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夏の星座を通して見るフィレンツェの作品 5 ヘラクレス座

成長後の話。

ゼウスが見初めたアルクメネ王女から生まれたため、彼の正妻ヘラから憎まれる羽目になったヘラクレス。揺り籠に大蛇を送りつけられただけにとどまらず、成長してからもヘラの嫌がらせは続きます。

ヘラクレスがミュケナイの王子として過ごしていたある日、テーバイが面していた戦争で功績を上げたため、テーバイの王クレオーンは娘のメガラーを妻として与えます。二人の間には3人の子が生まれますが、面白く思わなかったヘラはヘラクレスに理性を失わせ、妻子と兄の子を殺させてしまいます。

正気に戻ったヘラクレスは罪を償うため、アポロンの神託を伺います。すると

「ミュケナイ王エウリュステウスに仕え、10の課題を果たせ」

と告げられます。

本当ならヘラクレスがミュケナイの王だったはずなのに、ヘラの意地悪のために逃した王位に就いている人に従わないといけませんでした。彼は文句一つ言わず、神託を受け入れます。そのため敢えて苦難の道を歩んで行くことを「ヘラクレスの選択」といいます。

最初の2つはネメアの獅子と呼ばれる怪物とヒュドラという9の頭を持った水蛇の退治です。


ロマーノ・ロマネッリ 「獅子と闘うヘラクレス」 1937年 オンニサンティ広場
苦しむ獅子
激しい取っ組み合い

ネメアはあらゆる刃物を跳ね返す皮に覆われていましたが、ヘラクレスは棍棒で殴って悶絶させ、3日間の格闘の末に絞め殺します。

ネメアは後に獅子座になります。

退治後、ヘラクレスはネメアの皮をはぎ、頭から被って鎧として愛用しました。そのため彼は、芸術作品では獅子の皮を被った姿でよく現わされます。


アントニオ・デル・ポッライオーロ 「ヒュドラを倒すヘラクレス」 1475年頃 ウフィツィ美術館
ヘラクレスが被っているのはネメアの獅子の皮

一方ヒュドラは触れたら最後、必ず絶命してしまう猛毒を持った蛇です。しかも首を落としても2本の首が再生してきてしまうので厄介でした。そこで従者が裁断口を松明で焼いて再生を妨げ、何とか退治します。
ヘラがヒュドラに加勢させるべく送った巨大な蟹もいたのですが、こちらはヘラクレスにあっさり踏み潰されます。

退治されたヒュドラはうみへび座に、蟹は蟹座になります。

残念ながらヒュドラ退治は従者の協力があったため、エウリュステウス王は課題をこなしたと見なさず、別の難題を課されてしまったのでした。彼の旅はまだまだ続きます。

フィレンツェにいらした時の参考になさってみてください。

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