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世界の中心で何を叫ぶ?

毎日大量の英語を頭に詰め込みながら1週間は過ぎていく。9時から16時までみっちり授業を受け、終わるとホームステイ先に帰り、ご飯を食べさせてもらって、宿題を片付ける。その繰り返し。放課後に友達と出掛けたり、ご飯要りません、の時は、ホストマザーにテキスト(ショートメール)を打つ。奥さんに連絡するサラリーマンのようである。でも帰ってこないと心配しちゃうからね。

ステイ先のご飯はだいたいインドカレーがベースになっていることが多い。インディアンイングリッシュのおうちだから当然なのだが、たいていわたしの苦手なパクチーの香りがした。それでも味は美味しかった。お米もあるしね。ちなみにわたしはお米がなくてもそこまで困るタイプではない。よく、海外に行くと、お米が恋しい、日本食が恋しい、という人たちがたくさんいるけれど、わたしはなければないでいいや、とパンをかじって生きていけるタイプだ。それでも帰国する前に最終的に一番恋しくなったのは納豆ご飯だったけど笑

インドカレーばかりではなくピザが出たりすることもあったし、量も不足なく、食事に文句はなかった。でもわたしはだんだんとステイ先で食事を取らなくなっていった。学校が終わってすぐに帰宅して、それなりに気を使いながらステイ先の自室で宿題をやる毎日はあまり楽しくはなかった。かといって友達とご飯でも行くかというと、それはそれで宿題の時間がなくなるし、そこまで毎日は出歩けない。

語学学校では、毎日のように、放課後のアクティビティというのを用意してくれていて、月曜日はシアターに行く、火曜日はみんなでレストランへ、水曜日は学校のラウンジでお茶会、とか、どこへ行ったら良いのか、どこでコミュニケーションを取ったら良いのかわからない留学生にとってはありがたいものが揃っていた。その日の午後あたりに希望者を募って、外へ行く場合には先生が一人ついていってくれたり。わたしはあまりそのアクティビティも利用しなかったけれど。参加するにはもちろんその都度費用もかかるからね。

そんなわたしが放課後どんな日々を送っていたか。学校が終わるとエンバンクメントからピカデリーサーカスの方へ歩いていく。どのみちそこらへんで地下鉄を乗り継ぐから、遠回りではない。少し道を外れて寄り道するのはスターバックスだ。ロンドンには至るところにスタバがあって、スタバに困ることはなかった。わたしは日本でもほとんどスタバは利用しなかったからスタバに困ることはやっぱりなかったけれど、海外ではなんて素晴らしいところだろうか、と思ったものである。フリーWi-Fiは快適だし、店員さんはフレンドリーだし、誰にも邪魔されずに落ち着いて宿題ができる。スターバックスありがとう!

こう書いてみると、宿題ができてよかった、宿題のために、宿題が、とどうもわたしらしくない。宿題なんてこの世に要らない3大ユウウツthingsじゃないか。本来なら、学校なんて大嫌いだし、宿題なんて出されてもやらないよ、そういう人物だったはずなのに。それでも絶対に宿題をやることはその時のわたしにとって最重要となっていた。留学早々、日本人の大いなる誤算、海外に行けば英語は喋れるようになる、という幻想に気づいたからだった。

海外留学、語学学校、宿題、そのどれもがすべて強制力を持たない。つまり、自分が選んでしていること。しかもやらなくても誰にも咎められやしない。英語喋れるようにしてくれるって言ったじゃん!と世界の中心でグチを叫んでも、なれないもんはなれないんである。どんな気持ちで旅立ったかなんて、もはや関係なかった。この半年という限りある期間で、何も掴めない、大して英語も上達しないでは、帰国のしようがないではないか。だからわたしは今日もスタバに行く。そんな毎日になっていった。続く。

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