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【論文】ストレスの軽減のコツは、労働者のストレスにまつわる知識!?

仕事をしていると、誰もがなんらかのストレスを感じたことがあると思います。

ストレスの定義は、色々と調べてみたのですが、誰もが納得するものはあまりないらしいです。(誰もが納得する定義って確かに難しいかもしれないですね)

一つ紹介するとすると、Chrousos (小児科および内分泌学の名誉教授)は、「ホメオスタシスを乱すかも知れないような内因性あるいは外因性の力をストレッサー、ホメオスタシスを乱すおそれがある状態のことをストレス」と定義しています。

ホメオスタシスとは、「外界がたえず変化していたとしても、体内の状態(体温・血液量・血液成分など)を一定に維持できる能力のこと」なので、例えば上司から怒鳴られた時(ストレッサー)に、心拍数が上がる(ストレス)等が考えられます。

ストレッサーを自分で全てコントロールできるかといわれるとそれは難しいからこそ、自分がどのようなスタンスでいるべきか、周囲がどのような関わりをするべきか、など様々な対処の方法があります。

そこで、労働者自身が上手にストレス対処を行うために必要な知識を明確にした論文を紹介しようと思います。

ストレス対処に興味がある人、ストレスについての知識を深めたい人の何かヒントになるかもしれません。

【論文名】
職場のメンタルヘルスに関する最近の動向とストレス対処に注目し
た職場ストレス対策の実際
 大塚 泰正さん、鈴木 綾子さん、高田 未里さん




労働者自身のストレスに対する意識が重要


国際労働機関 (ILO, 1992) の報告によると、職場環境の改善が最も労働者の健康の確保に効果的であることが明らかにされています。

一方でストレッサーになる要因は家庭や地域など、職場以外にも存在しているため、労働者自身が自分のストレッサーやストレス反応に気づき、これに適切に対処することが何よりも重要となるとこの論文では主張しています。

でも、「自分自身がストレスを感じている」と気づくってどうしたらいいんだろう?と思う人もいる気がします。定期的に自分を点検している人ならまだしも、自分ではストレスを感じていないと思っていたら急に体調を崩してしまう人もいるはず。

だからこそ、自分の心の健康状態を客観的に知るために、さまざまな自記式の質問票が開発されています。

ここでは詳細は割愛しますが、論文では下記の質問表が紹介されていました。

職業性ストレス簡易調査票
Job Content Questionnaire (JCQ)
努力-報酬不均衡モデル調査票

『職場のメンタルヘルスに関する最近の動向とストレス対処に注目し
た職場ストレス対策の実際』


どのようなストレス対処に関する知識が必要か?を知るための問題集


このように様々な質問票があるものの、この論文では、日本では、労働者のストレス対処や仕事のポジティブな側面を測定する質問票はまだ数が少ないとの指摘をし、ストレスに対処するために必要な知識、方法の具体的な内容について研究をしています。

対象者:国内のストレス対処研究者 134 名を対象に、2005 年12月から2006 年1月にかけて郵送法でアンケート調査を実施

手法:先行研究と専門家からの意見を踏まえて一般労働者を主な対象とした ストレス対処を上手に行うための知識を問う問題集(10領域37項目)の作成

どのようなストレス対処に関する知識が必要かを検討し作成された問題集を使用した研修で、ストレス対処に関する知識が増えるかどうかを見ていきます。

結果とまとめ


研究:上記の問題集を用いて、ストレス対処に関する研修を行うことで実際に上手にストレス対処を行うための知識が増えるかどうかを検討

対象者: 警備会社に勤務 する警備員55名

分析方法:研修実施前後を独立変数とし問題集の合計得点と各領域の得点を従属変数とする対応のあるt検定

ストレス対処に関する知識の 「合計得点」 、「ストレス対処の対象とするストレッサーを明確にする」、「ストレッサーに対する有害性の評価 (一次的評価) が適切かを見直す」 、「自分が持つストレス対処の資源を開発する」、「モデリングの方法を理解する」、「認知の歪みの特徴を知る」、  「日常的にストレスや健康を管理する」にそれぞれ有意差または有意傾向が認められ、これらに関する知識が研修を受講することによって高くなる可能性が示唆された、と論文では記されています。

『職場のメンタルヘルスに関する最近の動向とストレス対処に注目した職場ストレス対策の実際』

自分が「ストレスを感じているかどうか」の認知ももちろん重要ですが、ストレス感じている時に、どう適切に対処するかという知識の視点も重要であるということをこの論文では教えてくれます。

そしてその適切に対処するための知識も、適切な方法で身につきます。

ストレスは、適切な知識で軽減する可能性があるということを、私もこの論文で学びました。

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