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図書館員 桜井由利子が紹介する原爆関係の本

私は20年、子どもの本にかかわる仕事をしてきた。そこで原爆関係の本を児童書から紹介することにする。
実は児童書には、大人も知らないことが載っていてけっこう読みごたえのあるものがある。大人には大人向けの本がいいと思われがちだが、専門的過ぎて歯がたたないこともある。子どもにもわかるようにきちんと伝えてくれる児童書は優れモノだと思う。

『絵で読む 広島の原爆』
那須正幹/文 西村繁男/絵 福音館書店

広島の原爆の本で絶対にはずせないのがこの本だ。
1945年8月6日、広島に原子爆弾が投下された。
人々の証言をもとに戦前、戦後の広島の街を絵で再現。原爆の全体像を歴史的、科学的にわかりやすく伝えている。


『ぼくは満員電車で原爆を浴びた 11歳の少年が生きぬいたヒロシマ』
米澤鐡志/語り 由井りょう子/文 小学館

11歳の米澤鐡志さんは、爆心から750メートルの電車内で母親と一緒に被爆した。米澤さんはどのようにして生きのび、何を見たのだろうか。
「苦しい記憶」だが、多くの人に読んでもらいたいという思いで作られた本である。


『平和のバトン 広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶』
弓狩匡純/著 広島平和記念資料館/協力 くもん出版

2007年にスタートした『次世代と描く原爆の絵』プロジェクト。これは、広島の美術を学ぶ高校生が被爆者の体験談を聞いて細部まで再現して絵に描くというものだ。記憶を語る方のつらさとそれを受けとめる高校生。「原爆の悲惨さを伝え残さなければ」と、「平和のバトン」が手渡されている。


『パンプキン! 模擬原爆の夏』
令丈ヒロ子/作 宮尾和孝/絵 講談社

ヒロカは知らなかったし関心もなかったが、家の近くに「模擬原子爆弾投下跡地」の碑がある。いとこのたくみが興味を持って調べはじめた。いつの間にかまきこまれるヒロカ。ふたりは次第に史実を解き明かしていく。


『ふたりのイーダ』
松谷みよ子/作 司修/絵 講談社

私事で恐縮だが、1969年に出版されたこの本は、私の思い出の一冊である。結構厚い本だが、小学3年生の時担任の先生が毎日少しずつ読んでくださった。50年ほど前のことになる。
「イナイ、イナイ、ドコニモ…イナイ…。」コトリ、コトリと歩きまわる小さな木の椅子の姿は今も記憶に鮮やかだ。
そして原爆の悲劇は私の心に刻まれた。私が子どもの本にかかわる仕事に携わり、『父と暮せば』を上演したいと思ったその原点は、この本にあるのかもしれない。

他に『少年口伝隊一九四五』(井上ひさし/著 ヒラノトシユキ/絵 講談社)もある。

ここに紹介した本は、みなさんのお近くの図書館にもあるものが多いと思う。これを機会に手に取っていただけるとうれしい。

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芝居屋ゆいまの「読み語り『父と暮せば』」京都公演
2024年4月6日(土)17:00~ /4月7日(日)14:00~
会 場:法光寺(京都市上京区中長者町通西洞院西入中橋詰町172)
定 員:各回40名(お申し込みが必要です)
料 金:1000円  中高生500円(全席自由)
    当日受付にてお支払い(現金のみ)
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