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<ラグビー>2024年シーズン(1月第二週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)
 
 試金石という言葉は、一般的には重要なテストをすることの意味で使われているが、実際に「金を試すための石」としての「試金石」があることを最近知った。それは、実母が実家に「貴金属を売ってくれ」と訪問してくるセールスマンに辟易して、ある時私に処分してくれとわずかな貴金属を渡された後、この手のものはいろいろな「思い」が棲みついていて、そのまま持つのは良くないので処分することを考え、妻が知っている日比谷の専門店へ行ったときのことだった。
 
 店のお姉さんが、「私もこの仕事に就くまで知らなかったんですよ」と言って取り出した、その試金石というのは、例えば私が持ち込んだ指輪のリング部分をそこにこすりつけた後、石に液体(濃硝酸)を加えると、金であれば溶けずに跡がそのまま残るというものだった。また試金石自体は、ネットで調べたら碁石などに使われる那須黒石などの粘板岩だそうだ。
 
 その他には、金の含有量を図る特別な電動秤があって、その上におそらく金属性のプレートが載っていたが、磁石が近づくとそのプレートがくるくると回転していたので、SまたはNの磁極を持っているのだと思う。なお、金は磁石に反応しないため、これだけでも金か否かをとりあえず判断する材料になるそうだ。
 
 思えば、私も常に様々な「試金石」にかけられて、その都度「金じゃない!偽物!」とか「落第!不合格!」とか「価値がない安物!」とか、冷酷に品定めされてきた人生だったことを思い出した。「試金石なんかない世の中になれば良いのに」と一瞬思ったが、やはり嘘偽りはこの世から無くなるわけではないので、「試金石」も無くなることはないのだろう。
 
 ちなみに、金を文字通り換金したわずかばかりの現金は、その後祖母(つまり私の実母)宅に遊びにきた孫家族のために費やされたようだ。金と時間は若い人たちのためにある?
 


1. 全国大学ラグビー選手権決勝

帝京34-15明治


 雷雨で一時中断。その後豪雨から降雪。そんな悪条件下でプレーした両校の選手に篤く感謝したい。また、このような悪条件下でプレーした選手たちを美談にしてはいけない。これほど酷い天候の下では、ラグビーをプレーしてはいけないのだ。まず、選手たちの健康に影響するし、ラグビー本来の楽しさを味わうことができないからだ。

 だから、日本協会が英断できたのであれば、この試合は延期または中止(両校優勝)にすべきだった。明治が得意とするアタックを悪天候によって封じられたから、延期や中止を主張するのでは決してない(そもそもスクラムを押されたら、明治は勝てない)。上述したラグビー本来の楽しさを踏みにじる条件下では、ラグビーをしてはならないからだ。

 「ラグビーは、雨が降っても槍が降っても絶対にやるスポーツ」と強弁する人がいるが、これは理不尽かつ非論理的だ。ラグビーは、好条件下でプレーしてこそ、ラグビーの楽しさを味わえる。だから、ラグビー場は屋根付きで人工芝が必要なのだ。特に高校の全国大会や大学選手権のような日程がタイトな試合は、天候に左右されない屋根付きの人工芝のグランドで開催すべきだ。今回の試合が、そうした考え方が広まるための第一歩になって欲しい。

2.リーグワン第5節結果

相模原ダイナボアーズ21-81埼玉ワイルドナイツ


 横綱ワイルドナイツに対して幕下ダイナボアーズがどこまで攻められるかというゲーム。そして、試合はワイルドナイツのアタック練習のような、文字通りのミスマッチだった。ダイナボアーズも良いトライがあったが、こんなプレー振りでは、リーグワンのディヴィジョン1チームとして恥ずかしい限りだ。一層の奮起を願う。

 個々の選手では、MOMになったワイルドナイツのリアム・ミッチェルのオフロードパスが秀逸だった。また、FB山沢拓也は相変わらずスキルの権化のようなプレー振りだったが、後半リタイアした彼の怪我が心配だ。

静岡ブルーレヴズ25-29東京サンゴリアス


 サンゴリアスが強いと思うが、ブルーレヴズはサンゴリアスのような面白いラグビーをするチームに対して、まるでスプリングボクスのような堅いラグビーで対抗するので、接戦になるかも知れないと予想した。そして、クワッガ・スミス対サム・ケーンの対決に注目した。

 しかし、スミスとケーンは、プレーの良さで対決したのではなく、お互いシンビンになるという規律の悪さで対決してしまったのは残念だった。またブルーレヴズは、クワッガ・スミスのワンマンチームだが(TV解説者が、「スミスはリーグワンでプレーする最高の外国人選手だ」と言ったが、チームにとっての重要性では正解だが、現時点のリーグワンで最も活躍している外国人選手は、ブレイブルーパスのリッチー・モウンガだろう)、そのスミスが後半41分に怪我でリタイアしてしまう。それでも、63分には25-17と再逆転したが、最後はサンゴリアスの総合力に負けた結果となった。面白いラグビーが堅いラグビーに勝利したと言える。

 個々の選手では、サンゴリアスの下川甲嗣と箸本龍雅の二人は、仕事量の多さで目立っていた。もちろん、チェスリン・コルビも期待通りの活躍だった。海外のウェブサイトでも話題になっている。

横浜イーグルス24-8ブラックラムズ東京


 イーグルスは不調が続く一方、着実に実力をつけているブラックラムズが、良い試合をできるのではないかという予想だった。
 
 そして予想どおり、後半47分まで10-8とイーグルスのわずか2点差で試合が推移した。ブラックラムズは確実に力を付けている一方、イーグルスは昨シーズンより実力落ちていると思う。それでも、最後に連続トライを挙げて勝ち切る辺りは、イーグルスの地力の強さをアピールした結果となった。

花園ライナーズ14-47トヨタヴェルブリッツ


 ライナーズ(電車)とトヨタ(車)が衝突したら、電車の方が強いが、ラグビーの世界では車の方が圧倒的に強い。そして、ヴェルブリッツはオールブラックスのHB団のプレーだけで、客を呼べる。一方、ライナーズのHB団はワラビーズなので、トランスタスマンの対決に期待していたが、SOボーデン・バレットは欠場し、ティアーン・ファルコが出場した。

 しかし、ライナーズはヴェルブリッツにFW戦で敵わず、ゲニア&クーパーも力を十分に発揮できない。ところがヴェルブリッツも、前半早々にスミスがリタイアしてしまったため、さすがのバレットに代わって出場のティアーン・ファルコンも力が半減した。その結果前半は、ヴェルブリッツにシンビンが出たこともあり、14-28と健闘したが、後半は逆にライナーズにシンビンが出てしまい、最後の20分間の3連続トライで勝負を決められた。

神戸スティーラーズ34-38スピアーズ東京ベイ浦安


 昨シーズン優勝のスピアーズは明らかに力が落ちている。一方不安定ながらブリン・ゲイトランドという、これまでよりは良いSOを得てスティーラーズは地力がついてきた。さらに、FWにオールブラックスのアーディ・サヴェアとブロディー・レタリックの二人がいるだけで、14点差ぐらいはつけられると期待した。

 しかし、ゲームが始まってみると、スピアーズがこれまでの不調を挽回するアタックを見せ、前半を7-17とリードする。元オールブラックスのHOダン・コールズが2トライ(TMOで取り消されたのを含めれば、3トライのハットトリック)と攻守に活躍した。しかし、後半に入るとスティーラーズも修正してきて、47分に19-17と逆転する。

 その後は互いに点を取り合う展開となり、74分の時点で34-33とスティーラーズが1点のリード。そのまま逃げ切るかと思われたが、スピアーズは、MOMになった12番CTBリカス・プレトリアスのトライで逆転し、そのまま逃げ切った。

 スピアーズはこの逆転勝利によって、不調だった今シーズンを上昇傾向に変える契機にしたい。一方のスティーラーズは、やはりブリン・ゲイトランドでもSOとして不十分だった上に、BKにトライを取りきれるタレントがいないことが勝敗に影響している。もし良いSOがいれば、ナガニ・ラウマフィーをただ突進させるようなプレーで使わないはずだが、大昔の社会人リーグならいざ知らず、今のリーグワンではそんな単純なプレーは通用しない。

ブレイブルーパス東京40-12三重ヒート


 久々に好調のブレイブルーパスが難なく勝利して終わりそうなゲームで、ヒートは、どこまで抵抗できるかという予想だったが、予想外にヒートが健闘したと思う。もちろん、前半26-5、後半14-7だから、終始ブレイブルーパスがリードしていたのだが、かなりの時間で良く抵抗していた。だんだんと、キアラン・クラウリーのコーチングが、選手たちに理解されてきたのかも知れない。

 ブレイブルーパスは、MOMになったSOリッチー・モウンガの、絶妙のアタックスキルで楽々と勝利を呼び込んだが、もしモウンガがスティーラーズにいたら、スピアーズに快勝していたと思う。それくらい、SOというのはどのチームでも重要なポジションだと思う。

3.その他のニュースなど

(1)JPR・ウィリアムズが逝去


 略した部分を含めた名前は、ジョン・ピーター・リース・ウィリアムズ。試合中継では、ウェールズに「ウィリアムズ」や「ジョン」という名前が多くいるため、「ジョン・ピーター・ウィリアムズ」とアナウンスされることが多かった。74歳だった。プレヤー及びプレジデントとして所属しているウェールズのクラブ、ブリジェンド・ラヴァンズが、HPで公表した。

 ウェールズ代表55キャップ。ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズでは、1971年に勝ち越しをしたNZ遠征、1974年に3勝1分けの成績を残した南アフリカ遠征に参加した。また、1973年にはバーバリアンズのメンバーとしてオールブラックスに23-11で勝利した他、自陣からつないだガレス・エドワーズの有名なトライに関わっている。

 1970年代に活躍したウェールズ及び世界のラグビー界の伝説的な名選手である、SHガレス・エドワーズ、SOフィル・ベンネット、SOジェラルド・デイヴィスらに並ぶスターで、優れたアタックと勇敢なタックルをするFBだった。また、ハイパントキャッチとロングキックそしてゴールキックだけだったFBのプレーを革新した、歴史に残る名プレヤーでもあった。彼の長髪と長いもみあげは、ビートルズから始まる当時の流行だったが、そのスキル溢れるプレーによく似合っていた。また、古き良きアマチュア時代のラグビー選手の代表として、ラグビーをプレーする傍らで外科医の仕事をしており、試合後に切り傷を自分で縫ったエピソードを持っている。

 偉大な選手がまた一人亡くなったが、天国で既に他界した名選手たちと、楽しいラグビーをプレーし、そして試合後のビールを味わっていることだろう。合掌。

(2)スコット・ロバートソンが、海外でプレーする選手もオールブラックスの選考対象にしたい意向を示す


 オールブラックス監督のスコット・ロバートソンは、新チームとしてのトレーニング開始に伴うメディアとのインタビューで、リッチー・モウンガなどの海外でプレーするオールブラックスの選手に対して、現行の代表資格を認めないルールを「オープンマインドで(寛容な態度で)」対応すべきだと述べた。

 またロバートソンは、ラグビーの進化は非常に速く、NZの現在の選手契約はラグビー界を取り巻く状況の進化に追いついていないと述べており、明確には表明していないが、海外でプレーする選手を、オールブラックスとしてプレーさせる方向性を示唆したものと思われる。

 なお、もしモウンガのような海外で長くプレーするオールブラックスが増加した場合、NZ国内のチームでプレーする代表選手が激減する可能性が高く、その場合はスーパーラグビーなどでNZチームが苦戦することが容易に予想される。そのためNZ国内では、現行の厳しいルールを維持すべきという意見が根強い状況である。

 さらにロバートソンは、オールブラックスの選手は、スーパーラグビーに5試合以上連続してプレーできないという現行ルールを、スーパーラグビー17試合及びテストマッチ14試合の全てに選手がプレーすることはもちろん無理だが、選手やチームの個々の状況を勘案して、選手がベストの状態を維持するために最善の方法を取れるようにしたいとも述べている。

 一方、新キャプテンの指名については、サブバティカルを使用して日本でプレーしているサム・ケーンやアーディ・サヴェアが有力候補になっているが、他にもスコット・バレット、コーディ・テイラー、ダルトン・パパリイ、ルーク・ジェイコブソンらが候補に上がっているところ、ロバートソンとしては、7月にNZに遠征してくるイングランドとの二試合のテストマッチまでに決めたいと述べるにとどめている。

 なお、7月の南北対決となるテストマッチは、イングランドのNZ遠征の他、ウェールズがオーストラリア遠征、アイルランドが南アフリカ遠征を予定している。

(3)ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズのヘッドコーチに、アンディ・ファレルを任命。また、女子ライオンズを結成してNZ遠征へ


 2025年7月にオーストラリア遠征するブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズのヘッドコーチに、現在アイルランド代表監督をしているアンディ・ファレルが任命された。ファレルは、ウェールズ監督ワレン・ゲイトランドの後任として、ライオンズのオーストラリア遠征を任されることになった。

 ライオンズのオーストラリア遠征では、ワラビーズとの3試合のテストマッチの他、スーパーラグビー5チームとの試合及びNZ・オーストラリアの混成チームとの試合を予定している。

 なお、ファレルの息子オウウェンは、イングランド代表のみならずライオンズにも選ばれた経歴を持つが、現在話題になっているラシン92への移籍が実現した場合、イングランド代表の選考対象から外れるため、ライオンズへの選出も悩ましいものになる可能性を持っている。過去母国代表から外れていながらライオンズに選ばれた選手は、2013年のシェーン・ウィリアムスなどわずかな例外しかない。

 一方、ライオンズ初の女子チームを結成し、2027年にNZ遠征することを検討し、来週には正式発表できる見込みとなっている。NZでは、ブラックファーンズと3試合のテストマッチを行う予定だが、他の試合については現時点では未定となっている。

(4)日本代表他の今シーズンの試合日程が発表される


 日本協会は、今シーズのテストマッチ他の予定を発表した。
対戦相手と会場は以下のとおり。
6月22日 日本代表対イングランド 国立競技場
6月29日 JAPAN XV対マオリ・オールブラックス 未定
7月 6日 JAPAN XV対マオリ・オールブラックス 豊田スタジアム
7月13日 日本代表対ジョージア ユアテックスタジアム仙台
 7月21日 日本代表対イタリア 札幌ドーム
10月26日 日本代表対オールブラックス 日産スタジアム

 JAPAN XVは、A代表のような準代表というイメージもあるが、実質日本代表と同じメンバーになると見られる。これは、相手のマオリ・オールブラックスが国代表でないため、この名称となった。しかし、マオリ・オールブラックスは、実力的にはRWCでベスト8入りしてもおかしくない力を持っており、また元・前オールブラックスやオールブラックス候補が多数含まれるので、相当に強い相手であるため、実質テストマッチに相当すると見なして間違いない。

 一方、ティア1国チームは、毎年テストマッチを10~14試合行っているので、この6試合は正直少ない試合数だと思う。特に秋の試合が少なすぎるが、仮称ネーションズカップという、シックスネーションズとザラグビーチャンピオンシップのチームが参加するトーナメント戦が11月に開催されて、これに日本が参加できれば、さらに4試合できる計算になるので、そうなれば十分な試合数になる。試合数が十分あれば、それだけエディー・ジョーンズの手腕をじっくりと見せてもらう良い機会になるだろう(あるいは、選手が造反する機会が多くなるかも知れない)。

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