見出し画像

スイエイニッシ セブン

「今日はとにかく無心で泳ごう」

俺が言う。

「無心?」

部屋を出る準備をしながら俺が聞き返す。

「そう、無心。くだらないこと、ネガティブなことを泳いでる最中に考えない。そういうこと考えながら泳いでるとパワーを奪われるから」

たしかにそうだ。泳いでる間に意識することは、どこの筋肉を動かしているか、どうしたら水の抵抗を極力減らせるか、どれだけ楽に呼吸をするか。それだけ考えていればいい。でもねー。人間だからねー。

今日感じたことは、エンジンがかかるまでに時間がかかるということだ。泳ぎ始めてしばらくは身体が重い? 水に慣れてない? ペースが作れない? 理由は色々考えられるが、とにかくすぐ疲れてしまう。200メートルほど泳いでは休憩、というのがしばらく続く。が、ある時点から急に身体が乗り出す。ずっと泳いでもさほど息切れしなくなる。

最初の休憩まで45分で950メートル。後半は30分で750メートル。後半は一度給水した以外はノンストップだった。ずっと泳ぎ続けていられた。計1700メートル。どのスポーツでも一緒なのだ。ゆっくりペースを作っていく。僕はスポーツマンじゃないからよく分からなかった。でも芝居もそうだよな。考えてみれば。

前回の日記で書いた、ゆっくりと、でもしっかり丁寧に堂々と泳ぐ方が今日もいらした。

マイペースながら自信に満ち溢れ、水や自分の泳ぎを楽しむ様子が見て取れる。また周囲で泳ぐ人への気遣いも感じる。人柄は芝居に表れるなんていうけど、泳ぎにも表れるのだ。どういう人かわかんないけど。ただその方、今日プールを後にする際、出口のあたりでプール全体に向けて一礼をして出ていったのを僕は見てしまった。やっぱりそういうことだよな。どういう人なんだろう。中東の人のように髭をたくわえていらっしゃるのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?