組織風土としてのリーダーのあり方がスタッフのバーンアウトに及ぼす影響とは。
組織風土と、バーンアウトの関係性を「看護」という環境において研究した面白い論文があったので、今回はこちらをまとめようと思います。
論文:組織風土としての看護師長のあり方が看護スタッフのバーンアウトに及ぼす影響/塚本尚子さん、結城瑛子さん、 舩木由香さん、田中奈津子さん、 山口みのりさん
研究目的
病棟の人的環境の大きな要素である看護師長に注目し、スタッフが組織風土として認識する看護師長のあり方と、その認識を規定する要因、さらにその影響を明らかにすることを目的としています。
看護師長が自身で発揮していると認識しているリーダーシップと、スタッフが捉えている組織風土としての看護師長のあり方に、どの程度の差異があるのかを明らかにしていきます。これによって看護師長の実像と、組織風土としての看護師長が、どのような関係にあるのか、また、これまでのリーダーシップ研究がなぜ有効な離職やバーンアウト対策へと結びつかなかったのかについて知る手がかりとなることが期待される。
バーンアウトとは何か?
バーンアウトには色々な定義がありますが、この論文ではMaslachとJacksonの定義が用いられています。
先行研究では、部下のバーンアウトには、マネージメントスタイルやサポート不足、仕事内容についての適切でないフィードバック、部下の問題には関与しないという上司の信念などが関連要因として指摘されています。
他にも、O’Driscollと Schubert は、バーンアウト防止には、上司と部下の相互関係が重要であることも指摘しています。
組織風土とは何か?
組織風土は、この論文では以下のように定義されています。
病棟に勤務する看護師の組織風土とは、所属する病棟特性についての認識であり、物理的環境、人的環境のすべてを含むものです。塚本・野村において、病棟の組織風土が、バーンアウトを媒介として、看護師の離職意図に強い影響を及ぼしていることを明らかにしてきました。
組織風土としての看護師長のあり方は組織風土の定義に従って、以下と定義しています。
研究方法
対象者
対象病院は、職場環境や労働条件を均一にするため、病床数300床以上の大学病院を除く総合病院とした。首都圏の病院を無作為に抽出し6施設より了承を得た。対象は、同意の得られた6施設49病棟に所属する看護師1,022名である。
質問紙
看護師長のあり方尺度、病棟の組織風土尺度、マスラック・バーンアウト尺度(Maslach Burnout Inventory日本語版)、仕事ストレッサー尺度、疲労尺度、デモ グラフィック項目を含んでいる。
※尺度の詳細は論文を参照ください
期間
調査は離職動向を明確に知るため、2005年2月下旬から3月上旬にかけて実施。
解析方法
SPSS11.0Jを用いて、デモグラフィックデータについては度数分布を算出し「看護師長のあり方尺度」については各項目の記述統計、および因子分析を実施した。因子分析後は「看護師長のあり方尺度」の下位尺度得点について 記述統計、属性を用いた群間の平均値の差の検定、相関分析、さらに「バーンアウト尺度」との下位尺度間の相関分析を実施した。
結果
※記述統計や相関分析の結果表は論文をご参照ください
これらの結果から、看護師長は、スタッフの考えや意見を聞くという一方向的なコミュニケーションではなく、自己の行動の意図や、評価をスタッフにフィードバックするためのコミュニケーションをもつことが必要であると言えます。
それらを通してはじめて看護師長の意図と、スタッフの認識とが一致したよりよい組織風土が形成されると考えられます。