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石畳の道 (京都 北野天満宮)

わたしが京都に引っ越したのは、2022年の春のこと。 梅の花が咲き始める頃、北野天満宮のすぐ近くのシェアハウスを見学し、1ヶ月後には住み始めた。 京都はこじんまりとした街なので、自転車に乗って、市内どこでも行くことができる。 知らない道を走るのは楽しい。 20分もあれば、鴨川まで行けるのが嬉しくて、気になるカフェやパン屋さんを横目に見つつ、自転車を漕ぎまくる日々。 行きも帰りも決まって通るのが、上七軒の参道だった。 今出川通の上七軒交差点から北野天満宮へと続く、石畳の道。

    • よつばとつばめ

      京都市内を散歩したり、自転車で走り回っている時、ついつい目で追ってしまうものがある。 臙脂色の車体に、クローバーのマークが目印の、ヤサカタクシーである。 行灯と後部ドアに三つ葉のクローバーが描かれた、なんとも可愛いヤサカタクシー。 京都市内いたるところで走っている、ありふれたタクシーなのだけれど、出会った時に必ず目で追ってしまうようになったのは、幸運の四つ葉タクシーなるものの存在を知った時から。 約1300台のうち4台しかないらしい、四つ葉タクシー。(ネット情報) 見つけると

      • 角砂糖ひとつ (京都 六曜社)

        喫茶店がすきだ。 煙草と珈琲の匂いが、壁やソファや床にまで染み付いているような、正しい喫茶店がすきだ。 馴染みのおじさんが、ひとりで珈琲を啜りながら、スポーツ新聞を広げているような、渋い喫茶店がすきだ。 雨の日も晴れの日もなんだか薄暗くて、開店した時から時間が止まっているような、古い喫茶店がすきだ。 京都三条にある「六曜社」も、そんな老舗喫茶店のひとつ。 ときどき、あの懐かしい空間に浸りたくなって、ふらっと立ち寄る大好きな場所。 六曜社の珈琲は、ソーサーの上に置かれたスプ

        • 春の嵐

          春が終わった たった30分間の嵐が稲光と共にやって来て 甘い白昼夢のような春を連れ去ってしまった わたしはあまりに幸せで この幸せがずっと続くようにと祈る。 そしてそれは叶うと根拠もなく信じている。 それと同時に その裏側で雨に打たれている人をおもう。 わたしが雨に濡れずに家に帰り 温かいおうどんを食べて 湯船に浸かっている間 冷たい雨に濡れて震えている人をおもう。 雷に向かって自転車を漕ぎながら ごめんなさい ごめんなさい と つぶやく 一瞬 夜空が白く光る 灰

        石畳の道 (京都 北野天満宮)

          小指のない女の子

          村上春樹の小説をはじめて読んだのは、中学2年生の時だったと思う。同じクラスの友達が、ノルウェイの森を貸してくれたのだ。 小学生の頃から、読書はまあ好きな方だったので、年相応の本をいろいろと読んでいたような気がする。続きが気になりすぎて、机の下に隠しながら授業中も読むくらいには、読書が好きな少女だった。あのちょっとしたスリル、今となってはもう味わえないな。先生にはバレてたかもしれないけれど。 中学生が読むには、いささかセックスシーンが多すぎる、赤と緑の表紙の小説を読み終えた

          小指のない女の子

          月見バーガーひとつください

          月見バーガーが食べたい。 今年こそは食べたい。 そう思い立った9月の終わり、自転車で最寄りのマクドナルドまで走った。 秋晴れの空の下、爽やかな風を感じながら、自転車を漕ぐのはなかなか気分がいい。 しかも憧れの月見バーガーを買いに行くのだ。気分がよくないはずがない。 マクドナルドが月見バーガーをいつ発売したかなんて知らないし、わたしが月見バーガーの存在をどうやって認識したのかなんて覚えていないけれど、なんとも思っていなかった(なんなら美味しくなさそうだと思っていた)月

          月見バーガーひとつください