見出し画像

19、デンマーク社会を支える「主体性」

デンマーク社会を支える1つ目の価値は「安心感」とお伝えしました。

次は、デンマーク社会を支えるもう1つのの価値「主体性」についてお話ししたいと思います。

安心感と主体性

じつは「安心感」は「主体性」と密接に結びついています。皆さんの頭のなかでは「安心感」と「主体性」はどのような関係にありますか? 一見、まったく関係がないか、むしろ反発し合う概念のように感じませんか?

けれど、デンマークに暮らしていると、安心感があるからこそ主体的に生きられるのだということを感じます。

もちろん、世の中には逆境をバネに頑張れる人もいますし、不安を糧に行動ができる人もいます。けれど、それは本当の意味で満たされた幸せとは言えません。また、多くの場合、やはり逆境は困難に、不安はブレーキになってしまいがちです。そういう意味で、デンマーク人は基本的な安心感をもっているからこそ、自分のなかから自然に湧き出てくる想いにしたがって主体的に生きることができているように感じます。

主体性を重視する社会

デンマーク人は主体性を重視する国民です。

教育でも仕事でも主体性のある人が高く評価されます。ただ、デンマークで評価される主体性というのは、決してガツガツと競争するような主体性ではありません。

他人に勝つというモチベーションではなく、所属するチーム・組織・社会をより良くするために自分にできることを考え、発言や行動をするという種類の主体性です。あくまでも自分を起点としていて、自分の理想を実現する主体性であり、所属するチーム・組織・社会のために自分がしたい役割、あるいは自分がすべきと考える役割を果たすといった主体性です。

これは、置かれている環境が自分の目指すものとかけ離れている場合、そこで我慢せずにさっさと環境を変えてしまうということでもあります。これは弱点でもあるのですが、その潔さや柔軟性もまたデンマーク人の持ち味です。

安心感があるから動ける

そして、ここで注目したいのが、デンマーク人がいざとなったらすぐに環境を変えられるのは、環境を変えてもなんとかやっていけるだろうという安心感があるからということです。

「失業しても、転職に失敗しても、起業に失敗しても、離婚しても、まぁなんとかなるだろう」という気持ちがどこかにあり、環境を変えることに大きな抵抗感を持っていません。不満があっても不安にがんじがらめになって動けなくなるのではなく、失敗してもなんとかなるから不満があれば動いてみようというスタンスです。

デンマークは転職率も起業率も離婚率も高いのですが、これは我慢したり諦めたりせずに、理想の人生を送るために主体的に行動している人が多い証拠でもあります。

主体性 → 能力発揮 → 人材の有効活用へ

そして、主体的に生きている人が多いと、社会はどうなるでしょうか? 

主体的でいるとクリエイティブになります。さまざまなアイデアを思いついて行動でき、実験を繰り返しながら進んでいけます。それはきっと幸福度にもつながるはずです。また、主体的な人間が集まった組織は機動力や柔軟性があり、少人数でも大きな力を発揮します。

デンマークのように人口が少ない国では、人材を有効に活用する必要があります。ひとりひとりが主体的に生きることで個人の能力が引き出され、結果的に社会全体として人材を最大限に活用することにつながるのではないでしょうか。

デンマーク社会は安心感をベースとした主体性に大きく支えられているように感じます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?