【感想・要約】オーガニゼーショナル・カウンセリング序説/渡辺三枝子
見出し画像

【感想・要約】オーガニゼーショナル・カウンセリング序説/渡辺三枝子

松本 大和(やまと)

Ⅰ.感想

1.挑戦する個人を生むためには

最近、私の会社ではDEIの推進をしようとしている。その中の1つであるEquityでは、「挑戦する個人」を支援するための取り組みに力を入れようとしており、私自身その方向性には深く共感するものがある。

しかし、組織内には「挑戦したいことがある人」と「挑戦したいことが分からない人」が必ずいる訳で、前者にばかりスポットライトが当たる言い回しに違和感を感じる。
後者の「挑戦したいことが分からない人」を置き去りにした状態は、本当にEquity(機会が公平に与えられている)なんだろうか?多様性を包括した魅力ある強くてイノベーションが起こせる組織が本当に作れるのだろうか?

私自身がかつて「挑戦したいことが分からない人」であったため、問題意識を強く感じている。そういった人は、「挑戦する個人を大事にします!」と言われても、正直引いてしまうし、せっかくのDEIという素晴らしい取り組みも「自分には関係のない話だ」と思ってしまうだろう。

そんなモヤモヤを抱えていたが、今回の書籍を通じて、「オーガニゼーショナル・カウンセリング」がその問題に対して果たせる役割はとても大きいと感じた。「これが自分の求めていた解決策だ!」と感じた。

オーガニゼーショナル・カウンセリングの役割には様々なものがあるが、私がこの問題意識について注目した役割は2つある。

①キャリア自律の機会を提供すること

個人のキャリアデザインを通じて「自分は何者で何がしたいのか?」が明確になれば、従業員の姿勢に主体性が生まれ、志や信念を持って働くことができ、結果「挑戦したい個人」を創造することができる

多様な特性を持つ「挑戦したい個人」が沢山生まれて多様なニーズが生まれれば、それらの挑戦を阻害する障壁が明らかになってくるだろう。それらをクリアにすることが真のEquityの実現と言えるのではないかと私は考える。

②多様なニーズを持つ個人の支援と組織への働きかけ

そんな障壁の打破にもカウンセラーは役に立てるのだから面白い。
カウンセラーは、一人ひとりに関与するだけでなく、その個人が成長し、会社に最大限貢献できるような施策・取り組みを作るように会社に働きかける役割もあるからだ。

「挑戦する個人」を創出し、そして彼らが最大限の自己実現と成長を遂げ、その結果として組織が発展する
そんな魅力ある一見理想主義的に思われる信念の実現に貢献できるカウンセラーは、とてもやりがいがある仕事だと私は思う。

やっぱり、八木仁平さんの自己理解プログラムを受けた結果、この分野に飛び込むことを決意したことは間違っていない。すごくワクワクする。

2.「キャリア支援なんて要らない!」にどう切り返す?

いまの会社には個人のキャリア支援にそこまで力を入れようとしている感じはしない。取り入れて貰おうと思えば、経営者層に理解をしてもらう必要があるが、否定的な反応もあるだろう。

本書では、そのときに活用出来るいくつかの視点を提示してくれている。
もしかすると今後役に立つかもしれない。

①雇用の流動化が進んだ現在、組織の流れに乗っていけば大丈夫という時代ではなくなった。不透明感の中では、ある段階で自己の歩むべき道の再吟味・再構築の必要性が増している。
②経営者層は確かに自分の道を自分で切り拓いてきたかもしれないが、一般の人は必ずしもそうではない。自分の将来の方向について悩んでいる人は多い。
③変化の激しい現在では、将来への不透明感がより高まっている。先が見えないからこそ、典型的な方法に基づき、地図を描いてみることが必要。
④会社が個人のキャリア形成支援をポジティブな意味で制度化していることは、社員にとって大切なメッセージとなる
⑤自分のキャリアを考えることを通じて、自分の役割を認識し、組織へのコミットメントが高まる可能性は高い
⑥将来に対する地図を描くことができた社員には活力が湧いてくる可能性が高い

3.自分を偉人だと思い込む

今度人事にキャリアカウンセラーを設けないかどうか提案しようと思うが、反発を受けるかもしれない。
でも自分を「偉人」だと思い込み、勇気を持って行動したいと思う。

革新者や社会改革者の人生は厳しいものである。たとえ社会が、彼らの持続的な努力によって徐々に良くなったとしても、彼らは嘲笑、非難、迫害の対象になることが多い。

Ⅱ.要約

1.カウンセリングとは?

(1)カウンセリングの人間観と目標

◎人間観
人格の非譲渡性
・一人ひとりは皆異なる存在であり、誰もその人には成り代われない
人格の尊厳、個人尊重
・人は本質的には自分の行動に責任を持つ存在
・自分で決定する自由と同時にその責任をとる存在
▼個人が持つ両面性
・個人は個であると同時に、社会の構成員という両面性を持つ

だから、カウンセラーは、

・クライアントをコントロールすることはできない。できるのはクライアントを主体とした「援助」。
・個にのみアプローチするのではなく、組織の発展や変革にも寄与する必要がある

◎目標
①クライアントが問題を解決していくのに必要な知識・態度・力を習得する
・問題解決に必要な行動が取れるようになり、以前より主体的に生きていける様にする

②社会人としての成熟を促す
・社会(組織)の中でその人が最高に機能できる自発的で独立した存在になること、個人の自己実現を目指す

(2)コーチング・メンタリングとの違い

◎究極的な共通の目的
・働く人のキャリア発達とウェルビーイング

But 具体的な活動目標が異なる

◎活動目標
コーチング
・従業員のパフォーマンスを改善すること
メンタリング
・従業員を組織に適応させ、組織の目指す方向性に向かわせること
→ 個人の所属する組織や従事する仕事上で成功し向上することを通して、キャリア発達を支援する

カウンセリング
・従業員個人が自己洞察を深め、新たな行動を取れるようになること
→ 個人が仕事や職業生活上の課題を自分で解決するのに必要な能力や態度を獲得する。その結果、組織に貢献でき、キャリア発達を促進する。

(3)高まるカウンセラーの役割

①雇用環境の変化(雇用のニューディール)
◎企業ニーズ
・雇用の流動性を高めたいものの、人材は惹きつけ、繋ぎ止め続けたい
=「長期の雇用保障」から「キャリア開発の機会保証」への変化
◎個人ニーズ
・雇用への不安が増大
・報酬よりも働きがい・生きがいを求めるようになった
・正解のないキャリアについて思い悩む様になった

②メンタルヘルス問題
・ストレスを抱える労働者、メンタルヘルスの悪化

⇒ 個人のためのキャリア形成、メンタルヘルス問題への予防を含めた対処への役割がカウンセラーに求められている

2.オーガニゼーショナル・カウンセリングとは?

(1)個人と組織は切っても切れない

・個人は両面性を持った存在
→ 個人にも組織にもアプローチし、両者に寄与する必要がある

「組織内に生きる個人」と「個人の生きる環境としての組織」との相互依存関係に焦点をあて、個人と組織の双方の活性化を目指したカウンセリング

(2)オーガニゼーショナル・カウンセリングの統合モデル

・縦軸:「機能(効果)」
= 経営戦略、人材育成、適応支援のうち、どの効果が得られる施策か
・横軸:機能(効果)別の「対象者」
= 組織と個人どちらに重点を置く施策か

画像1

※上の図:統合モデル
 下の図:統合モデルを活用した具体例
※どちらの図も本書より引用

画像2

(3)社内か社外か

◎社外
○:中立性が保たれやすい、他の企業事例に精通している
△:企業特有の事情、リアルタイムの情報に疎く、問題解決策や対応策に結びつきづらい

◎社内
○:組織内部の事情、構造を熟知しており、問題解決策や対応策に結びつけられる=「社内カウンセラーの意義
△:クライアントが自身の評価に影響があるのではないかという疑念を抱きやすく中立性が見劣りする

※どちらが優れているかではなく、カウンセリングの目的に応じて、両者の意味ある機能分担と連携が重要

3.多様性とカウンセラー

(1)なぜ多様性が必要か?

①多様性の推進とは?
・お互いに差を認め合い、両者にとってより良い環境を目指す取り組み

②どんな効果があるのか?
A. 多様な価値観や特性を兼ね備えた人材が社内で活躍することで、事業の成長や社内の活性化に繋がる

~理由~
・多様な人材(価値観、特性)は「アイデアの宝庫」→イノベーション
・新たなコミュニティのニーズにより深い理解をもてるため、顧客との意思疎通がよりよく図れる
・従業員にとってより生産的かつ充実感を与える職場となり、魅力的で永続的な勤労意欲をそそる
→ 人員募集、従業員訓練などに関わるコストの節約に加え、従業員の熟練度の蓄積が可能になる

(2)土台の人間観が同じ

・どちらも「人間尊重」に基づく考え方
= 人は一人ひとりが異なる存在でり、他の人が成り代わることはできない
⇒ カウンセラーは、職場に集う人々の多様性を尊重する環境を整え、個人と組織の活性化に貢献できる

<番外>用語解説

■雇用のニューディール
・長期雇用を前提とした古い雇用の考え方(オールドディール)から転換した、正社員に拘らない有期雇用契約社員や人材派遣契約社員の活用、職能給や職能評価などの人事制度などの新しい雇用や契約の考え方
⇒ 終身雇用に拘らなくなり、成果主義的な人事制度の導入も行われた
⇒ 企業は雇用そのものを流動的にするようになった

■人材ポートフォリオ・マネジメント
・事業運営上必要な職務を、今後の事業戦略と報酬コストを考慮しながら分類し、適切な雇用形態、報酬体系、評価・育成、調達手段まで設計する考え方
・縦軸を仕事で使われる知識の性質、横軸を仕事の結果創出される価値の資質として、マトリクスのそれぞれの領域に対応する仕事タイプと人材タイプを検討し、制度設計、人材調達に活かす

画像3


■THP (Total Health promotion Plan)
・1987年に示された「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」
・こころとからだのトータルな健康作りを目指す
・健康測定の結果に基づき、メンタルヘルスケアが必要とされた場合または問診の際に労働者自身が希望する場合には、心理相談担当者が産業医の指示のもとにメンタルヘルスケアを行う。
この場合のメンタルヘルスケアは、積極的な健康作りを目指す人を対象にしたもので、ストレスに対する気づきへの援助、リラクゼーションなどの指導等を指す。

■EAP (Employee Assistance Program)
従業員支援プログラム
・個人的な問題により生産性が低下した社員に対して、その問題解決を援助する
・扱う問題には、心身の健康問題のみならず、家族の問題やコミュニケーションの問題なども含まれる

■CDP (Career Development Program)
キャリアデベロップメント・プログラム
・個人のキャリア形成を支援するプログラム

■カッツ曲線
・職務遂行上で必要とされる能力をテクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルに分類し、それぞれのスキルは経営階層(一般職能、管理職能、経営職能)に応じて必要とされる度合いが異なることを示した曲線
テクニカルスキル:業務遂行上のスキル
ヒューマンスキル:人との折衝、調整、対人理解などの対人関係能力
コンセプチュアルスキル:概念化能力。問題発見・解決能力。

画像4

※本書より引用

■プロセスコンサルテーション
・シャインが生み出した組織開発のコンサルテーション(経営学的視点に立った組織開発や組織に対する専門的な支援)
・シャインの定義=個人、集団、組織および地域社会を援助するプロセスに関する哲学および態度
・他人に出来るのは、人間システムが自らを助けようとするのを支援することだけだという仮定に基づいている
⇒ クライアントを自分で考えることができる人間にするプロセスに支援者が同行するやり方を重視している
(「こうやれ!」という介入をクライアントにしてしまうと、自分の代わりに他人に考えて貰うという依存的な人間を育ててしまう)


閲覧頂いた方、どうもありがとうございます。
書籍の購入をご検討されている方はこちらからどうぞ。

https://amzn.to/3vX5nEQ

次回は、オーガニゼーショナル・カウンセリングの統合モデルのうち、「人材育成×組織」の1つである「リーダーシップ」の開発のための学習をするために、「リーダーシップに出会う瞬間/有冬典子」を読んでみたいと思います!

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
松本 大和(やまと)
適応障害でどん底を味わった経理マン。 休職を経験した後、復職をして経理をしつつ、個人と組織に寄与するキャリアカウンセラー・コーチを目指して活動中。 キャリア転換を目指す1人の挑戦者として気付いた、キャリアや組織開発、働き方などに関する情報を中心に発信。 休職談も発信していきます。