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Gallery Gacha

2022年10月1日から16日にかけて、「Gallery Gacha」という展覧会が開催された。この記事はその展覧会の一部始終を写真によって記録したものである。

「Gallery Gacha」とは、会場で生まれるお金によってのみ作品を売買することができる期間限定のギャラリーである。まず、参加者は会場にある素材や画材、もしくは持ち寄ったものを使って何か作品の制作をする。そして、一つの作品が完成するとガチャマネーという紙のお金がギャラリーのオーナーである私から一枚渡される。参加者は出来上がった作品にタイトルと購入するために必要なガチャマネーの枚数である値段などの情報をキャプションに書く。最後に参加者は作品の制作及び販売によって得たガチャマネーで会場にある作品を購入することができるようになる。「Gallery Gacha」は、そんな風にして、法定通貨では売買することができない仕組みの特殊なギャラリーである。

 私はこれまで、現代美術という領域で活動してきたのだが、コマーシャルギャラリーに所属しているわけでもなく、美術館に作品がコレクションされているわけでもない。武蔵野美術大学という場所で美術教育を受けてきたのだが、ある種のヒエラルキー的な美術の制度に対しては疑問を持ってきた。それは、特に資本主義的なギャラリーという制度とアートマーケットという制度についてである。ギャラリーやマーケットのすべてが悪いという訳ではないが、価値の尺度は資本主義的な尺度だけではなく、個人的な尺度での価値基準があってもよいのではないかと思うことがある。そしてまた法外な値段で取引される投機的な作品ではなく、子供も含め誰でも所有することができる作品を扱うことはできないかとも思ってきた。そんな経緯から、資本主義的な価値基準ではなく別のかたちの価値基準のギャラリーをつくろうという構想を考え、このようなギャラリーを企画したのである。

 展覧会場であるモリビという場所は、2年前の2020年に設立されたアートスペースである。最初の立ち上げだけであるが、私も関わらせていただいた個人的に思い入れのある場所でもある。モリビは福岡県北九州市の門司港という小さな街にある。私は2020年に『ガチャむらやⅡ』という作品で門司港にある門司中央市場でパフォーマンスの展示を行った。そのことがきっかけで、門司港には5ヶ月間滞在していた。その際にモリビも共同で立ち上げたのである。門司港には港町ということもあろうか様々な経緯で流れ着いた面白い人々や地元の人々がいる。また、地形的に山と海に囲まれこじんまりしているせいか、人と人との距離が近く、複数のコミュニティが複雑に絡み合い交差している。今回、アートに深く関わっている人々ではない人々にも参加してもらいたいという思いもあり、東京や大都市のアートスペースではなく、あえて門司港のモリビという場所を選択した。

 展覧会では、写真で伝わると良いと思い、作品だけでなく、参加者の制作のプロセスも自分自身で撮影させていただいた。参加者は思い思いにダンボールに入った素材を漁りながら素材と対話しているように私には思えた。そして、作品のアイデアに悩みながら手を動かし、素材がつくりだすかたちを追っていっていた。早い人で数分、長い人で一時間ぐらい制作時間に費やしていた。そうして出来上がった作品は全てで30作品以上あり、売買された回数も7回ほど行われた。来場者もおそらく30名以上は来場してくださった。そうして、作品とともに毎日のように何らかのエピソードが生まれ共有されたのだった。

 今回、展覧会を行うことができたのは、さまざまな協力者のおかげ様である。まずは会場を貸していただき、資金も提供していただいた門司港アートプラットフォームの池上貴弘氏にお礼申し上げたい。また、フライヤーをデザインしていただいたデザイナーの三橋光太郎氏にもお礼申し上げたい。また、本展覧会に参加してくださった方々、来場してくださった方々に深く感謝します。皆様ありがとうございました。
                             中村悠一郎

Gallery Gacha
会期:10月1日(土)~10月16日(日)
開館時間:13:00~18:00
料金:無料
会場:モリビ 〒801-0863 福岡県北九州市門司区栄町5−25 一番太鼓 2F
協力:門司港アートプラットフォーム

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