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USCPA / 米国公認会計士 の 資格がもたらすキャリア・インパクト

 USCPA / 米国公認会計士を受験する人も興味関心を持っている人も増えているようです。

 僕も USCPAは、2020年に全科目に合格していることもあり、知り合いなどから、以下の様な質問を受けることがあります:

「USCPAを取得したほうがいいですか?」

「USCPAを取得するとどんなメリットがありますか?」

「USCPAを取るにはどの程度の労力がかかりますか?」


今回の記事は、そのような方の疑問に答えられる内容になっています。

書いてる人

 アクセンチュアで8年働いた人です。ITコンサルからキャリアをはじめ、最後はファイナンス系の仕事をしながらUSCPAを取得しました。USCPAを取得したあと、事業会社~コンサル~FASなどの転職活動を経験しました。

(最近特に読まれている記事は: アクセンチュアで入社半年で昇格した事例を整理してみた

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 また、BIG4監査法人、PEファンド、外資FP&A、経理 などの知り合いも多数いるため、USCPAを取得した場合の、キャリアの広がりを確認することができる内容になっているのではと思っています。

記事の構成

 記事は以下の構成になっております。

1.USCPA 取得のためのコスト

2.USCPA を取得した場合のメリット

3.総論(まとめ)

 まず、USCPA 取得のためのコストを確認します(取得することを検討している方も読んでくれてると思うため)。

 次に USCPA を取得した場合のメリットを確認します。

 最後に、確認した、コストとメリットを踏まえながら、どのような人がUSCPAを取得するべきかや、USCPAを取る場合のコスト・メリットを総論としてまとめています。

USCPA取得のためのコスト

 最初に、まずUSCPAを取得するに係るコスト(工数的な労力と費用)の確認をします。

勉強時間(工数)
-1日の勉強時間3時間x700日(約2年)程度=2100時間

費用:
-受験費用: 3万円×4科目= 12万円(落ちるとその分、さらに増える)
-アビタス受講: 約60万円
-その他も含めて合計80万円程度

 選ぶ学校や、人により多少異なるでしょうが、概ねこのくらいの工数や費用感となることは違和感ないでしょう。

 抑えておくべきなのは、仕事が忙しくなったりして勉強時間を確保することができないと、一度勉強から離れてしまい勉強した内容を忘れてしまうということが往々にしてあることです。これは、高学歴の受験を経験してる人や英語をできる人でも同様です。

 学歴が高かろうが、最終的には「継続的に机に向かう時間」をどこまで捻出できるかが大事になります。また、1科目目の合格時点から、1年半以内に全科目を合格しないとその科目の合格が無効になるので、やはり、毎日3時間くらいは机に向かう生活になると考えておいて相違ないと思います。

 ここまでで、USCPAの取得にかかる勉強時間 と 費用を見てきました。

 これらの「コスト」を踏まえた上で、次は、USCPA米国公認会計士を取得する「メリット」を見ていきます。

USCPAを取得した場合のメリット

 次に取得した場合のメリットを見ていきます。

 USCPAを取得することで得られるメリットは、大きく分けて、

①「キャリアの選択肢が広がる」
②「視野・知識が広がる」

の2つだと思っています。

「キャリアの選択肢が広がる」とは、もともとはファイナンスに関わらない営業職だったが、USCPAを取得することで経理、財務、FP&A(管理会計)や監査法人にいけるなどです。

「知識が増える・視座が上がる」 は、勉強することで得られる知識がもたらすメリットで、今の仕事に役に立つ、視座が高くなるなどです。

それでは、具体的にそれぞれを見ていきましょう。

キャリアの選択肢が広がる

USCPAを取得することでキャリアが広がるパターンは以下などがあるかと思います。

「ファイナンス / 会計職へ行けるようになる」

「監査法人 / FASへ行けるようになる」

「事業会社 / 経理(事業管理寄り)に行けるようになる」

「外資や大手企業からの評価が総じて高くなる」

監査法人 / FASへ行けるようになる

 話していると、USCPAを受ける人の一定程度は、監査法人やFASなどに行きたい人がいる気がします(全体の1~2割?)。

僕の経験から言うと、これは可能になると思います。

 僕自身の経験でも、取得してからBIG4クラスのFASのポジションの紹介が頻繁に来るようになりましたし、実際に受けてみてFASの内定ももらえましたが、USCPAを取得していることが、やはり評価されたように思います。

また、監査法人に関しては、取得以降からスカウトが来るようになりました。知人・友人の話を聞いても同様のようです。

 僕の知り合いでも、法人営業を3年やりながらUSCPAを取得してBIG4監査法人に転職し監査業務を行っている人もいます。

 また、昔は、監査法人は、JCPAに比べて、USCPAは立場が弱かったところがあると聞いていますが、今は一定程度がUSCPA取得者で監査法人にもいますし、その意味では法人内のプレゼンスも高まっていると聞きます。

(監査関連ドキュメントのサインだけJCPAでないとできないので、パートナーにはなれないようなのでそこまで狙うならJCPAを最初から取るか、取り直すなどを検討しても良いかもしれません)

事業会社 / 経理(事業管理寄り)や管理会計(FP&A)に行けるようになる

USCPAを取得すれば、経理職や管理会計、財務部門などへキャリアをシフト可能性も開けてきます

 僕自身でいえば、事業会社の経理ポジションもスカウトが来ましたし、実際内定も取れました。

 僕は仕訳自体は切ったことがないため、経理経験でいえばまったくの未経験でしたが、キャッチアップが早いことの証明と、その会社は英語を使う業務だったこととなどが理由にあったと思います。

 また、新卒の就職活動で失敗してしまい、新卒入社した会社で営業事務として3年間仕事をしながらUSCPAを取得し、大手外資のFP&Aに転職した方も知っています。

 ただ、キャリアを変えるのであれば、20代~30代前半のほうが良いと思います。

 というのは、意外と日本は「学歴主義」よりも「実務主義」のところがあります。実務経験がなければ20代、関連実務経験があれば30代前半までならキャリア・シフトが可能というのが一般的だからです。

 僕の経理を受かった事例でいえば、経理自体はやったことはないけれども、管理会計なら経験はあったなどがありますが、30代であればこうした関連経験は必要になると思います。

 また、USCPAを取得していると言っても、転職先の業務が未経験の場合は即戦力ではないので、年収やポジション UPはそこまで期待せずにファイナンスや監査のキャリアトラックに乗れるという感覚が正しい期待値だと思います。
(他の加点要素や応用が効く経験があったり、現年収が低くて大手に行けるなどの場合はこの限りではありません)

外資や大手企業からの評価が総じて高くなる

 また最近は特にそうですが、大手企業であればわりと知られている資格ですので、持っていることで総じて評価が高くなる印象があります。

 USCPAを取得したときに、最終面接でいくつかの大手企業の取締役の方々と話しても感じましたが、こうした資格を持っていることで「間違いのない人材だ」 といった印象は持たれるようなると思います。

 また、グローバルでも知られている資格でもあるので、外資なら更に印象が良くなるでしょう。上述した、「日本は意外と学歴主義ではない」 の裏返しですが、逆に米国や欧州などの外資は資格を重んじる傾向があるので、その意味で採用にも決定権をもつ外国人の印象を上る効果はあるでしょう。

 後でも詳述しますが、既に見てきたこれらの 「キャリアの幅を広げる」 の効果は、全科目合格しなくても、科目合格でも可能になります。2科目合格しているだけでも、監査法人を受けられるようになるので、この点も知っておいてよいでしょう。

知識が増える・視座が上がる

 知識でいえば、特にファイナンスや監査、人によってはITの知識が身につくと思います。

 「浅く広く教養を身につける」 的な内容なので、基礎的な知識にはなりますが、それでもこの分野の勉強が未経験の方であれば、経理、外部・内部監査人、投資家、経営者の視野を養うという意味で非常に役に立つと思います。

 例えば、既に経理担当として実務経験を積まれている方であっても、そもそも論としての会社のガバナンス論について知ることや、営業~製造など様々な部署の視点からどう利益を見るのかといったファイナンス論などを学べることは、自分の視野を広げ、視座を高めるまたとない機会でしょう。

 既にコンサルタントとして働いている方の場合でも、目の前のクライアントの説得の仕事に追われ、理論的な側面のインプットができていないという話もよく聞きます。

 そのような場合は、資格を取ることを目標にしてしまって勉強を強制的に頑張るようにするのも一つの方法です。USCPAで学ぶ内容は、会計・財務・IT・法律など、どの分野のコンサルティングに携わっていようと比較的使えるものですし、体系立てられた理論をパッケージ的に一挙に学べる機会は、MBAを除いて他ではあまり無いかと思います。

総論

 今まで、USCPAを取得するためのコストと取得した場合のメリットを見てきました。

 総論としては、以下のようなことが言えるのではないかと思っています。

それは、

USCPAは転職ありきの資格である

ということです。


 そもそも、日本における資格の位置付け全般的にそうですが、その仕事に直結する資格(特に金融など)を除いて、資格を取ったからといって昇給できる、昇格できる といったことはほとんどありません。

 ましてや、海外の国家資格を昇給・昇格の要件にいれている会社などはほぼ無いと考えて良いですし、外資でも入社前はともかくも、入社してしまえば相手の仕事ぶりはわかっていますのでUSCPAを取ったからと言って


「君はUSCPAを取ったんだね。じゃあ、日々の仕事ぶりに関係なく昇給・昇格だ!!!」

とはならないのは想像に難くないと思います。


つまり、大きく分けて、

① 「既に自分が乗りたいキャリア・トラックに乗れている人」 と

② 「ファイナンス系の職種や監査法人に大きくキャリアを振りたい人」 で言えば、


② の「ファイナンス系の職種や監査法人に大きくキャリアを振りたい人」場合であれば、USCPAは、特にメリットをもたらしてくれると考えています。

 逆にいえば、①「既に自分が乗りたいキャリア・トラックに乗れてい」て、かつ、転職を考えてもいない人 の場合は、約2,000時間の捻出をしてまで取るまではないかもしれないというのが僕の意見です

というのは、今まで見てきた「コスト」は、直接的なコストの話で、ここには「機会費用」という概念がありません。

 すべての物事は 「コチラを取ればアチラは取れず」 という、トレードオフ理論と機会費用の理論が当てはまりますので、もし約2,000時間の時間を投下するのであれば、社内で難しい仕事を任されるなどでお金をもらいながらスキルアップするほうが、合理的なのかもしれません。

 例えば、既に年収が500万円の人であれば、残業代は3,125円※になり、これを2000時間にかけると、約600万円になります。アビタスやTACなどのスクール費用や受験費用などを含めると大体100万円近くになりますので、機会費用ベースで言えば700万円近くの投資になります

(※   500万円 ÷ 2000時間 × 残業代として1.25倍 = 3,125円)

 ①の既にファイナンスのキャリアトラックに乗っている人であれば、700万円という機会費用と、最終的に得られる「視野・知識が広がる」ということを目的と捉えるのであれば、ファイナンスの専門書を読みながら目の前の仕事に打ち込んだほうがコスパは良いでしょう。

 ちなみにこれはでは様々な事例や参考情報を得て最終的な判断を下す、既にせっかく勉強している方に対して水を指すために言っているわけではありません。ビジネスという姿勢は正しいことだと思っているからです。

 同僚が残業をいとわずお金をもらいながら社内評価を上げる中で、昇給・昇格に直接的にはプラスに働かない資格にどこまで時間を投下するかというのは、一度は考えておいてもよいということを言っているだけです

 そういう意味では、今からファイナンスにキャリアを振りたい人であれば、科目合格をしてしまった時点からでも、受けれる会社は一気に増えるので、科目合格したタイミングで転職活動をして行きたい会社に入社できれば、勉強を辞めて本業に打ち込むのが最もROI(リターンと投資の比率)が高いかもしれません。
(勉強する時間が減れば機会費用は減るという理屈です。まあ、こんなことを言いながら僕は普通に全科目合格してから転職活動をしましたが。。笑)

 以上、色々書いてきましたが、USCPAがもたらすキャリア・インパクトとしての、特にキャリアの幅を広げる効果を、実際の事例を基に書いてきました。

皆様の参考になれば幸いです。



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