イベントレポート:新規事業を加速させるのに必要な、ブランド戦略の2つの概念
このnoteは何?
マーケティングエージェンシーFICCのBX事業部にて、「ブランドとはなんなのか? どうすればブランドを豊かにすることができるのか?」それをみなさんと考えるnoteを書いています。記事をまとめたマガジンはこちら→本当の価値を生むブランディング戦略(仮題)
FICC BX事業部がお手伝いしているのは、ざっくり表現すると「ブランドの確立と強化」です。それは既存のブランドに対してもそうですし、新規のブランド、要は新規事業に対してもおなじくサポートを行っています。
先日、新規事業について実事例を交えてディスカッションをする機会がありましたので、そこでお話したナレッジについてご紹介します。
イベントについて
6/16に株式会社マクアケの新規事業創造チーム「Makuake Incubation Studio(MIS)」との合同イベントを行いました。
FICCが持つブランド概念の知見(フレームワーク)とMISがこれまでサポートしてきた新規プロジェクトの経験をかけ合わせて実践的な新規事業支援の形を探る、というのがイベントの狙いです。
第0回となる今回は、2部構成。第一部では、NECで新規事業を担当している中野 裕明さんをゲストにお呼びして、MISサポートのもとMakuakeで実施したプロジェクトが成功した理由と、新規事業が軌道にのりつつある要因をブランド概念と共に考え、第二部でマクアケさんとFICCで行ったVMV策定についてお話しました。
新規事業を成功させるのに必要なものはなにか。もちろんそれは「群を抜いた技術」だったり「群を抜いた熱意」だったりするのですが、そのほかにも重要であると考えている要素が2つあります。それは
▼ベネフィットの設計
▼パーパスの策定
です。
ベネフィットの設計とは
フィーチャーセリングということばを聞いたことがあるでしょうか。要は機能訴求によって広告コミュニケーションなどを展開し、消費者に商品を買ってもらう活動のことです。
わたしたちは、その機能訴求によるコミュニケーションはうまくいかないと考えています。消費者は自身の機能的ニーズに自覚的でなかったり、競合に真似され、同質化してしまったりと、理由はさまざまですが。
ではどうすべきか。ベネフィットの設計によってターゲットの「なりたい自己像」をこの商品でつくることができる・満たせるということを示すことが必要です。
↓ベネフィットについてより詳しく知りたい方はこちら↓
NECチームで行われたベネフィット設計とは?
Makuake上で実施され、目標に対して1006%の応援購入総額を集めたNECの歩行センシングインソール 「A-RROWG」のプロジェクトでも、ベネフィットの設計が行われています。
A-RROWGは、靴に挿入できるインソールによって利用者の歩行の姿勢や状態を感知し、レポートをし、改善に導くというプロダクト。そこに対して「品格を上げる歩行」というキャッチフレーズのもと、ビジネスマンの品格を上げる→品格の高いビジネスマンでいられるというベネフィットをMISとともに設計しました。
「A-RROWG」 実際のプロジェクトページ
当初、プロジェクトのリーダーである中野さんはベネフィットというものへの親しみがなかったとのこと。しかし、MISのサポートによって設計してみたところ、以下のような発見があったそうです。
①購入欲求の強化
欲しいと買うは違う。ベネフィットに転換し、ターゲットがお金を払う体験価値を明確にすることが大事。
②ターゲット外への広がり
一つのベネフィットを提示することで、ターゲット以外の人が独自の解釈をしてくれた。それが事業にとって新しいアイデアになる。実際に、ターゲットではないが購入した人にインタビューしたところ、自発的にベネフィットを解釈して、購入している人がいることが分かった。(ビジネスマンがターゲットだったが、女性や医療関係者からも品格をあげる以外の用途で使いたいという声があった)
パーパスの策定とは
2つめに肝要だと考えているのが、パーパス(ビジョン・ミッション・バリュー)です。パーパスは、かんたんな表現を使うと、自分たちがなぜ存在し、なにを良しとしてなにを成し遂げるのかという存在意義のことです。
この設計がなされていないと、チームのメンバーがそれぞれのやりたいことを見つめてしまい、外の誰と組んでいいかもわからず、誰に対して価値を提供するかがわからないがために事業が迷走してしまいます。
NECの「A-RROWG」プロジェクトでは、Makuakeでのプロジェクトが成功したあとに、パーパスの策定が行われました。
NECチームで行われたパーパス策定の効果とは?
もともと開発チームにはビジョン・ミッションのようなものはあったものの、今回改めて整理を行いました。
それにより「事業メンバーが増えても、チームの中で共通の目標があるから開発が早くなった」「みんなが迷わなくなった」という効果があったとのこと。
さらに事業的には「技術ピックアップが効率的に」「狙うべきマーケットを加味した上で、製品を中心とした生態系の構想案がよりクリアに描けるようになった」ということです。
パーパスの策定においては、ブランドの存在意義を以下の3つにつに分解して整理しておくと便利なのですが、
ビジョン…実現したい世界
ミッション…ビジョン達成の上で担うべき役割
バリュー…ミッション実施の上で重視する価値観や行動指針
ビジョンによって目指す到達地点が明らかになり、ミッションによって自分たちの行う行動が明確になることで、先に述べたNEC開発チームのように
自社チームがよりよい動きをできるようになる
開発速度が上がる
誰と手を組んで事業を広げていくべきかがわかる
という効果が生まれています。
まとめ:新規事業は、ブランドの概念を利用するとはやく成功に近づくことができる
ここまでご紹介したようなブランドの概念、
▼ベネフィット
▼パーパス(ビジョン・ミッション・バリュー)
は、設備投資がかかるものではありませんし、かんたんに負債化するものではありません。
ただそれが逆にいえば、持っている効果を見えづらくし、手で触れられないことで実感を得づらいものにもなっています。
しかし、実際にNECの「A-RROWG」開発チームが実感したような
▼自社チームがよりよい動きをできるようになる
▼開発速度が上がる
▼自ブランドがどのような生態系を築く必要があるかがわかる
という効果が発生し、新規事業開発が自走できるようになっていることがわかります。
皆様も、新規事業のブーストをお考えの際はぜひいちど、ベネフィットとパーパスの策定を検討してみてください。
イベントのアーカイブ動画はこちら
FICC BX事業部では、MIS(Makuake Incubation Studio)チームと共同で新規事業イノベーション支援をご提供しています。お気軽にディスカッションなどお誘いください。
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