春の嵐
春が終わった
たった30分間の嵐が稲光と共にやって来て
甘い白昼夢のような春を連れ去ってしまった
わたしはあまりに幸せで
この幸せがずっと続くようにと祈る。
そしてそれは叶うと根拠もなく信じている。
それと同時に
その裏側で雨に打たれている人をおもう。
わたしが雨に濡れずに家に帰り
温かいおうどんを食べて
湯船に浸かっている間
冷たい雨に濡れて震えている人をおもう。
雷に向かって自転車を漕ぎながら
ごめんなさい
ごめんなさい
と
つぶやく
一瞬 夜空が白く光る
灰色がかった紫色の白い夜空
遅れて 鈍い雷鳴がきこえてくる
ごめんなさい
ごめんなさい
世界の不平等を平らげたくて
輪廻転生を信じてみたりするけれど
ほんとうのところはわからない
恵まれているわたしは
それでも、だからこそ、悲しい
生まれてしまった悲しみは
生きている限り消えない
生きて生きて
生きたその果て
いのちが消える時
悲しみはどこへいくんだろう
嵐に巻き込まれて
雨になって
いつか誰かの涙になるんだろうか
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?