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<物語翻訳>「ボルネオの民話―点描―」

「Folk-Lore in Borneo A Sketch」William Henry Furness ウィリアム・ヘンリー・ファーネス著 2009年 Opus Publications Kota Kinabalu Malaysia オプス出版 マレーシア,コタキナバル

著者は,パリ地理学研究所会員,アメリカ合衆国人文科学研究所会員,アメリカ合衆国東洋研究所会員
初版は,1899年に,アメリカ合衆国ペンシルバニア州デラウェアのウォリングフォードで,著者自らが出版。

この文化人類学の古典的文献から、ボルネオの神話部分のみを抜粋してご紹介したい。
なお、全文を一応翻訳したが、この掲載は後日改めて考える(たぶん有料で)ことにしたい。

1.創世神話(巨岩バージョン)

とても古い,古い時代のこと,そこに水と空以外には何もなかったとき,巨大な岩が点から降ってきた。その一部からは,水が激しく沸きだし,放出し,まったくむき出しのままだった。そこにはあらゆる種類の土や植物はなかった。それから長い時間が経ち,やがて雨が岩の中からゼリーを生み出した。それはハランと呼ばれる小さな虫で,ゼリーは成長していった。そして,その虫たちは岩の中に入り込み,その穴からは美しい砂を残した。この砂は,やがて土となり,岩全体を覆っていった。そしてまた長い時間が過ぎていき,岩は全ての弱々しい生き物を止めていたが,突然太陽から,ハウプマラトと呼ぶ,パラン(または剣)の大きな柄が落ちてきた。このパランの柄は,岩の中へ深く突き刺さり,土から根を取りだした。そして芽吹き,バタンウタルタテイと呼ぶ大きな樹木に成長していった。

この枝が,新たな土地のあらゆる方向に広がっていった。この樹木が完全に生長しきったとき,月から,ジクワンタリと呼ぶ蔓のようなロープが落ちてきた。この蔓はすぐに樹木に巻き付き,岩に根を固定した。そして,月から来たジクワンタリという蔓は,太陽から来たバタンウタルタテイという樹木の夫となった。バタンウタルタテイは,双子の男女の子供を産んだ。彼らは自然の樹木ではなく,まるで人間のような生き物だった。男の子はクロベアンジェイ,女の子はクルバンジェイと呼ばれた。双子は結婚し,さらに2人の子供を持った。子供の名前は,ペンゴクナガイとカチラムライと呼ばれた。カチラムライは,来歴が叙述されていないアジャイアヴァイという老人と結婚した。カラチムライとアジャイアヴァイからは,カリマンタンの土地に住む様々な部族の多くの酋長が子孫となった。それら部族の名前は,セジャウラホ,オディンラハン,そしてカヤンの泉から来た,タバラン,プリバン,さらに首狩りの父と呼ばれるトコンであった。

時が過ぎ,前に述べた岩のわずかなゼリーは,コケに変化した。そして,少しずつ植物を生み出していった。小枝と樹木の枝のような付加物は,明らかに自然の女性原理となっていた。それらは地面に落ち,鳥,獣,魚に変化していった(この枝からの贈り物については,追記することがある。またそれは,自然の概念を超えた運動でもあった。一方,私はジャングルで何度も見たことがあるのだが,驚くべきことに,葉が地面に落ちた後,魔法のように足が出てきて歩き出したのだ。これは「歩く葉」と呼ばれるカマキリの一種として著名な虫だった)。これらの岩に住む生き物は,火を必要としなかった。太陽は強烈に照りつけ,そして夜はなかった。それから,とても長い時間が過ぎたころになって,ラキオイという老人が火を得る方法を発見した。乾いた木の板を下におき,籐の切れを前後に激しく引っ張ることによって得られる,摩擦熱による方法だった。この火を得る方法をムサと呼んだ。そしてこの方法は,儀式に使う火であり,子供の命名や占いの鳥との意思疎通の際に使用するのだが,現在まで唯一の方法として残っている。ラキオイは,ナリカという火をおこす錐についても,人々に教えている。

バタンウタルタテイの中心となる幹から,多くのものが自然発生した。ルトンという樹脂のゴムが染み出し,それが下に落ちていった後,たちまちに鶏や豚に変化していった。そしてこれらのものは,占いを読み取るための,樹木の心と物質から形成されていた。また同時に,自然の最奥を見ることや未来を知るための固有のものでもあった。

最初に人に似た生物は足がなく,肋骨もなく,小さな頭,胸,腕と身体の破片からなっていた。その破片は,断片とぼろきれが蛇のようによじれていた。彼らが移動するときは,腕を使って地面を引きずっていた(この叙述は,原住民が肉を切り分けているように見える。大きなイカやタコを想像させるものが,伝説の最初の語り部から来ているように思う)。少しずつ,身体はさらにまとまった形態になっていった。その後の世代になると,足が生えたが,足を使って移動することに慣れるまでには長い時間を要した。この不格好な生き残りは,カヤンズと呼ばれ,幼児が床を這う動作の表現として知られている。この不格好な歩行は,やがて立ち上げることを学ぶ。しかしながら,始原の人々の頭は現在の人よりも大きかった。それはまた,身体の最初に作られた部分であり,また最も古い部分でもあった。そしてこの民話の最も重要な部分でもあった。その価値は,人の生死と一致していたのだ。

2.別の創世神話(鳥バージョン)

サラワク州バラム地区のある部族の一人から聞いた,ダヤクの天地創造は,世界の始まりは,ブロンイリとブロンリンゴン(ブロンは鳥の意味)という2羽の大きな鳥だった。2羽の巨鳥は,河,大海,土地そして空を創造した。最初の生命は,植物と樹木だった。樹木が最初に創造されたとき,風が吹いて樹木が倒れた。それが繰り返され,イリとリンゴンは,その度に建て直した。その後,彼らの偉大な知恵が,支柱と維持することの必要性を理解し,強い蔓と蔓草を利用することとなった。

そして,この2人の創造者は,他の樹木から別の生物を作ることで,大枝と小枝にとって愉快な場所になると考えた。そこで彼らは,鳥とその他のコウモリやモモンガのようなあらゆる飛ぶ動物を作った。そうして長い時間をかけて相談した結果,最後には地面を歩く人を作ることにした。最初は,粘土から人を作ったが,人が乾いた後に動くことも話すこともできなかった。この結果に彼らは憤り,怒りとともに逃げ去ってしまった。彼らの背後にあった恐怖は,全てを平和のうちに破壊した。次の人は,堅い樹木から作った。しかしこの人もまた,まったくの馬鹿であり,本当に良いものは何もなかった。それで,この2匹の鳥は,慎重に良い素材を探した。そしてついにクンポンと呼ばれる樹木を見つけた。その樹木は,強い繊維を持ち,どこを切っても深い赤身のある樹液をたくさん出していた。この樹木から出るもので,男と女を形作った。その成果は大変に満足できるものであったので,彼らはしばらく休養した後,男と女に手仕事を行うように命令した。その後も彼らは人を形作ることを続けた。クンポンの樹木に戻ってきたが,もともとのどうやって作るのかを全く忘れてしまっていた。そのため,彼らはとても劣る生物を作ることになった。それは現在のマイアス(オランウータン)と猿たちの祖先となった。

男と女は,助けを得られないばかりか,生活に必要なわずかなものを得ることにも苦労した。そのため,イリとリンゴンはウビ,野生のさつまいもを贈った。また,カラディ,カラディウムと呼ばれる野生のタピオカや他の食用となる根も贈った。どこにでもいる男と女は,どうやって食べるかを学んだ。しかし,火については知られていなかったので,始原の人々はこれらの食べ物を生で食べていた。

現代のマイアスや猿たち,そしてそのほかの犬も含む多くの動物たちが,出現した。彼らは長い間,お互い仲良く暮らし,カプアス大河の支流に近い土地にいた。そこは今日,ダヤクにとって,世界の中にある菜園と思われていた。しかしながら,犬は,自分の舌で身体をきれいにすることから,すぐにほかの動物たちから軽蔑された。さらに,人に卑屈であるといじめられた。そのため,鹿とほかの多くの動物たちは,人が犬を打ち据えるのにも関わらず精神的な奴隷だと犬をののしった。それでも,犬は人の後についていき,じゃれついていた。ほかの動物たちはこうしたことを決してしなかったので,皆生きるためにジャングルの中に移動した。しかし,犬は自分たちの快適さをこう言った。「もし人が我々を打ち据えたときは,我々は低くしゃがめば,ときには人の手は外れてしまう。そして,自分たちは,ほかの動物が食べているような貧弱な食べ物では生きられない」。こうして,犬は人に付き従うようになった。

ある日,人と犬がジャングルに入っていったとき,雨に濡れてしまった。このとき人は犬が自分で,アカララという蔓草に身体をこすりつけて暖まっているのに気づいた。そのとき,人は枝を取り上げてアカララに激しくこすりつけたところ,驚くべきことに火を得られた。これが,スカンと呼ばれる火起こし錐の最初となった。そして,これ以降人は,家の中で火を得ることができた。それからあまり長い時間が経っていないころ,偶然にウビが火に落ちた。人は,ウビの味がよりよくなっていることを見つけた。この偶然によって調理方法が発見された。

さらに時間が経っていた。犬とほかの動物たちは数を増やしていた。人は,自分たちに似た者を作った。女が4番目の子供をもたらし,マチャンブンツと名付けた。数年後,女が女の子供を産んだ。彼女は成長した後に兄のマチャンブンツと結婚し,一度に70人の子供を産んだ。これらの子供たちは家を出て,世界中に散って行った。そのうちから,木の精霊,山の小人になり,彼らは樹木,河,地下に住んでいた。

3.首刈りの起源及び死後の世界

トコンの偉大な酋長の伝説は,遠征によって伝わっている。コプと呼ばれる蛙は,敵の首を髪の毛以外は全て奪い取っていた。トコンは蛙によるこのやり方に対して,最初は怒ったが,部族からの長い説得により,次の戦争を試みることになった。その結果,戦争で全ての首を取った部族は,彼らが来たところの河に向かって素早く移動した。そこには,彼らの舟が置いてあったのだが,驚いたことに全てのものが,彼らが置いてあったとおりに残されていた。彼らは舟に乗り,そこに見えた,見たのだった。河の流れが,幸運なことに逆流しており,河の上流へ激しく押し流してくれた。その結果,彼らの住居へ驚くべき速さで戻った。

彼らが不在だった15日間の間,彼らの米の種類は苗を含めて絶えていたが,それらは成長し,実を熟し,ほとんど収穫できるものとなった。家族の中で病気だったため残してきた者は,今は皆治っていた。びっこの者は歩けるようになり,めくらは見えるようになっていた。部族の賢者は頭を振って,コプが教えてくれた習慣を,今後維持することを、彼と全員に宣言させた(いったい誰が彼らを鼓舞したのだろうか?)。

首を刈るという発想は,魂が旅立つ楽園へ入る許可を得るという発想を必要とした。その教義は,酋長によって教えられ,部族民を勇敢な戦士に育成した。そして全ての力を発揮しない場合は,臆病者としての処罰が待っていた。カヤンの地獄は,地下にあると信じられており,この古代ギリシア神話のハーデスに似た地獄の門番は,地獄の渡し守カロンに似た存在だった。しかし,彼らの三途の川は水の流れではなかった。そこは深く広い堀があり,泥と粘土の中に,虫とウジがいた。旅立つ魂は,この堀を舟なしで渡らねばならなかった。そして,木の幹のようになった魂に,偉大な地獄の悪魔マリガンは,全ての渡る者を審判した。もし魂が勇敢でないと判断された場合は,木の幹のような魂を激しく揺さぶり,堀の中に落とした。そこでは,死ぬことのない虫によって,むさぼり食われるという拷問が永遠に続く。地獄全体を統括するのは偉大な悪魔ラキテナンガンで,魂たちに適当な場所を割り当てる。そして,その功罪について,良いか悪いかを見分けている。

この幽霊のような世界において,アポレッガンは最上の階層となっている。病気や老衰で死んだ魂の住処となっている。アポレッガンにいる魂は,現世とまったく同じものを持っている。貧しいものは貧しいままで,富める者は同じように財産を持っている。そして,現世の状況が悩ましい生活であっても,来るべき世では,不運や困りごとがないことが期待された。

ロングジュランという二つ目の階層は,暴行や突然死による魂の住処だった。暴行は戦場も含んでいたが,木の倒壊による事故死は除外されていた。また,若い母親が出産で亡くなったことも含まれていた。彼女たちの魂は,若い戦士たちの妻になることで,若くして花を摘まれた魂にとって,また不幸な小さな母親にとっても、互いの伴侶となった。こうした信仰は,自然と生活に浸透していった。たとえば,若い男は,妻を出産で亡くした場合,あの世で彼女にまた会えることを意味した。またこうした意志は,出生に際して二倍強固にしてくれた。もし幸運にも十分な首を刈れた場合は,彼は戦士として上位に位置された。また彼が死ぬことになっても,ロングジュランで妻と会えるという快適な保証があった。ロングジュランの魂は,快適な生活を過ごし,現世でどのような生活をしていても,常に公平な結果を得られていた。

タンテッカンは三つ目の階層で,ラキテナンガンが委託する不運や苦悩から逃れていた自殺者のものだった。そこの魂は,ジャングルにおいて,驚くべきことに手当たり次第に見つけたフルーツや根を食べることで生活ができるところだった。この恩恵は,自殺を考えることに関係してくるが,勇敢な自己犠牲よりも目立つこの行為は,背負っているものから逃げる恩恵とともに,来るべき世界でより良い位置を得られるものであった。しかしながら,自殺はまったく流行するものとはなっていなかった。

テニュウラルは,四つ目の階層で,死産だった子供の霊に割り当てられた。小さな魂たちは,優れた勇敢さを持つと言われ,相手から防御するためには,木の棒などの武器は不要であった。彼らは現世での危険を経験することはなく,また痛みを感じることもなかった。そのため,様々な感情からは全く無関係であった。彼らが成長する場所であるテニュウラルがどこかは知られていなかった。しかし,彼らはまとまって小さな世界で同居していると信じられていた。

最後の階層となるリンヤンは,溺死した人の住居であった。河川の近くにベッドがあり,そこで魂はすぐに金持ちになった。激しい流れで転覆した舟が無くした全ての品物や,水底深くある、汚れて沈む樹木は,リンヤンに住む者たちの金庫にしまわれた。

こうした階層の中で中心となるのはダリマテイで,死の国と呼ばれた。そこには,恐ろしい丘,河,湖があり,そこに住む大きな力を持った悪魔たちが魂を支配している。この死の世界では,木,植物,動物が現世と同じにあると言われている。ダヨンという魔法使いは,こうしたことを唯一知っている者である。彼は全てのものを維持してきた。病気を治すための力,魂の世界への訪問などだ。全ての国の神話では,地獄へ行った者は皆英雄であり,そこから戻った後に物語を伝えている。カヤンもその例から外れない。彼らにはギリシア神話のオルフェがいて,その名をガモンと言った。

ガモンが,高熱と戦っているとき,死の淵にあることを自覚した。しかし,彼の魂が去って行くのを避けるため,友人たちを呼んだ。友人たちには,自分が死んだら戦争の衣装を着せること,3日間は埋めないこと,手に剣と槍を持たせて座った姿勢を維持することを依頼した。彼は友人たちに,自分は自分の前で出会う恐ろしいものに対する自信があると自らを慰めた。彼はきっかり3日の後,現世に戻ってくると言った。このすぐ後,彼の息は止まり,彼の友人たちは彼の希望していた葬儀を執り行った。3日間,彼の身体は冷え固まっていたが,ついに最後の時には,彼の命が復活し,眼を見開いて驚く友人たちに彼の冒険を話した。「私の魂が君たちから離れたとき,私はまっすぐに地下の道を行った。そこは大きな木の幹につながっていて,その名をビンタンシコパと言った。

そこに悪者が屹立していたが,自分は慣れていたので,悪者は私を呼び,止まるように言った。そして,私はそうしなかった。悪者の腕は非常に大きく,彼の身体より数倍もあった。そして木を揺すり始めた。そして『おまえは誰だ』と呼びかけた。私は答えた『ガモンだ。勇敢な戦士であり,私が横切る際に木を揺することはできない』。悪者はこう答えた。おまえのやってきたことを木々に相談する。私は自分のパラン(大刀)を振り払い,槍を持ち上げ,狂熱病のように走った。悪者の家に猛進し,全てをなぎ倒し,米の酒壺をひっくり返した。その酒は豊富にあったが,誰もが手を付けていなかった。悪者は驚き,家から外を伺って,飛びながら叫んだ『今おまえについて決めることはしない。7年後にやることにした』。悪者が飛ぶのを確認すると,私が行く先には何も邪魔するものはなかった。そして私は現世に還ってきたが,これは試練だった。」

4.米育成の起源

ダヤクの物語がイバン族に米をもたらしたとしている。彼らは,「人は,フルーツや木の根に生えるキノコの類以外に食べるものがなかった。イバンの各家族からシジュラ(現在シンポク村に居住している)と呼ばれる人が,海が見えるところへ行った。彼らは長い間航行し,ある場所に着いた。そこは大きな渦潮が遠く唸っていた。驚いたことに,空から大きなフルーツの木が降りているのを見た。そこから,木の枝が波に触れていた。仲間からの依頼により,シジュラはフルーツを取るために大枝を登った。フルーツは豊富にあった。彼が大枝にたどり着いたとき,彼は幹をさらに登って木が出ているところを見てみたいという誘惑に駆られた。そこから下界を見たところ,彼の仲間はフルーツを摘んだ舟を出航しようとしていた。

彼には他になす術はなく,ただ登ることにした。木の根のところにたどり着いたとき,彼はプレアデス(ダヤクでは,七つの星のつながりと称している)の国を発見した。彼がその土地に着いたとき,人のような存在にあった。その名前はシキラといい,彼に従ってその家まで付いていった。シキラは,彼に柔らかく白い穀物を食べ物としてくれた。『このような小さな化け物を食べるのか?』とシジュラは聞いた。『それらは,化け物ではない。それは炊いた米だ』とシキラは答えた。そしてすぐにシジュラに教えた。植物を植える技術,種を蒔く技術,刈り取る技術,皮をむく技術,そして米を炊く技術を教えた。

シキラの妻が水を得ようとして外に出たとき,シジュラは,そこに並んでいた大きな壺の一つを覗き見た。するとその底には,彼の父の家と兄弟全員,姉妹全員が座って話をしているのが見えた。彼の気持ちは,故郷を再び見ることはないと思って非常に落ち込んだ。食べる代わりに泣いた。シキラは,どうしたのかとその姿を見た。そして,シジュラが満足するように全てを設定することを約束した。そして,シジュラは暖かい食事を食べ始めた。

その後,シキラはシジュラに3種類の米を与えた。そして,シキラはジャングルを開拓する方法を後に教えた。まず焼き払い,そして鳥たちから植物を植える前兆を知る。そして,収穫したものは,祭りのために保存する。長いロープを使うことによって,シジュラは地面に再び降りることができたが,そこは彼の父の家の近くだった。シジュラのプレアデスへの訪問から,ダヤクは農業を学んだ。それから更に,現在プレアデスが農業の開始を伝えている。プレアデスが朝と夕方に空で見えるとき,ダヤクはジャングルを刈り取り,燃やし,植物を植えそして刈り取っている。」

5.私的解釈

空から巨岩が降ってきたのは、あきらかに宇宙船だと思う。そして、空からロープが下りてきたのも、母船からのものだったと思う。地上に降りた宇宙船から、地球上の生命になる原型となるゼリー状のものが噴出し、現在の生命体の起源となった。同様に、2羽の鳥とは、宇宙服を着た異星人の姿であり、彼らが地球にやってきて、人類に文明を与えたと思う。

死後の世界や異界へいく物語は、始原における宇宙人との関与とは違って、純粋に文化人類学的に理解される対象だと思う。ボルネオの住民が住む環境から、そうした死後の世界や異界の姿は想像できるため、理解しやすいイメージではないか。

首刈りについても、ボルネオ特有のものではなく、古今東西、著者が言うように行われていた習慣なので、異常なものとして差別する必要は無いと考える。首刈りの習慣がなくなったのがいつだったのかという時間的差異が、ヨーロッパ社会とボルネオとの間にあるだけだ。

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