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20、デンマーク社会を支える「平等」

デンマーク社会を根底から支えているのは安心感であり、安心感があるからこそ、人びとが主体的に環境を選んで能力を発揮できるということをお話ししました。

次は、デンマーク人が大切にする3つ目の価値「平等」についてです。

平等 →   包摂(インクルージョン)

「平等」はデンマークを語るときに外せない概念で、SDGs的な概念でもあります。SDGs17のゴールの1つに「人や国の不平等をなくそう」というゴールがあります。これは「誰ひとり取り残さない」というSDGsの理念にも通じるものです。そして、この理念はひとりひとりを社会の構成員として取り込んで支えようとする「包摂(インクルージョン)」の考え方です。

デンマーク社会は「平等」を重視し、すべての市民を「包摂」しようとします。誰もが安心感をもって暮らせるように、平等に機会を与えようとします。

誰もがチャンスがもてる

たとえば、小学校から大学までの教育が無料ということは、国民の誰もが平等に健康や教育へのアクセス権をもっているということです。経済的な理由で医療機関の利用を躊躇したり、経済的な理由で志望校や学部への入学を断念したりしなくて済むということです。成績や学力は進路に影響してきますが、少なくともスタート時点では、誰にでもチャンスがあるということです。

キャリアと子育ての両立は当たり前

デンマークでは、待機児童の問題はありません。保育園や幼稚園は(人気で長いウェイティングリストがある施設はありますが)選ばなければどこでも入れます。有料ですが、収入に応じて補助金でカバーされるので、経済的な理由で子どもを預けられないということはありません。ですから、親は誰でも子どもを施設に預けて働いてキャリアを継続できます。

また、デンマークの職場は被雇用者に子どもがいることを想定した労働環境づくりをしているので、キャリアをとるか、子育てをとるか、といった2択を迫られることもありません。

ジェンダー平等

女性もフルタイム労働が当たり前。男性も家事育児をするのが当たり前。

デンマーク人男性は「家事育児を手伝う」というレベルではなく、本当にガッツリ家事育児をしています。男性もベビーカーを押し、子どもの送迎をし、保護者会に参加し、保育施設の役員になり、学校のクラスの役員になり、家庭では得意分野の家事を担い、子どもとよく遊んでいます。デンマークは北欧のなかでは男女平等が遅れている方ですが、それでも、男性の家事育児へのコミットメント具合や女性の仕事に対するプロ意識は凄いなと思います。

また、それは同時に、男性だからといって家事育児を免れられない、女性だからといって専業主婦に安住できない、という厳しい側面もあるということです。そのせいか、一般的に、デンマーク人女性は可愛らしさよりも、カッコよさを持っています。   

結婚する権利、子どもをもつ権利         

先ほども述べましたが、デンマークでは医療も出産も無料です。ですから、経済的な理由で病気の治療を諦めたり、子どもをもつことを諦めたりすることはありません。家庭の経済状況にかかわらず、子どもが欲しければ子どもを持てますし、子どもを大学まで通わせることができます。

尚、デンマークでは結婚していないカップルから生まれる婚外子は約半数に上ります。また、子どもをもつ方法として、国内外からの養子縁組や精子バンクからの精子提供なども一般的な選択肢です。

同性婚も認められていますし、同性同士の結婚した2人が、養子縁組や精子バンクからの精子提供を受けて子どもをもつこともできます。

障がい者の自立をサポートする

また、デンマークで道を歩いていると、障がい者が電動スクーターに乗っているのをよく見かけます。電動スクーターに乗って1人で移動し、スーパーで買い物もしています。もう見慣れてしまってあまり意識することはないのですが、ふとしたときに、外出している障がい者の多さに改めて驚くことがあります。

デンマーク発祥の福祉の世界的理念に「ノーマライゼーション」があります。障がいの有無にかかわらず、誰もが平等に当たり前の生活ができる社会を実現させるという考え方です。障がい者を保護・隔離するのではなく、障がい者も1人の市民として社会と関わりながら自分の人生を生きられるように国や自治体がサポートしています。

「平等」を社会に具現化させる

このように、デンマークでは「平等」という言葉だけがひとり歩きすることなく、社会づくりに活かされ、具現化されています。

また、これは私の肌感ですが、デンマーク人と話していると、自分さえ良ければいいといった考え方ではなく、自分の暮らしを大切にしながらも、みんながより良く生きられる社会であるべきだということをそれぞれの人が当たり前のように信じているように感じられます。

そういえば、これは私のなかでは衝撃だったのですが、インタビューしたデンマーク人にはこんなことを言っていた人もいました。「税金を払う=社会貢献。税金を払うという形で簡単に社会貢献ができるデンマークのシステムは素晴らしい」。この発言、皆さんはどう思われますか?


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