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<ラグビー>2024年シーズン(3月第三週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

(先週の「ヨーロッパ」の続き)
 ヨーロッパというのはギリシア神話のエウロパから来ているが、またこのエウロパは木星の大きな衛星で、生命維持に必要な水が十分にあることが最近確認されている。一方、神話のエウロパはフェニキアの王女だったが、クレタ島という「西」へ行ったため、「西にある地域」がエウロパ=ヨーロッパと称されるようになった。

 そのヨーロッパ人に多言語会話ができる人(マルチリンガル)が多いと、よく日本人が感心しているが、元々はラテン・ゲルマン・ケルトそしてスラブという親近性の高い文化から構成されている言語の上、フェニキア発祥のアルファベットを使用しているので、例えば日本で「津軽弁・大阪弁・薩摩弁が使えます。」というのと同じレベルだと思う。また、「英語・フランス語・ドイツ語使えます。」より、「日本語・アラビア語・英語が使えます。」という方が、よりハードルが高いと思う。

 一方、英語の世界を見ると、昔から英語(イギリス)と米語(アメリカ)に分かれると学校で教えられてきた。しかし実際は、英語でもクイーンズイングリッシュ、ロンドンの下町(ロンドンコックニー)、スコットランド訛りなど多種多様に分かれるし、米語でもニューヨーク(酷い早口)、シカゴ(明瞭な発音)、ダラス(南部のアクが強いイントネーション)、ロスアンゼルス(スペイン系の影響)といった地域による違いに加え、girl(ガール)をgal(ギャル)と発音する黒人英語や中南米移民のスパニッシュ訛りがある。

 そして、現在音楽や映画という芸能関係の影響の強さから、日本ではアメリカの黒人英語を理想とする人が多いようだが、日本人にとって最も聞き取りやすいのはクイーンズイングリッシュやシカゴの英語であり、(上流階級との交際まで考慮すれば)こちらの方がより適用範囲が広いと思う。そして将来、例えばインド芸能が現在の黒人音楽のように世界制覇(?)すれば、インド人英語がアメリカ黒人英語に代わって日本人の理想になるのかも知れない。
 


1.リーグワン(第10節)結果


横浜イーグルス26-29スピアーズ東京ベイ・浦安


 どちらも昨シーズンの勢いが落ちて、4位に入るための星のつぶし合い。スピアーズは、注目しているHOダン・コールズが、またもや欠場となったのが残念。年齢を考慮すると連戦は無理なのだろう。一方22番に明治キャプテンの廣瀬雄也が入り、16番江良颯に続き大学で活躍した選手のリーグワンへのデビューを期待したが、最後まで出番はなかったのはさらに残念だった。

 試合の前半は、37分にスピアーズにレッドカードが出たことに加え、イーグルスはSO田村優が絶妙のスキルを発揮して19-8とリードした。後半に入ると、スピアーズがSO岸岡智樹の好プレーを交えて、64分から連続3トライを挙げて、79分に劇的な逆転勝ちをした。イーグルスは76分のシンビンが痛かった。季節が良くなってきた頃の金曜ナイターだが、もっと盛り上がって欲しいものだ。

ブラックラムズ東京29-36静岡ブルーレヴズ


 中堅どころ同士の戦い。一部のラグビーマスコミにブルーレヴズ贔屓があると思ったら、既にある人が公式広報担当に就任していたのを知った。一方、私はブルーレヴズを贔屓する気持ちは全くない。両チームともに、ブラックラムズが中楠一期、ブルーレヴズが家村健太という日本人SOが先発。最近のリーグワンでは珍しいと思う。

 試合は、ブルーレヴズが終始スコアで先行して、僅差で逃げ切った。ブラックラムズはずっと良い試合を続けているが、あと少しのところで勝ち切れないのがもどかしい。

トヨタヴェルブリッツ38-39東京サンゴリアス


 ヴェルブリッツのオールブラックスHB団が、サンゴリアス相手にどこまでやれるか。ヴェルブリッツのボーデン・バレット対サンゴリアスのニコラス・サンチェスのSO対決が面白そうと期待したが、SOサンチェスは試合当日に欠場となり、高本幹也が先発した。また、SOのリザーブはおかず、FW6人+BK2人のリザーブでサンゴリアスは臨んだ。

 試合は最後まで白熱した。前半はヴェルブリッツがアーロン・スミスの2トライなどで24-10とリードし、後半50分までに31-10とリードを拡げた。しかし、50分のトライからサンゴリアスが巻き返し、55分に31-22、61分に31-29と迫り、ついに68分に32-31と逆転した。しかしこれでゲームは終わらない。79分にヴェルブリッツはPGのチャンスを得て、バレットが蹴ったところ、ボールがポストに当たり、それをフォローしていた23番山口修平がトライを挙げ、38-32と再逆転して勝負あったかに思われた。

 ところが、ドラマはまだ終わっていなかった。キックオフボールを確保したサンゴリアスは、猛攻をしかけ、82分にヴェルブリッツのシンビン(その後レッドに格上げ)から数的優位を勝ち取る。そして、85分にサンゴリアスは、ゴール前のスクラムから22番SH齊藤直人が中央にトライを決め、再々逆転となるコンバージョンをSO高本が成功させて、劇的な紛れとなった。

 ヴェルブリッツは、アーロン・スミスのマジックともいえるスーパープレー連発で九分九厘勝利を得たものの、最後の最後に痛恨のミスにより惜敗してしまったが、サンゴリアス相手に戦ったこのゲームは、チームの実力が向上していることを証明した内容であった。またこれは、なによりもスティーヴ・ハンセンの指導がかなり浸透してきた成果だと思う。個々の選手では、FB高橋汰地が活躍していた。一方、九死に一生の勝利を得たサンゴリアスは、トップ4入りに向けて貴重な勝利となり、勝ったことが最大の成果だった。

神戸スティーラーズ18-28埼玉ワイルドナイツ


 好調スティーラーズが王者ワイルドナイツに挑戦した。トップリーグ時代の「神戸製鋼対三洋電機」の再現という感じで、オールドファンは盛り上がる対戦だ。そのためか、スタンドには神戸製鋼OBが沢山観戦していた。メンバーは、ワイルドナイツは今シーズン絶好調のSH小山大輝がリザーブに入り、怪我から復帰の山沢拓也が23番に入った。弟の京平がFBで先発したため、後半は兄弟の揃い踏みが見られ、共に活躍していた。

 前後半ともにワイルドナイツがリードし、危なげなく完勝した。23番山沢拓也は66分に復帰を飾るトライを挙げている。個々の選手では、スティーラーズが良くタックルしていることと、11番WTB松永寛太のディフェンスが素晴らしかった。また、52分のSOブリン・ゲイトランド→13番CTB李承信→SH日和佐篤のトライは、見事なムーブだった。スティーラーズは、この52分のトライのように良いプレーが多くあったが、ワイルドナイツの横綱相撲のような柔軟かつ強靭なプレーに、いつの間にか負けているという感じだった。

花園ライナーズ19-20三重ホンダヒート


 入れ替え戦回避争いとなる対戦。そして、その通りの低レベルの拙戦で、見どころが少ないゲームだった。ウィル・ゲニアとクエード・クーパーという世界レベルのHB団がいるライナーズが、良いアタックで優勢に試合を進めるが、いかんせんミスが多くて得点できない。一方のヒートは、少ないアタックチャンスを生かすとともに、ライナーズのミスにも助けられて、先に先にと得点をしていったのが勝利につながった。

ブレイブルーパス東京42-19相模原三菱ダイナボアーズ


 ダイナボアーズはスティーラーズに通用しなかったので、ブレイブルーパスにはもっと厳しいだろうと予想していたとおりの結果となった。今のブレイブルーパスは、昨シーズンまでのチームからは豹変している。もちろん、新加入のSOリッチー・モウンガの存在が大きいが、LOワーナー・ディアンズの、この試合で見せたフィジカルの強さを含めた驚異的な進化もチーム躍進の一因になっている。また、11番WTB森勇登は、もっと出場機会を与えて欲しいと願うくらいに、アタック及びディフェンスともに仕事量が多くかつレベルが高いプレーをしている。このまま順調に成長できれば(試合出場機会を得られれば)、日本代表入りして不思議でないくらいの才能ある選手だと思う。

 ところで、途中で眠くなってしまうくらい、TMOが多くかつ長かったのが、プレー以上に印象に残った。これは、リーグワンのためにも再考する対象ではないか。

2.スーパーラグビー第四週結果

クルセイダーズ10-14ハリケーンズ


 絶不調のクルセイダーズに絶好調のハリケーンズという、ここ数年のNZの勢力図からは正反対の構図となった。しかし、ハリケーンズには強い苦手意識があるので、さすがにクルセイダーズの4連敗はないと思っていた。

 クルセイダーズは、SOに、元ハリケーンズでプレーし、またシーズン当初はチーフスに所属していたリレイ・ホヘパを先発させた。また、キャプテンのスコット・バレットが指の怪我で6週間の欠場となったのが痛い。ハリケーンズは、リザーブにFLデュプレッシー・キリフィが戻った。

 雨中戦となったゲームは、ハリケーンズが前半を0-7とリードするが、後半55分にクルセイダーズが7-7の同点にし、さらに71分には10-7とリードして勝利するかに思われた。しかし、その後シンビンを出したのが痛かった。78分にハリケーンズが、19番LOジャスティン・サングスターのトライとSOブレット・キャメロンのコンバージョンで10-14と逆転して、そのまま逃げ切った。これでクルセイダーズは、スーパーラグビー史上初の開幕4連敗となり、一方のハリケーンズは開幕4連勝で単独首位を維持した。FW3列が良く働いたハリケーンズが、クライストチャーチで勝利したのは14年ぶりとなった。

レベルズ26-53レッズ


 チーフスに勝って意気上がるレッズとしては、格下レベルズに圧勝したい試合で、実際その通りになった。レッズはFWでレベルズを終始圧倒して大勝した。大敗したレベルズは、イージーミスからトライされるなど全般に精彩がなかった。また、SOカーター・ゴードンが、ワラビーズ入りに疑問が生じるほどの酷いミスをしていたのが気になった。

フォース14-22モアナパシフィカ


 モアナは勝利するチャンスであり、昨シーズンとは違うことを見事に証明して見せた。昨シーズンのモアナは連敗が続きお荷物扱いされたが、今シーズンは違うことを見せつけた。負けたフォースは、開幕4連敗となりクルセイダーズとともに最下位を争っている。

ハイランダーズ21-27ブランビーズ


 ハイランダーズSOリーズ・パッチェルはスーパーラグビーの水が合っていたが、今回は休養となり、キャメロン・ミラーを先発させるが、ブランビーズSOノア・ロレシオにどこまで対抗できるかが注目されたが、最後はFWの差が得点差になってしまった。

チーフス46-29フィジードルア
 

 先週のレッズ戦を取りこぼしたチーフスは、取りこぼせない試合だった。チーフスは、リザーブにLOジョシュ・ロードとCTBクイン・ツパエアのオールブラックスが戻ってきたのが、心強かった。そしてチーフスは、後半67分に41-17まで得点を引き離して、完勝してみせた。ドルアは、クルセイダーズを破った勢いを発揮できなかった。

ワラターズ10-12ブルーズ


 それぞれオーストラリアとNZを代表する都市のチームによる伝統の対戦だが、どうにかNZが勝利した。ブルーズは、CTBのハリー・プランマーをリザーブに下げ、ブライス・ヒームを先発させた一方、SOスティーヴン・ペロフェタのゴールキックが不調だったこともあり、終始接戦となったものの、なんとか敵地で辛勝した。

3.シックスネーションズ第五週(最終週)結果


 今回のシックスネーションズは、史上初と思われるほどの接戦が多く見られ、全6チームの実力差が限りなく小さいことを実感させた。連覇となったアイルランドは、イングランドには負けるなど、世界ランクNO.1を誇れる内容とはとても言えなかった。2位に入ったフランスも、最後にイングランドとスコットランドに辛勝したものの、イタリアにはレフェリーに助けられた引き分けとなった他、アイルランドには完敗しており、2位に相応しい内容ではなかった。同様に3位に入ったイングランドも、4位のスコットランド同様に浮き沈みの激しい試合内容をしており、実力は明らかに低下している。

 今回スコットランドとウェールズに勝利して5位に入ったイタリアは、フランス戦で最後のPGのやり直しを認められていれば勝利していた他、イングランドとも接戦を演じており、実力が大幅に上昇している。これからしばらくは、世界で台風の目的存在になりそうだ。一方、全敗で最下位となったウェールズだが、アイルランド戦とフランス戦以外は、いずれも惜敗だったので、3勝して2~3位に入った可能性があった。そのため全敗の結果をあまり深刻に受け止める必要はないだろう。少しの修正ができれば、上位5チームに勝利することは難しくないと思う。

 今回のシックスネーションズでは、北半球チーム同士の実力が接近していることが確認されたが、南半球チームとの比較は7月の南北対決まで待たねばならない。一方、スーパーラグビーの結果を見ると、オーストラリアのチームがNZのチームに勝利するゲームが出ているので、エディー・ジョーンズによって落ちるとところまで落ちたオーストラリアは、ようやく不調を脱したかに見える。しかし、多くの主力選手が海外でプレーしているため、NZ勢のチーム力が一時的に落ちていると思われるので、主力選手が戻ってくるテストマッチまではわからない。

ウェールズ21-24イタリア(HT0-11)


 全敗を逃れたいウェールズと勢いのあるイタリアの、優勝争いより面白く楽しみな対戦となった。またウェールズは、CTBジョージ・ノースの引退試合となり、ダン・ビガー、リー・ハーフペニー、ルイス・リーザミットに続く貴重なBKプレヤーを引退で失うことになった。一方のイタリアは、先週のスコットランド戦勝利に貢献したFBアンジュ・カプオッツオを指の怪我で欠くことになり、代わりにロレンツォ・パニがFBで先発する。また、ルイス・ライナーは引き続き14番WTBで先発した。

 不振のウェールズを象徴するように、ホームゲームにも関わらず観客の少ないスタジアムで、前半は勢いのあるイタリアが0-11とリードする。後半にイタリアが7-24までリードを拡げた後、79分と82分にウェールズが連続トライで追い上げたが時間切れとなってしまった。この敗戦で21年ぶりの5敗を記録したウェールズは、監督のワレン・ゲイトランドが辞任を申し出ることになったが、ウェールズ協会会長は却下している。一方のイタリアは、7番FLミケーレ・ラマノ、SOパオロ・ガルビシ、13番CTBフアンイグナシオ・ブレクスが出色の活躍を見せて、勝利に貢献した。引退試合となったウェールズ13番CTBジョージ・ノースは、随所に良いプレーを見せたものの、勝利で花道を飾れなかった。

アイルランド17-13スコットランド(HT7-6)


 アイルランドは優勝するために、マストウィンのゲームとなり、そしてなんとか勝った。スコットランドは、少しは意地を見せられた結果となった。先週イタリアに惜敗したスコットランドは、CTBをスタッフォード・マクドウウェルとヒュウ・ジョーンズのコンビに戻したが、FWの先発には変更はない。一方のアイルランドは、先発に変更はないが、先週FW6人+BK2人にしたリザーブでイングランドに惜敗したこともあり、今回は通常のFW5人+BK3人に戻し、23番にギャリー・リングローズを入れた。

 試合は拮抗して進み、後半65分、スコットランドにシンビンが出てアイルランドが17-6までリードを拡げた。しかし、その後76分に今度はアイルランドがシンビンを出し、スコットランドにトライを返されて17-13と4点差に迫られる。スコットランドは逆転目指して奮闘したが、アイルランドがなんとか逃げ切って優勝を決めた。アイルランドはシックスネーションズ連覇となった。

フランス33-31イングランド(HT16-10)


 絶不調のウェールズに勝利したフランスはここも容易に勝てると思っているだろうが、アイルランドに勝利したイングランドはフランスよりも波に乗っているので、やっぱりフランスは弱かったとなるのではと思っていた。

 そして期待のイングランドは、インマヌエル・フェイワボソが欠場となり、代わりにエリオット・デイリーが11番WTBに入った。リザーブBKには2023年RWC以来となるマヌー・ツイランギが入っている。先週のアイルランド戦で勝利を決めるDGを蹴ったマーカス・スミスはリザーブとなり、ジョージ・フォードがSOで先発した。一方のフランスは、先週ウェールズに大勝したメンバーを維持した他、NO.8グレゴリー・アルドリット、4番LOシボウド・フラマンの主力が戻った。

 両チームともに激しい点の取り合いとなったゲームは、二転三転した後、75分にイングランドがトライを挙げて30-31とし、勝利に向けて前進したかに見えた。ところが、80分に痛恨のペナルティーを犯してしまい、フランスのPGでサヨナラ負けとなった。勝ったフランスは、シックスネーションズ最後の試合に勝利して、どうにか面目を保つ結果となった。

4.その他のニュースなど


(1)マンスターがオールブラックスXVと対戦へ


 アイルランドの強豪クラブであるマンスターは、11月2日にオールブラックスXVと対戦することを発表した。これは、2008年にオールブラックス、オーストラリア、NZNO.2チームであるマオリオールブラックスと対戦して以来の国際試合となる。

 なお11月2日は、オールブラックスがトウィッケナムでイングランドと対戦する日と重なる一方、翌週オールブラックスはアイルランドと対戦する。オールブラックスは、さらにフランス及びイタリアと対戦する予定となっており、今秋のヨーロッパ遠征は北半球強豪チームとの連戦となるので、楽しみだ。

 ところで、オールブラックスXVとは、オールブラックスに次ぐNO.2の代表チームとしての役割をマオリオールブラックスが長年担ってきた一方、2022年に、従来A代表、ジュニアオールブラックス等の臨時に結成されていたチームに代わって、マオリオールブラックス同様に恒常的に結成する目的で新たに作られたチームの名称だ。NZ協会は、マオリオールブラックスとオールブラックスXVとの相違を明確に述べていないが、公式見解としては、オールブラックスに次ぐ代表チームはオールブラックスXVであり、マオリオールブラックスはNZの先住民であるマオリを代表するチームとしている。

 オールブラックスXVとマオリオールブラックスの実力は別として、格の違いを比較すれば、オールブラックスXVはテストマッチを行える国代表ではないが、マオリオールブラックスはマオリという「国=民族=ネイション」を代表するチームであるため、マオリの方が格上となる。また、これまでマオリは、ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズや多くの他国代表との「テストマッチ」を戦い勝利しているので、歴史的に見ればマオリがNZのNO.2チームであり、オールブラックスXVはNO.3と見るのが正しい。

(2)トニー・ブラウンの南アフリカ代表アシスタントコーチ就任に際する抱負など


 トニー・ブラウンは、ジェイミー・ジョセフの日本代表監督離任に伴い、次の仕事先を探していたが、2008年当時ラッシー・エラスムスがストーマーズを監督していたとき、ブラウンもストーマーズでプレーした縁で、この度南アフリカのアタック担当のアシスタントコーチに就任した。

 ブラウンとしては、2019年RWC直後、オールブラックスのアシスタントコーチ就任要請があったものの、当時はジョセフとともに日本代表コーチを優先したため、オールブラックスとの縁が切れてしまった。しかし、将来的にはオールブラックスのコーチに就任することを諦めているのではなく、今回の南アフリカとのつながりを自らのコーチングスキルの経験を増すための機会と捉えているという。また、過去の南アフリカ代表では、1999年RWC当時のSOだったヘンリー・ハンニバルを最も良い選手として挙げており、ハンニバルのようなラグビーをしたいと述べている。

 ハンニバルは、1998年に南アフリカが初めてトライネーションで全勝を記録したときのSOで、従来のキック一辺倒だった南アフリカのSOとは異なる力強いランニングゲームを導入した選手だったが、当時のキャプテンだったNO.8ギャリー・タイヒマンの突然のキャプテン解任及び自身の足首の怪我のため、1999年RWCの3位決定戦でオールブラックスに勝利したのを最後に引退した。この最後の試合でトニー・ブラウンはSOのリザーブに入っていたが、他にもハンニバルと何度も対戦している。

(3)ジョージ・ノースが、テストマッチからの引退を表明


 ウェールズ代表CTB/WTBのジョージ・ノース、31歳は、今週のイタリア戦が自身最後のテストマッチとなることを表明した。ノースは、18歳だった2010年の南アフリカ戦でウェールズ代表としてデビューした後、アルンウィン・ジョーンズの158キャップ、ゲティン・ジェンキンズの129キャップに次ぐ120キャップを重ね(イタリア戦を加えれば121キャップ)た一方、シェーン・ウィリアムズの58トライ(ライオンズのゲームを加えれば60)に次ぐ47トライを記録した名選手だ。

 ノースは、代表デビューした南アフリカ戦では2トライを記録したが、これは1891年に18歳と238日のトム・ピアーソンがイングランド戦で記録してから、117年ぶりとなる記録となった。また、ウェールズ代表としては、トム・プライディーとノーマン・ビッグスに次ぐ三番目に若い選手としてプレーした。

 ウェールズ代表としては、2021年と2019年のシックスネーションズのグランドスラム、2013年と2021年のシックスネーションズ優勝に貢献した。また、ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズに2回選ばれた他、2011年、2015年、2019年そして2023年と4回RWCに出場している。

(4)スコットランドは、7月に南北アメリカ遠征


 スコットランドは、7月に南北アメリカへ遠征し、ティア2国相手に4試合のテストマッチを行う異例の予定を発表した。これは、WRによるティア2国の実力アップへ向けたテコ入れの一環と見られる。カナダとアメリカには6年ぶりの対戦となり、前回対戦でカナダに109-48と大勝したが,アメリカには29-30と惜敗している。チリとは初のテストマッチとなり、2年前にスコットランドAがチリに45-5で勝っている。ウルグアイとは、1999年RWCでスコットランドが43-12で勝利して以来の対戦となる。ちなみにこの対戦で、現監督のグレガー・タウンゼントがトライを記録している。

 スコットランドとしては、長期にわたる遠征でスコッド内の結束を強化することに加え、ティア2国相手のため、多くの若手や経験値の少ない選手の育成を目指すことにつなげたいとしている。

7月 6日 対カナダ
7月12日 対アメリカ
7月20日 対チリ
7月27日 対ウルグアイ

(5)ジョー・シュミットは、エディー・ジョーンズが解雇した元ワラビーズコーチのローリー・フィッシャーを採用


 ローリー・フィッシャーは、ブランビーズ、マンスター、グロスター、オーストラリアU21代表で20年以上コーチを務めた経験に加えて、ブランビーズが強豪となるための基礎を作り上げた名コーチである。元監督デイヴ・レニーの下でアシスタントコーチとして貢献していたが、エディー・ジョーンズ前監督の就任に伴い解雇されていた。また、オーストラリアがRWC予選敗退となった原因の一つに、フィッシャー不在が指摘されていた。

(6)南アフリカの年間各賞が発表


 エベン・エツベスがLOとして初、また史上二人目となる連続して二回目の最優秀選手賞を受賞した。主な各賞は以下のとおり。

最優秀選手:エベン・エツベス
最優秀チーム:スプリングボクス
最優秀コーチ:ジャック・ニーナバー
カリーカップ最優秀選手:ルーアン・ピナール(チーターズ)
ファン選出の最高の瞬間:チェスリン・コルベ(おそらく、RWCのコンバージョンキックチャージ)
最優秀レフェリー:ヤコ・パイパー


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