でも、医療用はとても高い。直接肌につけるものですから、そういうところを大切にして選ぶと、15万円から40万円もします。それなのに耐用年数は3年弱。短いでしょう?助成金もありますが、あまり私たちの助けにはなりません。それはなぜか分かりますか?ウイッグなくても命にかかわらないからです。これは、差別かなと思います。
私はウイッグをかぶって仕事をしています。かぶらないとやっていけない現状がある。仕事に就くときに、面接で「かぶらずに仕事をさせてください」とお願いしたら、病院に「うちには癌患者もくる。頭髪のないあなたが対応したらどうなります?」と聞かれました。むしろ私の方がとても傷つきました。病院側の都合でかぶっているのですが、病院側も国も何も補助、対応してくれないんです。
このような問題に対して、答えが見つけられるような世の中になるのが最先端なこと。私は最先端なことをしていると思っています。みなさん、自信持って一緒にやりましょう。

出口
普通の人が好きなことをやってご飯が食べられることが理想の社会ですよね。選挙に普通の人が出ない以上、普通の政治はできない。投票率が低いから二世三世議員が多いわけです。みなさん、投票に行ってしっかり自分たちの気持ちを反映しましょう。それしかないんです。

ここで、このイベントのファシリテーター中村美由紀さんが、すべての意見をまるっとまとめた。

・差別というのはものを知らないこと、ファクトに基づいて考えていないことからきている。
・自分の心を変え、みんながちょっとずつ正しいことが反映できる社会のしくみを作ることで、世の中も変わっていく可能性が高い。

この二つのまとめは、最初の「差別そのものはなくならないと思われます。では社会の、意識のどこを変えればいいのでしょう。」という問いに見事に呼応している。

ASPJパフォーマンス

ASPJはファッションショーや写真会など、おしゃれで人目を引く活動をしている。頭髪がないことを逆手に取り、むしろ美しさの一つとして表現しているのだ。今回のイベントでも開演に先立ち、朗読と舞のショーを披露した。


パフォーマンス:MITSUKO & oyuyu

朗読される詩と舞、あまりにも美しい。思わず「ずるい」と妬んでしまうほどの美しさだ。「差別」とはいったいなんだろう。「私は彼女たちより頭髪が多い。」口に出すと「ひがみ」に捉えかねないようなチンケな言葉に成り下がる。違いを感じることは大切だ。でもそこに優劣はない。もし優劣を感じるとしたら、そこに何らかの強いセンサーがあるのだろう。

記録が触媒になって場を活性化するグラフィックレコーディング

今回のイベントでは、傍らで男性が一人黙々と何かを書いていた。それがグラフィックレコーディングというものだ。

グラフィックレコーディングが出回った頃は、SNSなどで「落書き」などとばかにされることもあった。ところが、この威力たるや、まったくもって落書きなどではない。場で起きていることを瞬時に共有し、それを見る人に即座に還元する。レコーディングとはなっているが単なる記録ではなく、その場で参加者然と場に加わっている。
この場にいなかった人にとっては、これはただのイラストを使った議事録のように見えるかもしれない。しかしこのグラフィックは、イベント中は活気に満ちており、まさにLIVE、参加者にエッセンスを投げ続けた。参加者と同時進行で進むレコーディングの息吹を、参加者ならこのグラフィックの中に感じることができるはずだ。

山野元樹さんについては、こちらを!
http://www.graphiccatalyst.com/posts/categories/642028

NPO法人Reジョブ大阪と言えばご飯付きイベント

さて、知る人ぞ知ることだが、NPO法人Reジョブ大阪のイベントはたいていご飯付き。これは、今回トークショーに登壇した言語聴覚士の西村が、大阪で長年続けてきた、勉強会のスタイルだ。何かを学んだあとで「同じ釜の飯を食う」ことの大きな意義を感じる。

出口先生に食事をしながら学びを請う。贅沢で貴重な機会となった。出口先生は「人」「本」「旅」が大好きで、それが人生を作ると語る。人に会い、本を読み、旅=現場に出向く。そうして脳を活性化させて豊かな人生にしろと言う。言語聴覚士らしい「よく噛む、咀嚼する」食事でしっかりと心の栄養になった。

価値観の違うあの二人

「この二人は結婚しない方がいいかもしれない」
連載第1回に登場した二人、障害者に対し違う価値観を持つ二人を見て、以前の私はそういう結論を簡単に出していた。しかし、このイベントに参加した今は全く異なる気持ちだ。
この二人は是非とも結婚すべきだ。そして、お互いを理解し合おうとして、たくさんの会話を積み重ねたらいい。子どもができたら、また皆で考えればいい。自分と意見が違うものを排除してはならない。そして、なぜそんな世の中になっているのか、人に会い、本を読み、現場に出向いてしっかり咀嚼する。何が「区別」でどこから「差別」なのか、思い切り考えて行こう。

文:NPO法人Reジョブ大阪理事 松嶋有香
写真:さっち

おわり(全3回)
第1回 URL
https://note.mu/yukamatsushima/n/n4eefb3a879d2
第2回 URL
https://note.mu/yukamatsushima/n/n4c95f9017253

主催団体、ASPJとNPO法人Reジョブ大阪では、講演活動、啓蒙活動のための資金を集めています。ASPJのメンバーの一人は群馬、NPO法人Reジョブ大阪のメンバーは大阪で暮らしています。二人の、東京までの片道切符、みなさんの支援で買えますように。
帰りは自力で帰ります(笑)
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