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初めての資金調達。スタートアップのファイナンスにおける株式比率や投資契約での注意点は?

自己紹介

こんにちは、森です。FABRIC TOKYOというアパレルD2CブランドでCEOを務めており、日々Twitter(@yuichiroM)や音声メディアstand.fmではD2Cブランドの情報やスタートアップの起業や経営について発信しています。よろしければフォローをお願いします!
noteでは主に質問箱でいただいた質問に答えていきます。質問やレター募集していますのでお気軽に投稿してください!

しばし雑談

先日Uber Eatsで蕎麦を注文したら、「食後にぜひ召し上がってください」と書かれた手紙と森永のミルクキャラメルが入っていて、非常にあたたかい気持ちになりました。
こういうのが入っていると、ついついTwitterで投稿してしまいます。
このような一手間かけるだけで顧客をあたたかい気持ちにして、さらにSNSでの投稿を促せるのは素晴らしいです。やらない手はないと思っています。
Uber Eatsはよく利用しますが、普段はTwitterにわざわざ投稿しないですからね。
非常に簡単にできる施策なのかなと思い、参考になりました。

本日も質問に答えていきます。

質問「株式会社を立ち上げて半年、始めて出資を受け入れる際の株式比率や契約で気をつけておいたほうがいいことなどありましたら、教えていただけますと幸いです。」

質問全文「株式会社を立ち上げて半年、四国の小さなスタートアップにも資金調達の機会をいただける運びとなりそうです。始めて出資を受け入れる際の株式比率や契約で気をつけておいたほうがいいことなどありましたら、教えていただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。」

といった質問です。ありがとうございます。

四国のスタートアップなのですね!(ぼく4年間香川県高松市に住んでいましたし四国大好きです!)

四国のスタートアップはめちゃくちゃ珍しいというか、四国にはそもそもスタートアップの数が多くないですし、出資する会社もそれほど多くないと思うのですが、その分経験者が周りに少ないので、気をつけないといけないことはたくさんあると思います。

普通株式なのか?優先株式なのか?

まず、株には大きく分けて普通株式と優先株式(正式名:種類株式)があります。
主に会社の創業者(ファウンダー)が持っているというのは普通株です。

出資を受ける際に、普通株か優先株か選ぶのですが、ベンチャー企業に出資するベンチャーキャピタルなどを例にあげますと、ベンチャーキャピタルというのは基本的に優先株で出資をするというのが条件になっています。これは出資者側にメリットがあるためです。当然起業家側にもメリットがあるのですが、優先株の条項は非常に複雑なので、気をつけないといけないポイントだけ簡単にお話ししておきます。

投資契約の際に気をつけるポイント

今回の質問者さんはシードだと思いますが、シードに限らずどのステージにおいても気をつけるべきポイントがあります。

上記は最近ではほとんどが「投資契約書」ではなく、同時に締結する「株主間契約書」の中に盛り込まれています。

ほとんどのスタートアップにとっては、プット・オプションやラチェットというものは基本的にはつけない方がいいので、ベンチャーキャピタルから提示された契約書雛形に入っていたら、削除のお願いをしましょう。
プット・オプションは強制的に買い取りをしなくてはいけない義務を負うような条項なのですが、コール・オプション、プット・オプション、ラチェット、フルラチェット、IPOラチェットという、よくある優先株の条項なのですが、シードは特に入れない方が良いです。シード以降もシリーズAやシリーズBでもこの辺りは全て入れない方がいいと思いますので、積極的にここは交渉し、出来るだけ削る方がいいと思います。

細かくいうともっとあるのですが、インターネット上にたくさんの情報が出ているので、ぐぐってみてください。

株主間契約書の主な内訳と対応

株主間契約書の主な内訳と対応
・事前通知 / 事前承諾事項    → できる限り対象事項を減らす
・役員等派遣、情報開示
     → できる限り対象事項を減らす
・先買権            → 削除依頼
・タグアロング(売却参加権)  → 削除依頼
・ドラッグアロング(強制売却権)→ 削除依頼
・買取請求(プットオプション)  → 削除依頼
・売却請求(コールオプション)
  → 削除依頼
・ラチェット          → 削除依頼
・みなし精算条項(残余財産分配請求権)
 → 1倍・非参加型で交渉

交渉の仕方ですが、一番は当然弁護士とともに交渉していくのが良いですが、起業家も内容を理解した上で「フェアな条件にしたいため削除をお願いしたいです。」で良いと思います。

削除交渉が難航した場合、どうしても飲まなければならないなら、以下の条項は飲んでもいいかもしれません。

ドラッグアロングは削除しないで交渉材料にしてもいいのかも

中でも、よく議論されるのが、ドラッグアロングはどうするのか?というものがあります。
もちろん削除に応じてもらえるなら削除で良いのですが、ドラッグアロングに関してはシリーズA以降だと入ってもいいのかなと個人的には思っています。実態はほとんど有効ではない条項だからです。

簡単にドラッグアロングとは何か説明すると、投資家側が売却先を見つけてきたら、起業家側は会社売却に応じないといけないという投資家側の権利です。この説明だけ聞いたら怖いように感じるのですが、実際M&Aの際の実務では、投資家と買い手(買収しようとしている会社)だけで成り立つというのはありえず、起業家側も大いに介入するということがほとんどです。買い手側が起業家と会わずして、買収を決めるようなパターンは(大手企業同士の買収案件などだったら別ですが)ほとんどスタートアップだとありえないため、実態としては効力を発揮しないということです。スタートアップの買収は、多くの場合経営チームも買うといった側面も強いですしね。

そのため、ドラッグアロングに関しては、入れても実態的にほとんど効力がないと言えますので、できれば削った方がいいのですが、どうしてもという場合はこれだけ残して、交渉に勝つという方がいいのではないかと思っています。

みなし精算条項(残余財産分配)は1倍・非参加型で交渉しよう

みなし精算条項(残余財産分配請求権、優先分配権)というものがあるのですが、こちらは5年くらい前までは1.5倍や2倍といったものが主流だったのですが、最近だと1倍になります。
出資した分、会社がM&Aになったり倒産した際に出資者は出資分のx倍で回収できるかという指標なのですが、昔は1.5倍〜2倍が普通だったのですが、今は基本的に1倍以上にはしないようにしてくださいとなっています。
まずは1倍でここは結んで、しかも「非参加型」にできると最高です。このあたりもより詳しくはググってみてください。
参加型と非参加型というものがあるので、優先分配権も1倍で非参加型の種類株にするというのがいいと思います。

シリーズA手前までは、普通株にできるなら普通株にした方が良いかも。

しかし、そもそもシードの段階で優先株を活用していくのか?というと、僕は活用しなくていいと思っています。できれば普通株でやっていくのがいいと。

なぜかというと、シードの段階で最も大切なのは事業成長です。上記のような交渉に時間を使っていると起業家の時間が勿体ないため、「時間節約のため、シンプルに普通株でやりたい」と交渉してみるのが良いと思います。

普通株にしておく、もう1つのメリットがあります。
シードの時の出資者にいつまで株を持っておいてもらうのかという話で、日本だとあまり事例はないですが、シードやエンジェルラウンドで投資した人たちが、シリーズB以降で株主だけエグジットしてもらうというやり方があります。

例えばシリーズCで新たな事業会社や投資家が出資してくる時に、より出資しやすいというのが、この普通株式をすでに持っているシード段階で投資をしてくださった人たちの普通株を安く買い取ってもらうということが、交渉材料の一つになります。

例えば、シリーズCの新たに入ってくる投資家たちが、シリーズCでバリエーション50億円ほどで、つけられたとしましょう。しかし「50億円だと高い」と言われているのだけれども、普通株だと優先事項が付いてないため半分の25億円ほどの金額で入れるということになると、シードのVCからの買取分の25億円と50億円の加重平均でval40億円ほどで出資できる、というような新規出資者へ割安で投資できるという機会をつくることができます。

シードの出資者たちも、例えばシードの際にval1億円で出資していたのがシリーズCでは25億円になっているため25倍になる、ということで大きなメリットを感じてもらえるわけですね。

起業家サイド的には、優先株で50億円のバリエーションがつけられて、希薄化を抑えられたというロジックに持っていくことができるので、新規出資者、既存株主、起業家の三者がWin-Win-Winになるというスキーム。

ということで、実は一番最初に普通株で出資してもらうというのは、後々のシリーズB以降等で武器(選択肢)が増えてきますので、おすすめです。

シードラウンドの株式放出は10〜15%を目安に

株式放出は多くても1回のラウンドで、10〜15%を限度にしましょう。
なぜかといいますと、シードというのは会社がどうなるかわからない状態で、プロダクトも無いかもしれない、あってもトラクションがまだ出てない状態かもしれないので、ピボットの可能性があります。
ピボットしたらまたシードのやり直しになります。バリエーションも上がらないから、また10%放出する可能性もあります。そうなってくると徐々に希薄化して、その後の資金調達に影響が出てしまいます。
後の資金調達や経営株主の比率に影響が出るので、1番最初は10%ほどに抑えておくのが、良いです。

しかし、もちろん上記は一般論ですし、当然バリエーションによるとも思います。
シードの段階で、いきなりval5億円やval10億円つけられるのであれば、思い切って20%とか放出して、1〜2億円の資金調達をしていくというのもありだと思います。
ただ、多くの場合、シードはval1億からval1億5千万ほどかと思いますので、1,000円や1,500万円で資金調達をするという場合は、10%ぐらいの放出の比率でとどめておくのがいいと思います。

多くのシード起業家の参考になれば幸いです!

このように普段はD2Cのスタートアップのノウハウや起業や経営について発信しております。
みなさんの参考になれば幸いです。
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それではまたお会いしましょう!


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