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<ラグビー>ザ・ラグビーチャンピオンシップ第一週の結果

 オールブラックスがこれほど弱いとは・・・。ラグビーの魅力が薄れていくことを心配している。イングランドのような「ジャイアンタイプ」が勝ち、これに比例して「三四郎タイプ」が負けるスポーツ、つまりアメリカ人が発明したバレーボールやバスケットボールのように体格差が勝負を決めるスポーツになってしまえば、ラグビーは益々マイナースポーツとして衰退していくような気がする。

1.スプリングボクス26-10オールブラックス

 解任問題に揺れているオールブラックスのイアン・フォスター監督は、コーチ2人を入れ替えることで問題解決を図っているが、もし連敗した場合は解任必死と見られている。その中で、23人のメンバーを大幅に入れ替えてきた。
 
 2番HOには、初先発となる突破力のあるサミソニ・タウケイアホを入れ、16番のリザーブには大ベテランのダン・コールズを入れた。この結果、先発常連のコーディ・テイラーがメンバー外になっている。大黒柱のLOブロディー・レタリックが怪我で外れたため、ベテランのサムエル・ホワイトロックとFL兼任のスコット・バレットで、課題のラインアウトに挑むが、スプリングボクスは伝統的にラインアウトを得意としているため、どこまで改善できるか注目される。

 キャプテン解任が予想されたサム・ケーンは、引き続き7番FLで先発する。リザーブ20番にはシャノン・フリッゼルが今シーズン初出場する。課題の6番FLはアキラ・イオアネが務める。また、スクラムの劣勢が指摘されたPRは、1番にジョージ・ボウワー、3番にレッドカードの出場停止が解けたアンガス・タアアヴォを入れ、17番には初キャップとなるイーサン・デグルート、18番にはタイレル・ローマックスを入れた。

 BKでは、9番アーロン・スミス、10番ボーデン・バレット、21番フィンレイ・クリスティー、22番リッチー・モウンガとHB団に変更はない。課題の12番CTBはデイヴィット・ハヴィリが入り、23番にはCTBのクイン・ツパエアを入れた。11番WTBは、久々のプレーとなるケイレブ・クラークを先発させ、セヴ・リースとレスター・ファインガアヌクはメンバー外となった。

 スプリングボクスのジャック・ニーナバー監督は、ウェールズ戦に勝ち越して自信を深めている上に、オールブラックスが弱体化しているこの時に連勝を目論んでいる。50キャップとなるマルコム・マルクスを2番HOで先発させ、先発の常連だったボンギ・ムボナンビは16番リザーブに下がった。

 BKでは、9番SHにファフ・デクラークが復帰し、ウェールズ戦で先発したジェイダン・ヘンドリクスは22番のリザーブに下がった。SOはアンドレ・ポラードが引き続き務める。WTBの切り札チェスリン・コルビが顎の怪我で欠場するため、14番WTBには2キャップ目となるカートリー・アレンゼを抜擢した。なお、リザーブは、FW6人+BK2人となっているため、23番ウィリー・ルルーがユーティリティーとして起用される。

 大方の予想では、アイルランドに連敗したオールブラックスは、指導陣の交代問題も絡んでいるため、チーム力が大幅に低下しており、とても優勝できるまでの力はないと見られている。一方のスプリングボクスは、ウェールズ戦に勝ち越し、引き続き世界ランキング1位を維持した。そのため、ワラビーズやアルゼンチンに負ける要素が少ないこともあり、このホームで迎え撃つオールブラックスに連勝すると予想されている。

 なお、フォスター監督の人事については、スプリングボクスに1勝すれば継続するのではないかという意見もあるが、一方、有力な後継者であるスコット・ロバートソンが海外行きを示唆していることから、NZラグビー協会は大きな選択を迫られている。

 試合は最初から最後までスプリグボクスのペースに終始した。オールブラックスは、モールのディフェンスが改善されたのみで、かつてのミスのないチームというカラーは、完全に過去のものになってしまい、まるでティア2チームのようなイージーなミスを連発し、スプリングボクスのハイボールとFWの圧力に、あっさりと屈してしまった。

 開始早々、スプリングボクスSHファフ・デクラークが、オールブラックス11番WTBケイレブ・クラークの膝にタックルした結果、顎に膝が当たり脳震盪になった。幸い大事には至らなかったようだが、少なくとも次戦は休養になるだろう。

 その後スプリングボクスは、SOアンドレ・ポラードのハイパントの競り合いからこぼれたボールをつなぎ、14番WTBカートリー・アレンゼが先制トライ、ポラードがコンバージョンを決めて、7-0と先制した。その後は膠着状態が続いたが、22分にポラードが、36分にオールブラックスSOボーデン・バレットが、PGをそれぞれ決めて、10-3で前半を折り返した。

 後半もスプリングボクスが主導権を握り、51分にポラードがPG、58分にポラードがDG、73分にポラードがPGと、キックで着実に加点していき、19-3としてほぼ勝負を決めた。この後の75分、ハイパントボールを競り合ったスプリングボクス14番WTBアレンゼが、ボールキャッチのためにジャンプしたオールブラックスSOバレットに、空中で体当たりしてレッドカードとなった。これはかなり悪質なプレーのため、数試合の出場停止になると思われる。

 この後の数的優位を突いて、オールブラックスは79分に、11番WTBクラークのラインブレイクからつないだ20番FLシャノン・フリッゼルがトライを挙げ、22番SOリッチー・モウンガコンバージョンを決めて、19-10と差を縮めた。しかし80分、オールブラックスが自陣からつないだボールをパスミスし、これを拾ったスプリングボクス23番ウィリー・ルルーがトライを挙げ、ポラードのコンバージョン成功で、26-10と再び点差を拡げ、1928年以来となる16点差で完勝した。

 スプリングボクスは、HOマルコム・マルクスがブレイクダウンのターンオーバーを連発した他、スクラムでも優位に立つなど、全ての面でオールブラックスを圧倒した。一方、オールブラックスは、HOサミソニ・タウケイアホの突進以外は、これといったアタックを見せられず、12番CTBデイヴィット・ハヴィリは機能せず、WTBウィル・ジョーダンやCTBリエコ・イオアネは沈黙していた。

 スプリグボクスは、SHデクラークが脳震盪になったが、オールブラックスも、SOボーデン・バレットがアレンゼのラフプレーで脳震盪になり、数試合の出場不能となる見込みだ。スプリングボクスは、この試合も交代出場したジェイデン・ヘンドリクスをSHで先発させるので影響は少ないが、オールブラックスはリッチー・モウンガを先発させるとともに、22番のリザーブを誰にするかで悩むことになる。

 ダミアン・マッケンジーを特例で呼び寄せることも可能だが、新人のスティーヴン・ペロフェタを起用するか、ルーベン・ラヴまたはジョシュ・イオアネを呼び寄せる可能性もある。しかし、順当ならペロフェタがキャップを得るチャンスになりそうだ。また、FBジョルディ・バレットも足首を痛めて交代している。回復具合は不明だが、プレーできない場合は、ウィル・ジョーダンがFBに回り、空いたWTBをセヴ・リースとレスター・ファインガアヌクでカバーすることになるだろう。

 フォスター監督は、このゲームがせめて内容が伴った負けであればまだしも弁解の余地はあったが、このように完敗し、しかも94年ぶりの大差を付けられたのでは万事休すだろう。次のゲームが最後の指揮になると思われる。また、来年のRWCでオールブラックスは、プールマッチでフランス、決勝トーナメントでは、スプリングボクスまたはアイルランドのどちらかと当たることになる。そして、この3チームとの最近の対戦では完敗しているため、RWC史上最悪だった2007年RWC準々決勝敗退を再現することになるかも知れない。

 そうならないためには、一刻も早い指導陣の交代、つまりスコット・ロバートソンの監督就任と、サム・ケーンのキャプテン解任が求められる。現状のままでは、この試合が証明したように、何も変わっていないし、変えることはできていないと思う。

2.アルゼンチン26-41ワラビーズ

 イングランドに負け越してしまったワラビーズのNZ人監督デイヴ・レニーは、SOに大ベテランのクエード・クーパーを起用して、チームを安定させたい。また、怪我で欠場していたジョーダン・ペタイアが14番WTBで復帰する。しかし、切り札CTBのサム・ケレヴィが膝の怪我で長期欠場となってしまったため、この試合では、12番にハンター・パイサミが先発する。

 FWでは、6番FLとしてジェド・ホロウェイが、29歳にして初キャップを得る。また、レッドカードで出場停止処分だったダーシー・スワインが、4番LOとして先発で復帰する。

 6日、オーストラリア協会は、キャプテンのマイケル・フーパーが「チームに貢献できる心境ではない」として、急遽帰国したことを発表した(その後、自分自身のメンタルヘルスの問題と公表した)。この結果、7番FLにはフレイザー・マクブライトが先発する。

 アルゼンチンのオーストラリア人監督マイケル・チェイカは、スコットランドに負け越してしまったもののチームに手応えを感じている。今回の強豪との対戦で、さらにチームを強化させたい。

 2番HOにフリアン・モントーヤが先発に戻り、大ベテランのアガスティン・クレヴィが16番に入ってサポートする。切り札FWのパブロ・マテーラは、FLからNO.8に移動し、機動力をさらに生かす。SOは世代交代となり、サンチャゴ・カレーラスが先発する。

 アルゼンチンはホームである上に、ワラビーズを熟知しているチェイカ監督がいるため、かなり有利な条件となっている。しかし、ワラビーズも簡単に負けるわけにはいかないので、かなりの接戦となることが予想される。

 ゲームはアルゼンチンが先制した。6分、NO.8パブロ・マテーラが見事なアングルランでトライを挙げ、11番WTBエミリアーノ・ボッフェリがコンバージョンを決め、7-0とした。これに対して、10分にワラビーズSOクエード・クーパーがPGを返したものの、12分と16分にボッフェリがPGを追加して、13-3とアルゼンチンがリードする。

 18分、ワラビーズは、14番WTBジョーダン・ペタイアが、クーパーの巧みなタイミングをずらしたパスからトライを挙げ、クーパーのコンバージョン成功で、13-10と迫った。ところが、アルゼンチンは22分と40分にボッフェリがPGを入れて、19-10とアルゼンチンがリードして前半を終えた。

 後半は、ワラビーズが48分、7番FLフレイザー・マクライトがトライを挙げ、48分にふくらはぎと足首を痛めてリタイアしたクーパーに代わってSOに入った、22番リース・ホッジがコンバージョンを決め、19―17と2点差に迫る。アルゼンチンも55分に、6番FLフアンマルティン・ゴンザレスがトライを挙げ、ボッフェリのコンバージョン成功で、再び26-17と9点差にする。

 ところが、ワラビーズのFWが奮闘し、61分にゴール前モールをつぶしたことで、アルゼンチン4番LOマティアス・アレマンノーがシンビンになり、ワラビーズがペナルティートライを得て、26-24と迫った。続く66分、ホッジがPGを入れて26-27と逆転すると、71分には、モールから2番HOフォラウ・ファインガアがトライ、ホッジがコンバージョンを入れて、26-34と引き離し、80分にも相手のミスからボールをつないで、13番CTBレン・イキタウがトライ、ホッジのコンバージョン成功で、26-41と大勝した。

 ワラビーズは、アウェイのゲームで幸先良い勝利を挙げたほか、チキンハートのホッジが珍しくゴールキックをミスなく決めるなど、ポジティブな結果となった。なお、クーパーの回復具合はわからないが、SOはホッジの他、ジェイムズ・オコナー、ノア・ロレシオがいるので、影響は少ないと思われる。

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