【舞台】二人の男女の出生と愛ー秘密が明かされるにつれて身震いが止まらない/朗読劇『木洩れ日に泳ぐ魚』
直木賞受賞作家・恩田陸。2005年に『夜のピクニック』で本屋大賞初受賞。2013年に『夜の底は柔らかな幻』で直木賞に初ノミネート。2017年には後に実写映画化もされた『蜜蜂と遠雷』で直木賞と本屋大賞のW受賞という輝かしい実績を誇る現代を代表する作家の一人です。
彼が2007年に発表した『木洩れ日に泳ぐ魚』。2010年に文庫化され、私はこの文庫版でこの作品の世界を体感しました。とんでもなくスリリングで引き込まれる心理サスペンスなんですが、まさに舞台向きのシチュエーションものなんですね。
今年2021年2月12日〜14日の3日間、倉科カナと浅利陽介出演の朗読劇という形で世に解き放たれました。どちらも同年代で、倉科カナさんはもともと好きな女優さんということもあり、この機会に本物を見たい!思いを胸に朗読劇のチケットを購入しました。
舞台自体、友人がやっているアマチュアの舞台を何度か観に行ったことがある程度なので、”朗読劇”というものは初体験でした。書店でもよく実施されている子供の読み聞かせ会みたいなものですが、プロの役者が体の表現も駆使しながら魅せる演技ということで大変面白かったです。
今回観賞した朗読劇『木洩れ日に泳ぐ魚』の簡単な紹介と感想、終演後に主演の二人で開かれたポストトークについて紹介していきます。
①『木洩れ日に泳ぐ魚』あらすじと感想
<あらすじ>舞台は、アパートの一室。別々の道を歩むことが決まった男女が最後の夜を徹し語り合う。
初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿――。
共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始め、“最後の夜”に濃密な心理戦が繰り広げられる。
かつての恋人は、ひょっとして殺人犯なのか?
過去をめぐる物語は次々と意外な事実を明らかにし、朝の光とともに訪れる真実とは――。(朗読劇『木洩れ日に泳ぐ魚』公式HPより)
あらすじで恋人と記載された二人の男女の関係性ですが、好きなものが一致しているなど共通点が多く、最近劇場公開された『花束みたいな恋をした』のような互いに惹かれ合う恋人同士のようです。
しかし、二人は舞台となっているこの日を境に別々の道を歩むことになるのですが、最後の夜に互いの共通の話題、過去を打ち明けていくにつれて、知られざるお互いの素性について明かされていくわけです。
なんとなく想像していた展開のさらに斜め上をいく結末…これほどまでに練られたサスペンスはなかなかありません。Amazonの商品紹介にもある”傑作心理サスペンス”という言葉は偽りなき事実。
それを倉科カナと浅利陽介という実力派俳優が朗読しながら演じるという贅沢なひとときでした。
②倉科カナと浅利陽介/キャストの魅力について語る
二人ともとても愛着ある俳優たちで、倉科カナは自分がトップレベルに好きな女優の一人、浅利陽介は若手時代から注目していた俳優の一人です。
・倉科カナ
デビューからずっとロングヘアだった彼女ですが、なんと昨年2020年9月に約40cmも切ってボーイッシュなショートヘアーにイメージチェンジ。これがたまらなく可愛いと話題になりました。
もともと小顔で、しかもあざと可愛いキャラも相まって、その笑顔の破壊力は何十倍にも増した感覚があります。本当に笑顔が素敵な女優さんです。また、彼女の魅力は特徴のある伸びやかで鼻がかかったような声。今回舞台で彼女の声を聴いて、密室空間で響き耳にしばらく余韻が残るような声は一層魅力的に感じた次第です。
テレビドラマでは主演やヒロインを演じることが多く、代表作は朝ドラ『ウェルかめ』でしょう。ここ最近は『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』の出演もあり、一層注目度が増しているような彼女ですが、映画はこれといった代表作がないのが残念。
ただ、今回髪をバッサリと切ったきっかけとなった2021年春公開予定の『女たち』は彼女の新たな代表作になるのではないかと期待しております。
・浅利陽介
優しそうな面持ちそのままに、ドラマや映画でもいい人の役が定着している浅利陽介。とはいえ、彼の注目度が高まったのは、彼がまだ14歳だった頃に出演した昼ドラ『キッズ・ウォー3』の不良少年・一平役でしょう。当時、同ドラマでブレイクした井上真央と対立し、恋もする重要なキャラクターで、髪型も真っ赤でとても印象的でした。
そんな彼は『新選組! 』をはじめとした大河ドラマにも多数出演している常連。『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』では、山下智久や新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未といった超人気俳優たちと肩を並べる主要キャラの一人を演じて、国民的にも認知度の高い俳優になったと言ってもよいでしょう。
③朗読劇『木洩れ日に泳ぐ魚』ー舞台ならではの見どころ
朗読劇とは、Weblio辞書には次のように紹介されています。
役者が台詞を暗記するのではなく、台本を持って音読するスタイルで上演される劇。主に声による劇的演出によって観客にイメージを伝える。(Weblio辞書)
つまり、役者たちの手元には常に台本があります。セリフを覚える映像作品や舞台とは異なり難しいのは、文字を追いながら常に舞台に立つ役者のセリフのキャッチボールになる点でしょう。
ただ単調に読むだけでは観客は飽きてしまいます。いかに喋りに抑揚がつけられ、さらに手足の動作で違いを見せられるかにかかっています。
今回は出演が倉科カナと浅利陽介の二人だけで、しかもシチュエーションものなので、場面転換はなく、スタートからラストまで休憩なくやり続けなければなりません。セリフを噛む、言い間違えることに対する恐怖は半端ないものでしょう。
動作が少ない分、彼ら役者陣の声もかなり重要です。決して広くはないシアタートラムという空間も相まって、彼ら二人の声が心地よく身体中を包む感覚がたまりませんでした。
④ポストトークでは二人の魅力と良い意味でのお気楽さが炸裂!
舞台ということで、もちろん撮影禁止なので、お二人の魅力的なトーク姿を紹介できないのは残念ですが、常に笑顔が絶えないトークは大変楽しかったです。
終演後、少しの時間準備で舞台そでにはけた二人でしたが、ポストトーク開始早々倉科カナ節が炸裂。一応ポストトークにも進行表があるけど、もうこれ別にいいよね!と。
そのまま進行表を無視し、自由なトークを展開します。
3日間で合計4回の舞台が披露されましたが、回ごとに演技の細かい表現や話し始めるタイミングなどを変えて変化を楽しんでいた模様。
「ただいま!」という浅利陽介さんのセリフがあったのですが、私が観に行った11日(土)の18時の回では他の回とは大幅に言うタイミングを遅らせたとのこと。そのシーンでは倉科カナさんは正面を向いてなくてはならず、なかなか浅利さんがなかなかセリフを放たなかったとのことでドキドキしたと胸中を語りました。
ちなみに本公演のための練習はたった4日間だけだったとのことです。
ほかにも、二人の演技での失敗談やバレンタインデーについてのトークなど、普段ドラマや映画を観ているだけでは聞けないような素の二人を見せてもらえました。バラエティ番組をほとんど見ない私としては、このような機会は大変貴重でした。
とりあえず倉科カナさんいわく「バレンタインデーに突然男性からチョコを渡されたらキュンとする」だそうです。
⑤朗読劇はアーカイブ配信もあり!
リアルな場で上演される舞台ということもあり、観賞できる機会は人数の問題もあり限られています。
そこで本公演はアーカイブでの視聴もできるようです。視聴期間は2月21日〜28日までの1週間。ご興味ある方は以下のURLからチケット購入の上、視聴してみてください!
倉科カナさんのサイン入りポスターやカレンダーも手に入って大満足な公演でした。
やっぱり”生”の臨場感とそこから感じ取れる感動は簡単には言い表せません。俳優が演じる姿を生で観られるのは大変貴重で価値の高いことです。好きな俳優が出演している舞台はまた行ってみたいと思いました。
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