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<閑話休題>社会考察のようなもの

 今年3月までは、ルーマニアにいた。日本人と比較すれば、ヨーロッパ人は、体系的に胴が短く足が長いため、足腰が弱い印象がある。実際、ブカレストに住み始めた当時は、杖を頼りにしている老人の姿が目に付いた。それでも、活動時間や活動場所との関係か、非常に多かったという印象はない。
 
 その後、ご承知のとおり、新型コロナウィルスのため世界中で行動規制が始まり、外出できずに家で過ごす時間が多くなった。それでも、(EU主導に従って)ブカレストではスーパーでの買い物や犬の散歩は許されていたし、強力な外出規制(街中に人通りはなく、街路樹からは野鳥の歌声が聞こえていた)は晩春から初夏にかけての2ヶ月で終わった。その後は、ワクチン接種開始と並行して、行動規制が徐々に緩やかになっていき、秋にはワクチン接種者はほぼ規制がない状況になった(その代わり、ワクチン未接種者に対する規制はより強化された)。

 一方、日本はルーマニアのような警察が取り締まるほどの規制は実施されていなかった一方、高い民度に起因すると思われる国民自身による自主的な規制が、かなり長期間にわたって実施された。また、「(コレラ、ペストなどのように)感染したらすぐに死ぬ恐ろしい病気」という(真実ではない極端な)イメージが浸透したこともあり、特に老人は外出することを完全に控えるようになった。

 ところで、新型コロナウィルス発生以前に、日本(東京)に一時帰国したのは2017年のことだったが、街中を歩いていても、冒頭に書いたように足腰が丈夫な日本人らしく、杖を頼りにする老人の姿は少なかったと思う。むしろ、老齢にもかかわらず健康そうに明るく街を散策する姿が目立っていた。

 しかし、この3月に帰国して定年退職となり、平日の老人が多く活動する時間帯に街中を歩くことが多くなったことも影響しているのだろうが、(東京の)どこにいっても、老人の姿が多いだけでなく、かなりの割合で杖を使っている人が目についた。さらに、杖を使っている人は、老人とはまだ言えない年齢層の人もいて、ちょっと変だなと感じている。

 その理由を自分なりに考えてみると、以下の3項目になった。

1.自分が病気で三日以上寝たきりになった経験からすると、人間は三日以上寝たきりになると、身体中の筋肉がすぐに衰えてしまい、歩行するのも厳しくなる。同時に、心肺機能も低下するので、日常生活に戻るためには、寝たきりだった期間の2倍の時間をリハビリ(慣れ)に費やす必要がある。

2.新型コロナウィルス感染防止のための行動規制、社会活動規制のため、特に老人は家にこもることになった。もともと年齢から筋肉が衰える割合が高い上に、長期間に家に引きこもった結果、極度の運動不足になり、いわば寝たきりに近い状態が続いた。さらに、それが約2年も継続したため、身体に対するダメージはかなり大きくなった。

3.そうしたことは老人だけでなく、中年層にも影響した結果、足の筋肉の衰えによる歩行困難が生じ、杖を使用する割合が増えた。また、引きこもりによる運動不足に起因する心肺機能の低下、及びそれに伴う免疫の低下が発生し、通常では症状が出ない日常の雑菌にも反応するようになったため、身体の異常が生じている。

 私自身は、ルーマニアにいるときは車を使う時間帯が多かったこともあり、東京暮らし(地下鉄の乗り換えや最寄り駅までの歩く距離の長さ!)と比較すれば、驚くほど歩数が少ない生活を送ってきた。今年3月に帰国してからは、それまで1日1000歩弱だった歩数が、日常生活を営むだけで最低5000歩を歩き、地下鉄を使って出かけるとあっと言う間に1万歩近くになった。

 筋肉が増加するための期間は3の法則があり、3日、3週間、3ヶ月の割合で体に備わってくる。今ちょうど東京暮らしが3ヶ月を経過して、特に背骨の腰付近にある大腰筋が付いてきたことを実感する。私は脊柱管狭窄症により歩行すると足に強いしびれが出てくるのだが、3月に帰国した当時は、5分ごとに短時間の休憩を必要としていたのが、その後の適度な公園の散歩・器械運動や日常生活の成果が出て、今は30分近くまで大丈夫になっている上に、足のしびれも軽減している。

 こう考えてみると、日本でもようやく新型コロナウィルスによる行動規制が本格的に緩和されてきたので、今年の冬頃には、杖を使う人が減ることを期待したい。もちろん、私の病気も、大腰筋という自然のコルセットを備えることで改善することを目指していく。


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