見出し画像

カカオ86%の苦み。

わたしは小さい頃から薬味が苦手だった。

七味唐辛子も、わさびも、刻みネギも、
紅生姜やガリはいまだに苦手だけれど。

でもスープに入っている生姜や
ジンジャエールは飲める。

ぶどうは好きだけどレーズンは苦手で
さくらんぼは好きだけど、さくらんぼ味は苦手
でもメロンは好きだしメロンソーダも好き。

わたしの中にはそんな矛盾が数多く存在する。

きっと風味や食感の好みなのだと思うけれど
不思議なことに大人になってから
克服できたこともある。

わさびや唐辛子のような薬味に関しては
今となっては必要不可欠な存在になっている。

大人になると味覚が変わるという人や
味覚が衰えるという人もいるけれど
わたしはどちらも正解だとは思わない。

いまだにカレーやオムライスみたいに
濃い味やはっきりとした味も好きだし

出汁の風味や味わいの奥深さを
感じ取れるようにもなった。

例えばパソコンのソフトがアップグレードされても
以前の機能がすべて使えなくなるわけではなく
それらをより使いやすくさせてくれるように

味覚も同じようにアップグレードしているのだと
わたしは思う。

・・・ん?同じか?

いやでも小さい頃大好きだった
カルビはたくさん食べられなくなったし
大トロなんて論外なのだけれど。

それは舌ではなく胃の問題なのだろうか・・・


うーん・・・


いや今はそんな話がしたいんじゃない。


味の奥深さでいうとチョコレートもそう。

小さい頃はミルクチョコレート一択で
お中元やお歳暮でいただけるアソートは
洋酒の効いたものやブラックチョコだけが残り
父さんや母さんがいつもそれを食べてくれていた。

子供舌の私からしたら
両親はどうしてそんな不思議な味のものを
嫌な顔をせず食べているのか理解できず

ミルクチョコレートばかりを食べる私は
なんだか申し訳ない気持ちになった。

でも大人になってわかる。

その洋酒の風味があるから美味しくて
ただ苦いだけではなく
その向こう側にある奥深い甘さが良いのだと。

(”苦味の向こう側”
我ながらちょっとおしゃれなこと言いました)

今となってはブラックコーヒーを傍に
カカオ86%のチョコレートの
濃く深い甘みを感じながら
美味しくいただけているので
わたしは身も心も
ちゃんと大人になったのだと実感する。


すっごく頭の悪いことを言わせていただくと
小さい頃はブラックと呼ばれるものって
なんだかかっこいい大人のイメージだった。

ブラックコーヒーもブラックチョコレートも
黒いスーツや革靴や通勤カバン

大人になった今でもそのイメージは残っていて
黒を身にまとう時は
決まって背伸びをしたくなる時だ。

我ながら子供の頃よりも
黒が着こなせるようになっている自分が
ちょっと嬉しかったりする。

それでも一つだけ似合わなくなった黒がある。

それは髪色。

大人になってからというもの
ミルクチョコレートのような
ブラウンの髪色で過ごすことが多かったけれど
先日数年ぶりに黒く染めた。

美容院で染めて帰ってくるまでは
そんなこと思わなかったけれど
家の鏡を見て我に帰った。


・・・いや老けとるやないかいっ!


世間一般的に髪色を黒にすると
幼くなるとか
若々しく見えるとか言うけれど
鏡に映るわたしは
数年先にタイムスリップしたかのよう。

もともとイエベで面長なので
明るい髪色の方が良いというのは
重々承知の上なのだけれど
それにしても似合わなすぎる。

ブラックコーヒーが飲めるようになっても
ブラックチョコレートを
美味しくいただけるようになっても
似合わない黒もあるのだと感じた。


子供の頃は感情表現も勉強も
白か黒、正解か不正解に溢れていたけれど

大人になるにつれて
そんなコントラストのはっきりした答えが
似合わなくなった。

それもまた大人の奥深さというものなのだろう。

そんな曖昧さも奥深さも愛して
しっかりと味わうことこそ
大人の楽しみ方なのかもしれない。


花崎 由佳


この記事が参加している募集

#今こんな気分

76,701件

#3行日記

45,775件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?