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<ラグビー>2022~23シーズン、インターナショナルラグビー関連等(5月12日現在)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 いつもどおりに週末のラグビーの試合結果と併せて、ラグビー関係のニュースを入れるつもりだったが、ウェイン・スミスの、NZでちょっとした論争になっている現在のラグビーに対する批判があるため、本日現在でアップすることにした。

 ところで、(一応枕話として)今雑誌「現代思想」の精神病特集号(1982年と1986年のもの)を読んでいるが、ちょうどこの時代に精神病に対する見方が大きく転換しつつあったことがわかる。今は、かつての精神分裂病は統合失調症と称されているように、19世紀から隔離・疎外されてきた「狂気」(M.フーコー『狂気の歴史』)が、近代以前のように再び身近な概念になっている経緯が理解できる。そして、1960~70年代の若者に大流行した、R.D.レインという無責任な先導者に対する、的確な批判が共有された時期でもあった。そういう点では、1980年代後半は(文化的かつ社会的バブルというソドム現象が民衆に発生したが、その一方で)そんなに悪くない時代だったと思う。

1.ウェイン・スミスのスーパーラグビーパシフィックの感想とRWC展望


 元オールブラックス監督及びアシスタントコーチとして2011年2015年のRWC連覇に貢献した、ウェイン・スミスがメディアのインタビューに答えて、スーパーラグビーパシフィックの感想及びRWCの現時点での展望を述べている。その要旨を紹介したい。

(a)スーパーラグビーパシフィックの感想


 PKからのタッチキック、モール、反則、タッチキック、モール、反則の繰り返しが多く、またアドヴァンテージを長く見ていても、結局反則地点に戻り、タッチキックとモールの繰り返しをしている。
 
 これでは、せっかくセットプレーに関して時間制限を設けたのが、あまり効果を上げているように見えない。この前のハイランダーズ対ウェスタンフォース戦は、思わず前半だけで見るのを止めて、TVチャンネルを野生動物のドキュメンタリーに変えてしまったくらいだ。(参考:2007年RWCや2009年スーパーラグビーがそうだった。そして両年とも、こうしたプレーを最も得意とする南アフリカ及び南アフリカのチームであるブルズが優勝している。)

(b)RWCに向けての現時点での展望


 オールブラックスは、監督のイアン・フォスターは、新型コロナウイルス発生という非常に苦しい時期をよく乗り越えた。そして退任が決まっているので、RWC後の評価を心配する必要がなくなり、かえって思い切りやれるのが良い方向につながる。また、スーパーラグビーパシフィックから選手選考することになるが、試合内容は十分にタフとは言えないものの、勝負は厳しいものがあるので、良いセレクションになるだろう。そして、オールブラックスはいつもどおりのレベルになる。

 シックスネーションズからは、アイルランドとフランスが強いと見られているが、監督が変わったイングランドやワレン・ゲイトランドが復帰したウェールズも侮りがたい。また、連覇を目指す南アフリカもいる。しかし、エディー・ジョーンズが監督に就任して、デイヴ・レニー時代に起用されなかった(できなかった)選手を含む新たなスコッドになるオーストラリアは、ダークホースになる可能性を最も持っている。

(c)私的コメント


 現時点のRWCについての下馬評では、アイルランドとフランスが優勝候補だが、私はこの2チームは優勝できないと思う。アイルランドはチームのピークが早すぎたことと、ジョナサン・セクストンという「ガラスの(怪我しやすく高齢の)」プレーメーカーを抱えていることが最大の弱点になる。

フランスも同様に、既にチームとしてのピークは過ぎている。そして、監督のファビアン・ガルティエは、エディー・ジョーンズに負けないくらいのパワハラ体質なので、チームが下降線になったときは、一気に弱体化してしまうメンタルの弱さを抱えている。

 イングランドとウェールズは、前評判よりは良い結果を残せると思うが、優勝できるようなXファクターとなる選手はいない上、チーム力を優勝できるほど持っていない。

 オーストラリアは、エディー・ジョーンズ効果が、監督就任直後が最も効果的になる(ただし、時間が経過するとパワハラに耐えられずにチームが崩壊する)ため、スミスの言う通りに、RWCでは優勝争いに絡んでくると思う。良いSOがいないという最大の弱点については、若手が伸びてきているので、ある程度は期待できる。ただし、優勝するにはRWCでの経験値がものをいうので、若いSOには荷が重すぎる。目標は2027年の自国開催か。

 オールブラックスについては、今回の最大のアドヴァンテージは「優勝候補」というプレッシャーがないことだ。これは優勝した1987年と準優勝した1995年がそうだった。特に1995年は、前年までオールブラックスの不調が続いたため、ほぼ優勝はないと見られていた。ところが、ジョナ・ロムーというXファクターとなる選手が大活躍して、決勝戦では、宿泊ホテルの毒物問題がなければ勝てたほどの強烈なチームに変貌していた。今年は、この1995年に似た雰囲気を感じている。Xファクター候補は、SHキャメロン・ロイガード、FB/WTBウィル・ジョーダン、ショーン・スティーヴンソン、そして万能BKダミアン・マッケンジーだと思う。

2.日本協会とNZ協会が、2027年までの提携を結ぶ


 これによって、日本代表・ジャパンXVと、毎年オールブラックス・マオリオールブラックス・オールブラックスXVとの試合(対戦チームは不明だが、通常ならオールブラックス対日本代表、マオリオールブラックス対日本代表またはジャパンXV、オールブラックスXV対日本代表またはジャパンXVが想定される。)が予定される。

 さらに、女子日本代表クラスの選手が、NZの女子スーパーラグビーに相当するアウピキ及び州選手権のファラーパーマーズカップに個人参加すること、ならびに男女のセヴンズ代表がワールドシリーズ大会開催時を除いた時期に定期的な強化試合を組む内容となっている。両国協会代表は、契約は2027年までとなっているが、さらに更新・延長することも視野に入れている。

(参考)
 この契約は、WRが日本をティア1国に認定することに加え、近年現役オールブラックスを含む多数のNZ人選手がリーグワン各チームでプレーしていることが、合意した背景にあると見られる。また、日本代表が将来的に、オールブラックス、オーストラリア・ワラビーズ、南アフリカ・スプリングボクス、アルゼンチンが参加するザ・ラグビーチャンピオンシップに参加することを想定したものと思われる。


3.RWCのレフェリーが指名される。


 WRは、来る2023年RWCのレフェリー26人を指名した。残念ながら、日本人レフェリーは指名されなかった。全般にわたってイングランド人レフェリーが6人と多く、フランス人レフェリーは2人と少ない。NZからは4人、オーストラリアからは4人、南アフリカは2人、アイルランドが3人、ウェールズが2人、イタリアとジョージアが各1人となっている。

Rugby World Cup match officials ラグビーワールドカップのレフェリー


Refereesレフェリー12人:
 Nika Amashukeliニカ・アマシュケリ (Georgiaジョージア), Wayne Barnes ウェイン・バーンズ(Englandイングランド), Nic Berryニック・ベリー (Australiaオーストラリア), Andrew Brace アンドリュウ・ブレイス(Irelandアイルランド), Matthew Carleyマシュウ・カーレイ (Englandイングランド), Karl Dicksonカール・ディクソン (Englandイングランド), Angus Gardner アンガス・ガードナー(Australiaオーストラリア), Ben O’Keeffeベン・オキーフ (New Zealandニュージーランド), Luke Pearce ルーク・ピアース(Englandイングランド), Jaco Peyperヤコ・パイパー (South Africa南アフリカ), Mathieu Raynal マチュウ・レイナル(Franceフランス), Paul Williamsポール・ウィリアムス (New Zealandニュージーランド).

Assistant refereesアシスタントレフェリー7人: 
Chris Busbyクリス・バスビイ (Irelandアイルランド), Pierre Broussetピエール・ブルゼ (Franceフランス), James Doleman ジェイムズ・ドールマン(New Zealandニュージーランド), Craig Evansクレイグ・エヴァンス (Walesウェールズ), Andrea Piardi アンドレ・ピアルディ(Italyイタリア), Christophe Ridleyクリストフォー・ライドレイ (Englandイングランド), Jordan Way ジョーダン・ウェイ(Australiaオーストラリア).

Television match officialsテレビジョンマッチオフィッシャル7人: 
Brett Cronanブレット・クローナン (Australiaオーストラリア), Tom Foley トム・フォーレイ(Englandイングランド), Marius Jonker マリウス・ユンカー(South Africa南アフリカ), Brian MacNeice ブライアン・マクニース(Irelandアイルランド), Joy Neville ジョイ・ネヴィル(Irelandアイルランド), Brendon Pickerill ブレンドン・ピッケリル(New Zealandニュージーランド), Ben Whitehouseベン・ホワイトハウス (Walesウェールズ).

4.プラネットラグビーによる、現時点でのオールブラックスの15人


 プラネットラグビーが、現時点でのオールブラックスの15人を選出している。こうした想定は、監督になったような気分を味わえるため、ラグビー好きにはとても楽しい。

15 Shaun Stevensonショーン・スティーヴンソン
14 Emoni Narawaエモニ・ナラワ
 
13 Rieko Ioaneリエコ・イオアネ
12 Jordie Barrettジョルディ・バレット

11 Caleb Clarkeケイレブ・クラーク
10 Damian McKenzieダミアン・マッケンジー

9 Cam Roigardカム(キャメロン)・ロイガード
8 Ardie Saveaアーディ・サヴェア

7 Sam Caneサム(サムエル)・ケーン
6 Pita Gus Sowakulaピタガス・ソワクラ

5 Sam Whitelockサム(サムエル)・ホワイトロック
4 Brodie Retallickブロディー・レタリック

3 Tamaiti Williamsタイマイティ・ウィリアムス
2 Samisoni Taukei’ahoサミソニ・タウケイアホ

1 Ethan de Grootイーサン・デグルート

 妥当なメンバーだと思うが、SHロイガードが思い切った選抜であるのと、(フォスター監督があまり評価していない上に)フランス行きを決めているソワクラを入れたのは想定外となっている。またSOには、リッチー・モウンガとボーデン・バレットの二人を外し、日本から戻ってきて絶好調のマッケンジーを起用している。FBスティーヴンソンは、誰もが考える選出だが、FB/WTBのウィル・ジョーダンが復帰してきたので、ナラワには厳しい戦いが待っている。

 キャプテンについては、ケーンが引き続き担当するが、場合によってはサヴェアやホワイトロックが担当することもありそうだ。また、Xファクターになりそうな期待の逸材は、スティーヴンソン、ジョルディ、マッケンジー、ロイガード、ウィリアムスらか?

(参考)プラネットラグビーによる、現時点でのオーストラリアワラビーズの15人

15 Tom Wrightトム・ライト
14 Jordan Petaiaジョーダン・ペタイア
13 Josh Flookジョシュ・フルック
12 Lalakai Foketiララカイ・フォケティ
11 Mark Nawaqanitawaseマーク・ナワカニタワゼ
10 Carter Gordonカーター・ゴードン
9 Nic Whiteニック・ホワイト
8 Harry Wilsonハリー・ウィルソン
7 Fraser McReightフレイザー・マクライト
6 Rob Valetiniロブ・ヴァレティニ
5 Will Skeltonウィル・スケルトン
4 Nick Frostニック・フォレスト
3 Allan Alaalatoaアラン・アラアラトア
2 Lachlan Lonerganラクラン・ロナーガン
1 James Slipperジェイムズ・スリッパ―

 フランスでプレーするスケルトンが、唯一の国外でプレーしている選手からの選考となっている。また、キャプテンに任命される可能性としては、SHホワイトまたはPRスリッパ―のどちらかだろう。昨シーズンまでのキャプテンであるFLマイケル・フーパーはメンバー外となっている。

 ここ数年のワラビーズの課題であるSOは、初選出となるゴードンが入っているが、RWCでは経験値がものをいうので、おそらくエディ―・ジョーンズ監督は、ノア・ノレシオかジェイムズ・オコナーを選ぶのではないか。さすがに、日本でプレーするバーナード・フォリー、マット・トゥムーア、クエード・クーパーまでは声をかけないと思うが。

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