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【276冊読んだ】2024年上半期のお気に入り(だいたい)10冊

これまでnoteには旅の話ばかり書いてきたけれど、実は旅より好きなものがある。本だ。

2024年上半期に読んだのは276冊。そのうち特にお気に入りの10冊を、小説とエッセイに分けて紹介してみたい。

【小説】

『マリエ』(千早茜)

大好きな千早茜さんの作品。目次の時点でわりと深めに刺さってしまい、いったん本を閉じて深呼吸した。

主人公のまりえは、夫から「恋愛がしたい」と打ち明けられ、40歳を目前に離婚することとなる。

そんな第一節のタイトルは「離婚、新しい香水、白いシーツ」。ねえ、どう?なにかと人生に悩みがちな同世代のみなさん。深めに刺さりません?

文藝春秋さんのページに目次が載っているので、ぜひ見てほしい。

『ヒロイン』(桜木紫乃)

新興宗教団体によるテロの実行犯として指名手配された女性の逃亡物語。女性は無実なのだが、その宗教に入信していたのは事実だし、やましい秘密もあり、別人を演じながら逃げ続けることとなる。

いくら隠そうとしても、ふとしたところに「本当の自分」が出てしまう。生きている限り、生まれついた「自分」とは対峙し続けるしかないのだ――というメッセージを受け取った一冊。

『十角館の殺人』(綾辻行人)

大定番ミステリをいまさら履修。

からくりが明かされたときに「そうだよね、それしかないよね。でも思いつかなかったな……」と感じさせてくれるミステリが大好物なのだが、本書はまさにそんな一冊。からくりを忘れた頃にまた読みたいが、たぶん忘れないだろう。

『十戒』(夕木春央)

2022年にたいへん話題になった『方舟』の著者、夕木春央さんの新作。2023年夏に発売されてすぐ入手したものの、読むのがもったいなくて積読していた。

物語の舞台は、ミステリ好きなら必ずときめくクローズドサークル。読み終わった瞬間、2周目に突入し、またたく間に読み終わった。『方舟』を読んでから手に取ることを強くおすすめしたい。

『悪の猿』シリーズ(J・D・バーカー)

ある事情で休職中の刑事・サムは、相棒から突然「事件発生」と呼び出される。休職中の呼び出し、しかも、専門である殺人事件ではなく、交通事故の現場だ。それもそのはず、交通事故で亡くなったのは、サムが長年追い続けてきた猟奇殺人事件の犯人と思われる人物だった――。

「これを月曜日にまわしてはならない、絶対に仕事を放りだすことになる」という確信があり、日曜日にとっぷり夜更かしさせられた。一日あたり500ページのペースでぐいぐい読み、計2000ページをあっという間に読了。

『さよなら、シリアルキラー』シリーズ(バリー・ライガ)

史上最悪級の連続殺人犯を父に持つ高校生、ジャズを主人公とする物語。

ジャズは普通の男の子なのだけれど、幼いころ、父から犯罪の“英才教育”を受けている。殺人犯の血を引く自分もいつか、罪を犯してしまうのかもしれない――。そう怯え悩むジャズを見守っているうちに、物語は思いがけない方向へと展開していく。

さわやかで甘酸っぱく、きゅんとするという稀有なミステリ。翻訳も最高で、まるで脳に直接語りかけられているような調子。翻訳ものが苦手な人にもおすすめしたい。

『暗殺者たちに口紅を』(ディアナ・レイバーン)

60歳の女性暗殺者4人が主人公。これまで数々の案件をこなし、無事に引退の日を迎えた――と思いきや、所属している暗殺組織〈美術館〉に命を狙われていることが発覚。これまで得た知識やスキルを総動員して返り討ちにする。

とにかくおばあちゃんたちが最高にかっこいい!スパイ映画ファンとして、ときめかざるを得ない一冊だった。

【エッセイ】

『女ふたり、暮らしています。』(キム・ハナ/ファン・ソヌ)

プロの書き手に対してたいへん失礼ながら、読み始めてすぐ「文章うま……」と思った一冊。テーマ設定といい、文章の流れといい、嫌味なくおしゃれな表現といい、私好みのエッセイそのものだった。

内容は書名のとおり、親友どうしのふたりがともに暮らす日常を綴ったもの。ふたりが(ほぼ)交互に書いていく形式となっている。

ふたりの日常に、ドラマチックな出来事はほとんど起こらない。それでもずっと読んでいたいと思わされる、不思議な吸引力がある。

実は図書館で借りて読み切ったのだけれど、「これは手元に置いておきたい」と思い、すぐに購入した。あまりに文章が好みなので、写経して、すこしでもエッセンスを吸収する予定。

翻訳には詳しくないが、訳者・清水知佐子さんの言葉選びが素敵なのも、本書の大きな魅力なのだと思う。清水さんが手がけられた他の本も手に取ってみたい。

『北欧こじらせ日記』(週末北欧部Chika)

北欧大好きなChikaさんの旅とキャリアがコミックエッセイ形式で綴られている本。ドラマ化された折、推しである本田仁美さんが主役を務めたこともあり、読みたいと思いながら時が経っていた。

Chikaさんはどんどん行動を起こして自分の夢をつかみとっていく。コミカルに描写されているけれど、その裏にはきっと多くの葛藤や挫折があったのだろうと思うと、いっそうときめかされた。

また、好きな国に対する情熱は、旅好きとして共感できること多々。次の旅を予約したタイミングでうっかり手に取り、行き先を北欧に変えたくなってしまったほど。私も好きな国への思いをこんなふうに言語化できる力があればな、と思いながら読んだ。

『1日が長いと感じられる日が、時々でもあるといい』(小沼理)

同性パートナーと暮らす著者による、日記形式のエッセイ。実は私の家族が著者さんとお仕事でご一緒したことがあるそうで、「素敵な方だよ」と紹介されて手に取った。

私は面識がないのだけれど、ご本人のおしゃれさと誠実さ、そして知性が文章ににじみ出ていると感じた。知らない人の日常なんて興味がないはずなのに、寝る前のお楽しみとして大切に読み進めた(し、この本をきっかけに、noteで知らない人の日記を読むのにはまった)。

新刊が出たようなので、早く読みたいと思っているところ。

【おまけ・再読した小説】

『かがみの孤城』(辻村深月)

「学生が主人公」「ファンタジー」という、自分の苦手な要素が掛け合わされたストーリー。それなのにページをめくる手がとまらない。別格のおもしろさとはこのことだ、と思わせられた一冊。

『横道世之介』シリーズ(吉田修一)

横道世之介を中心とした人びとの、長い長い物語。読み進めるうちにストーリーに深く入り込んでいき、自分も世之介の元彼女のひとりのような気がしてくるから不思議。シリーズを全部読み終えた後は、学生時代の恋人を思い出すときと似た感情に襲われた。


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