YuuSuehiro/末廣ゆう
5.梅見の宴 園臣生羽が準備出来るだけの精一杯の最先端で高価な正装を身につけた万葉は、ぼんやりと佇んでいた。 完全に壁の花と化している。 あまりにも気がない素振りなので、普段は気軽に女性たちに声をかける連中も、ご機嫌伺いに声をかけることも憚られ、万葉はたった一人ぽつんと最先端で豪勢な料理を摘んでいた。 食べる気だってしないのだが、することもないのだ。 それに、さすがは天皇に献上するだけの品々で、見たことも聞いたこともないような品がズラリと並べられている。 その中
4.梅見の宴(承前) すっかり万葉は大人しくなってしまった。泣く事もわめく事もないかわりに話す事も笑う事もない。しかしその憂いの帯びた顔も、冷ややかな父親を軽蔑しきった顔すらも美しい。園臣生羽はこれで大丈夫だと安心した。父としては失格だが、臣下としては最上の事が出来た。あとは万葉を文武天皇が気に入るかどうかだが、父親の贔屓目を差し引いてもこれだけ美しい。この美しさに目を奪われない者はいないだろうし、梅見の宴で何一つ話さなくとも大人しくさえしていれば、園臣生羽は藤原氏のよう
3.浮気疑惑と陰謀 年が明けて朱鳥十四年(六九九年)になっても三方沙弥が咳込む事がやまなかった。だが万葉は「犬はくしゃみをするけれども、人は咳をするのね」とのんきに構えていた。それよりも、もっともっと、夜を楽しみたい。せっかく夜が長くなったというのに、一緒にいられる時間が長くなったというのに、通ってこないなんて許さないわ、と無邪気に笑っていた。そして、とうとう三方沙弥は寝ついてしまった。万葉は大慌てである。園臣生羽にも、坊主が髪結い(成人式)に付き添うとは情けないが、でも
今年は鬱の旦那を献身的に支えました。 来年はもっと回復してくれたらいいのだけど。 小説もたくさん発表できました。 来年もたくさん書きたいな! よいお年をお迎えくださいね。
2.男二人で雪見酒 それ以来、万葉は三方沙弥に人目もはばからずまとわりついて、「橘の実が食べたいわ、取って持ってきて。あたしのおうちに」と毎日のように繰り返した。三方沙弥は橘の実をもって毎夜、園臣生羽そののおみいくは……万葉の父……の屋敷に訪れた。それは都中に広まり、やっぱり坊主になったとて、あいつは変わらんなと噂になった。三方沙弥は十戒を受けたのだが、そもそも女遊びが過ぎて「俺はもう枯れた。女はたくさんだ」と寺に逃げ込んだのだった。それでも、あんな童女にいれあげるとは堕
1.豊穣の炎上 あたしはまだほんの童女こどもだった。美味しい橙色の橘の実につられて、美しい坊主の後についていった。髪が綺麗だね、と褒められた。うなじできちんと切り揃えられたばかりの髪を綺麗だと言ってもらえて、嬉しかった。触ってもいいかい? と言われたら「どうぞ」と言ってしまった。あたしは実を食べていた。そっとおかっぱの髪に触れられて、撫でられた。それはそれは、愛しそうに。くふんと鼻を鳴らして、実を食べているあたしを「まるで、小犬のようだね」と坊主は言った。 「それでは、お
婚約 慰安旅行が終わり、毎日の仕事が始まる。 二人はランチの準備で朝六時に店に集まる。 清掃、買い出しを手分けして済ませると、梨花は厨房に、五木はそのお手伝い。 五木は料理下手だといっていたが、なかなか優秀な助手だった。 今までやっていなかっただけなのだ、料理を。 ランチは五木がホール担当し、梨花が厨房担当だ。 梨花が厨房から出ることは滅多にない。500円のバターチキンカレーは大鍋いっぱいに作ってもすぐ追加を作らなくてはならなくなった。ピクルスを添
やってもないのに 朝、ノロノロと起き上がると着替えてメイクと髪を整えて梨花は家を出た。 駅の手前のローソンで朝食を買い、カバンに入れる。店から出て、駅の改札手前でピタリと足が止まった。 駅の改札を入ることができない。石井が待ち伏せしているのではないかとキョロキョロ、周りを見回す。 くるりとUターンするとまたローソンに入り、カウンターに腰掛けてパンの袋を破いた。 口に運ぶが咀嚼がうまくできない。いつまでもモゴモゴと口を動かしているのだが飲み込むことができない
僕が守るから その夜バーに訪れた梨花は様子がおかしかった。ソワソワと振り返りながらドアを締め、指し示された席ではなく隅っこに腰掛けている。よく見るとカタカタと震えている。 ピンときた五木はドアに閉店の札をかけ、チョコレートをいつものように梨花の前に置くと、他の客の相手に努めて梨花をそっと一人にした。 落ち着いてきた梨花はチョコレートを一粒づつ口の中に放り込んでいく。甘さが疲れとあの事件をトロかしていった。 他の客が全員会計を済ませて帰っていく。終電の時間を過ぎ
常連 翌日から梨花のバー通いが日課になった。 毎日五木の待つバーに訪ずれた。 仕事場に泊まりのとき以外は毎日である。 せっせと通ってカクテル一杯とスコッチ一杯を日替わりでオーダーする。 オーダーを断ることなく全て叶えてくれる、まるで魔法のようなバーだった。 梨花はすっかりいつものバーが気に入ってしまった。 五木に仕事の愚痴を聞いてもらえる。 毎日のようにアポロチョコをサービスしてくれる五木に好感を抱いた。 他の客にはアポロを出しているところ
初入店 終電で自宅の最寄駅についた梨花は、くたびれた足取りで駅近くのコンビニのドアをくぐった。甘いモノを買って、おうちで食べよう。そうしよう。 三十代も終わりに近づき、独り身で、癒してくれるペットも恋人もいない。 ため息をつきながら、チョコケーキの上に白いマカロンが乗ったスイーツを一つ買う。ハートの形が可愛らしいマカロンに惹かれたのだ。 コンビニのレジ袋を提げて、ゆっくり歩いていると暖色の灯りに照らされたバーの看板が目に入った。 (あれ、新しいお店かな……)
R15からR18作品に昇華した甘い恋。 完結しました。 書いてて楽しかった。 ムーンライトノベルズで甘い恋、末廣ゆうで検索してみてね! よろしくお願い申し上げます。
皆さんmerry xmasのシーズン到来ですがいかがお過ごしでしょう? 末廣ゆうで御座います。 お久しぶりの更新となります。 現在小説家になろうのサイト上にてR15作品である甘い恋を毎日平日正午に更新中です。 毎日の更新に追われてて大変ですが、書いていて楽しいです。 是非暖かい部屋でお酒でも飲みながら読んでいただきたいです。 https://ncode.syosetu.com/n8738cr/1/ 次話をお楽しみくださいませ♪
寛解したと主治医に言われて薬の服薬を長い間やめていたら、再発したので入院した。 寛解とは薬の服薬をしている状態で症状が収まっていることを指すらしい。 主治医からは薬を時には飲むように、デイケアにも毎日行くようにと指示されていたのに無理解でいた。 主治医からは非定型精神病ですと告げられました。 非定型精神病とは躁うつ病と統合失調症の2つの症状が出る病気だと主治医談。 2018年5月26日に医療保護入院しました。 2018年1月29日に母が逝去、祖母も連れて行くかのように翌
42歳「脳が壊れた」ルポライターのその後〜私が障害を受容するまで #現代ビジネス http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50288 できないことはしょうがない。逆にできることを緻密に真剣にやればいいし、できないことは人にやらせるという男前な女王様体質が、妻の受容のスタイルだ。周囲からすれば結構迷惑だが、生き抜く上で理にかなってはいる。 これ、ああわかるなぁってエピソードがデイケアであったので、記そうかと。 男性も含めた数名でデザートを食