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スワーブが切れなくてー私の海外食い倒れー(その1)

 私が経験した世界の料理を、3回に分けてご紹介したい。最初は、インド、中華そしてタイ。

スワーブ:
ラグビーで、相手との距離がある時に、直進するようにみせかけて、左右どちらかに回り込むようにして、走って抜いていく技術。多くの場合、走るスピードに緩急をつけるチェンジ・オブ・ペースと併用される。

1.はじめに

 昨年定年退職した私は、40年間の勤務のうち25年間を海外勤務となり、そこで生活してきた。住んだ国は、NZ(ウェリントン)、バングラデシュ(ダッカ)、インド(チェンナイ)、アメリカ(マイアミ)、マレーシア(ペナン)、マレーシア(コタキナバル)、ヨルダン(アンマン)、ルーマニア(ブカレスト)に3~4年間ずついた。また、旅行した先は、NZ(クライストチャーチ、オークランド)、バングラデシュ(チッタゴン)、スリランカ(コロンボ)、パキスタン(イスラマバード、カラチ)、オーストラリア(シドニー、ブリスベン、パース)、アメリカ(アトランタ、ニューヨーク)、フィリピン(マニラ)、シンガポール、マレーシア(クアラルンプール)、インド(ニューデリー、ポンディシェリー、コチ、ハイデラバード)、ヨルダン(アカバ)、エジプト(カイロ)、イギリス(ロンドン)、イタリア(ローマ、フィレンツェ、アッシジ)、フランス(ニース、マントン)、スペイン(マラガ)、ルーマニア(コンスタンツァ)となっている。

 これらの訪問先では、なるべく土地の料理を食べるようにした。もちろん、酒があれば地ビールや地ワインを飲んだ。そうして、もちろん和食と異なる、その土地ならではの様々な料理を味わってきた。その体験の中から強く印象に残ったものやよく食べたものを思い出して、ここに記録したい。これから、世界各地を旅する人の一助になれば、幸いである。

2.インド料理

(1)ダル(またはダール)
 ひよこ豆のスープ上になったおかずである。これを白米やチャパティと食べる。味付けは塩ぐらいで、香辛料はあまり使っていない。基本的にベジタリアンの料理なので、辛い物が食べられない人やインド料理に慣れていない人でも、比較的気軽に食べられる。そして、インド文化圏ならどこでも食べられる上に、安価だ。

(2)チャパティ
 インド料理に出てくるご飯類としては、この次に紹介するナーンが有名だが、これは北インドだけで食べられる地域的な料理だ。一方、インドのどこにいっても食べられるものは、まず白米(インディカ米、ロングライスで粘り気がない)があり、次にチャパティがある。

 チャパティは、小麦を水で溶かして練り、それを鉄板で焼いただけのシンプルなものだから、誰でも簡単に作れる。これとカレーを合わせて食べるのだが、インドは右手を使って食べる習慣なので、白米だと食べづらいが、チャパティだと食べやすい。

(3)ナーン(またはナン)
 北インド料理のご飯ものであり、小麦を練ったものにヨーグルトなどを混ぜ、これを窯の内側に張り付けて焼き上げる。そのため、パンのように膨らみ、ところどころに焦げ目がつく。シンプルなナーンの他に、中に肉や野菜を入れたバリエーションも多数ある。

(3)ドセ
 南インドでご飯として作られる、クレープのようなもの。小麦に酢を入れて薄く延ばして鉄板で焼くため、そのままだと少し酸っぱく感じるが、カレーと合わせるとちょうど良い味加減になる。

(4)パッパッラ
 小麦を水で溶いたものを、油で薄く揚げたもの。煎餅またはポテトチップスのような食感があるが、香辛料を沢山使っているので辛い。そのため、ビールのつまみとしては最適になる。

(5)チーズマサラ
 チーズは英語そのままのチーズだが、マサラはインドではカレー料理全般を意味する。つまり、チーズカレーということだが、利用するチーズが白い水牛のモッツァレア系のものであるため、塩味や風味は少なく、さらに小さく四角に切ってあるので、日本人には豆腐がみそ汁に入っている感覚になる。チーズは、ベジタリアンでも食べることができるので、インド中どこにいってもチーズマサラは食べられるほか、まず味に外れはない料理となっている。

(6)チャイ
 チャイは、中国の「茶」からきたものであり、日本風に言えば紅茶だが、単純な紅茶ではない。第一にお湯に茶葉を入れるのではなく、沸騰したミルクに紅茶を入れて煮だす。さらに、砂糖や香辛料を入れてかき混ぜるため、独特の風味がする。そして、店で客に出す際には、鉄製のカップから別のカップへ、まるで滝を流すように何回も繰り返して冷ます。これはパフォーマンスとしても面白いと思う。

 水が不衛生なインドにおいて、チャイは日本人が飲んでも下痢をしないで済む水分である他、ミルクなどが入っているため、熱中症や脱水予防には最適な飲み物だ。

3.中華料理(中国及び台湾以外の国での経験から)

(1)揚州炒飯(ヤンチュウ・フライドライス)
 華僑の多くは中国南部の港湾都市から海外へ移住している。そのため、故郷の料理は海産物を多く使うものが多い。揚州はヤンチュウと発音するが、まさにこうした南部港湾都市のある地域の炒めご飯である。この炒飯には、野菜、豚肉(チャーシュー)、卵の他に、イカ・タコ・エビなどが入ることが多い。

 ただし、一般に揚州炒飯と言っても、そのバリエーションはいろいろあり、店毎にまた揚州の街ごとに、微妙に異なっている。私が良く食べたものは、レタスがたくさん入っているものがあり、このレタスの食感が、油を多く使ったこの料理に良いアクセントを加えていたと思う。

 また、野菜・肉・海鮮・卵が盛りだくさんに入ったこの炒飯は、日本人から見れば豪華なものに見えるので、高級中華ではメインコースには入らない日常のメニューではあるが、私は必ず注文していたし、またどの店も外れることはなかった。だから、メニューに迷ったら、これを注文すれば間違いないと思う。

(2)飲茶各種(特に鶏の足)
 飲茶は、横浜の中華街や東京の高級ホテルの中華では、一皿500~1000円するなど、かなり高額になるため、一般庶民の料理とは言えない。しかし、海外の中華街にあるレストランは、皆安価で庶民的なものとなっている上に、毎週土日のランチタイムは、飲茶を食べる時間として、大勢の中華系住民で賑わっている。

 そこで出される飲茶は、一皿50~100円程度なので、10皿、20皿と注文しても安く済ませられる。また、餃子、シュウマイ、肉まんなどがいろんなバリエーションで次々と出てくるので、見ていても楽しい上に、たいてい一皿に4個入っているので、家族で分けるのに好都合になっている。

 本当は、飲茶というくらいだから、中国茶を飲みながら食べるのだが、日本人である我々は、週末ということもあり、ビールを飲みながらつまみとして食べることが多く、これがまた最高に美味しく感じる。しかし、中国人は大好きだが、八角と言う強い香辛料で煮込んだ鳥の足が出てくるのには閉口した。まず見た目が良くない。さらに、その少ない軟骨と皮をしゃぶるという食べ方が理解できなかった。

 そのため、飲茶には良い思い出が沢山あるのだが、鳥の足だけは今でも苦い記憶になっている。(その後何回か食べなれた後は、意外と美味いなと感じるようになった。)

4.タイ料理

 タイ料理は、一般に香辛料を沢山使っているので、日本人にはかなり辛い料理になっている。しかし、インドのカレー料理にも影響を受けつつ、地元の豊富な食材を使った料理は、日本人にとってエスニック料理の代表的なものとして人気がある。また、メニューも非常にたくさんあるが、そのうち、私が好んで注文するものに絞って紹介したい。

(1)トムヤムクン
 タイを代表するだけでなく、世界三(四)大スープにも選ばれている。ちなみに、三(四)大スープとは、フカヒレ、ブイヤベース、ボルシチとトムヤムクンである。

 ちなみに、タイ語ではトムヤムが野菜スープでクンがエビを意味する。一般にトムヤククンは、こうしたエビ入りの野菜スープに、レモングラスを中心にした香辛料とナンプラーと称する魚醤を入れて作る。しかし、その材料や調理法は、王侯貴族から庶民レベルで微妙に異なる他、地域によって、また店ごとによって、けっこう味が分かれている。

 一般に高級な店では、日本では特にそうだが、非常にこぎれいな澄んだ味わいがする。そのため、とても上品なものに仕上がるものの、食材の持つ味わいが薄れてしまう感じがする。もちろん、レモングラスやナンプラーの風味も少ない。

 ところが、タイの田舎やバンコクでもローカルな店で頼むと、かなり野蛮で荒々しい味わいになる。それは、エビ自体の臭みが残っている上に、レモングラスやナンプラーの風味が強烈に漂うものとなっているので、初めて食べる人にはちょっと厳しいかもしれない。しかし、食べなれた人にとっては、これくらい荒々しい味の方が、トムヤムクンを食べたという実感がする。

 私が食べた中では、タイの東北地方の比較的高級なレストランで食べたものが一番記憶に残っている。バンコクで食べるものより濃厚な味わいで、これが本来のトムヤククンの味かと、酷く感動した。

(2)トーマンプラー
 タイ語でプラーは魚で、トーマンは練って揚げたものを意味する。つまり、日本でいうさつま揚げのような、魚のすり身にこぶミカンの葉を入れて油で揚げたものだ。これをタイ人は、甘辛いソースにつけて食べるが、日本人にはショウガ醤油で食べても美味しく、また食べやすい。
 
 また、どのようなレストランでも安価で食べられるので、これだけではご飯のおかずにはならないが、酒のつまみとしてなら十分対応できる一品料理だと思う。


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