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あしあと〜サヨナラの唄〜

10月13日から16日まで「劇」小劇場で上演された劇団新劇団プロデュース 東京おかわり美女第4回公演『あしあと〜サヨナラの唄』が、30日の配信終了をもって全日程無事に終了。たくさんのご来場、ご声援に感謝いたします。

最年少でも30歳で、ほとんどが80年代生まれ、70年代が少しという比較的中堅層の集まった座組は個人的に珍しく、誰の芝居をみても安心で自分の心配だけしていればいい、かつ周りに気が配れる人ばかりというとてもストレスの少ない座組でした。

公演が終わり、「もっとあぁできたんじゃないか、あぁすべきだったんじゃないか。何をやってたんだ俺は」なんて後悔の渦に巻かれるのはいつものことなれど、今回も色々と渦巻きました。
(3日経てば忘れる)

全ての役に実在のモデルがいる中、僕が演じたのはゴブリン串田氏がモデルになったそれ。劇団時代からもう15年の付き合いになります。苦楽はもちろん、同じ釜の飯やラーメンや豚の餌を共にしてきました。良いとこも良くないとこも自分なりに知っているつもりでしたが、いざやろうとすると自分はゴブさんの何を見てきたんだ? くらい迷子になることもありましたし、何よりゴブさんがこの公演にかける意気込みであったり、サトルさんの家族の物語を上演することに対する迷いなど、普段隠されてる部分を表現せずに隠して表現する、みたいな複雑なものがありました(人間を演じる以上、どの役も複雑なんですが)。

役づくりについて書くと長くなりすぎてしまうし、あまり書くべきでもないので割愛しますが、ゴブさんの(自分が思う)本質の部分だけ残してあとは状況や周囲のすることに反応していようというところに落ち着きました。とは言え「もっとあぁできたんじゃないか」の渦は襲ってきます。なんなら本番期間中にも襲ってきました。もしかして自分はてんで見当違いのことをしているんじゃないか、周りを見ずに一人で芝居をしてしまってるんじゃないかとすら思ってしまう事もありました。が!幸い、そんな時に

(中略)


最後に共演者の皆さまへ感謝も込めて一言ずつ。


平野雄介くん

今回初手合わせの平野くん a.k.a.やーち。真面目。稽古序盤は勇という役を掴むのに苦労していたように見えたけど、掴んでからの安定感はすごかった。
僕は苦労してる人、我慢してきた人が報われる瞬間を見るとものすごく感動してしまう。現実がそんなことばかりじゃない分なおさら。彼の演じる勇が兄である愉から感謝と謝罪の言葉をかけられるシーンは間違いなくこの作品のハイライトであり、キャスト全員がそれを理解した上でそこに向けてシーンを組み立てていった。そして見事にそれに応え、演じ切った。尊敬。途中から胃薬に頼らざるを得ないくらいのプレッシャーだったらしいけども(笑)。影の主役ですよね。
あと、代役をやった時の再現力がすごい。僕なんか代役をやるとそこに自分の余計な味を入れちゃったりするんだけど、彼はきっちり再現する。なんなら超えてくる(笑)。他の人の稽古もちゃんと観てるんですよね。んでそれをアウトプットできるっていう。プロ。

清水智未さん

そういや家族チームはサトルさん以外みんな僕、初手合わせなんですわ。でも実は13年前、劇団時代に僕が主演を務めた公演に制作でお手伝いしてくれたことが判明。縁って繋がるもんだね。
彼女の演じる幸美さんが僕は大好きで。前に出るでも後ろに下がるでもなく無理に明るく振る舞うわけでもなく、ただそこにいる。変わらずそこにいてくれる感じ。義母がふと弱音を漏らすシーンでの彼女の表情を舞台袖から観る度、「認知症は不幸ではない」というこの作品のメッセージが、決して簡単にそこにたどり着けるわけではないことを思い知らされる。本人もここは辛かったって言ってた。
舞台上で絡むことはなかったものの、舞台裏でちょいちょいちょっかい出してきてくれるの嬉しかったです(笑)。

柳瀬崇博くん

ひとりっ子を体現する唯我独尊のやなちゃんこそが今回の座組のキーパーソンだと思う。作品も座組も彼に救われた部分はかなりあったんじゃないかな。彼の演じる衛のあっけらかんとした感じは家族シーンの清涼剤になっていたし、だからこそ彼の慟哭が客席のみならず稽古場でもみんなの涙を誘ったんだと思う。今これ書きながら思い出しても泣けるもん。
素顔は体型通りのキャラを体現してくれるサービス精神の持ち主。いや、地かな。

生粋万鈴さん

僕が15年前にお世話になったハグハグ共和国の看板俳優さん。彼女と共演することを知った関係者から「あの有名ないきまりさんと?」って言われたくらい名の通った方。
座組に対する気配りと愛がすごい。細やか。かつ大らか。他の人がなかなか出来ないことを当たり前のようにする。その辺清水さんと共通するところかも。
そしてそれはそのまま藤井家の嫁という役柄に活きています。ゴブさんも言ってたけど、藤井家の三男夫婦がほんとにかわいい。底抜けの陽性というか明るさが重くなりがちな家族シーンを重くさせずに転がしていってたと思います。
稽古見ながらよく笑ってくれるから、市原はずいぶん励まされました。勝手に。あくまで勝手に。

池上映子さん

この作品の守護神。ゴールキーパー。シジマール。理由は違えど父を亡くしている僕は残された母のことも見てきたわけで、だからこそ池さん演じるやす江の強さ、家族への愛、そこで押し殺してきた自分の意思などいろんなことに思いを馳せながら見させていただきました。
やす江の「お願いだから、どこにも行かんで」という台詞は最初に脚本を読んだ時からとても好きな台詞でした。シンプルな言葉なのに、いろんな意味や思いを想像させます。
亡き夫に語りかけるモノローグは前述の三兄弟のシーンの後に来るとどめの一発のようなシーン。2回目の通し稽古だったかな、そこの台詞中、池さんが涙声になった瞬間があって、僕はそこで嗚咽漏れるくらい泣いてしまった。稽古場であんなになったのは20年やってて初めて。この先もそんなにないと思う。たぶんみんなにはバレてない。サンキューマスク。
楽屋で鏡越しにたくさん絡んでごめんなさい。反省はしていません。

鳥居きららちゃん

ゴブさんのとこでの共演も5回目。なかなか絡む機会がなかったんですが今回ようやく絡みがありました、少し(笑)。今後さらにがっつり絡む企画もあったりなかったりなのでそれに期待しつつ、でもやっぱりすごい安定感。秀才だなと思います。あと視野が広い。舞台上で視線送るとだいたい気づいて見返してくる。そんだけ落ち着いて周りが見えてるのは日頃から彼女がそういう気配りのできる人って証拠なんだと思う。

福田“王子”智行

3年ぶり2度目の共演となった王子。同じ劇団員チームでありながら直接言葉を交わすシーンは少ないものの、今回それとは別のところで甘えに甘えた。甘え倒した。自分の中のぐちゃぐちゃしたものを垂れ流してとりとめもない話を聞いてもらったり、メシに付き合ってもらったり。そして彼の勉強している演技法についての話も聞かせてもらった。普段芝居論なんか交わさないんだけど今回彼とは色々話した。たぶん芝居には反映されてない(笑)。わかんない、されてるかも。されてたらいいな。たくさん盗撮した。

江里奈ちゃん

2年ぶりの共演。本番10日前くらいに出演が決定した。それを聞いた時、空いてる役がまさか彼女になるとは思ってなかったけど、江里奈ちゃんなら大丈夫と安心した。回数で言えばゴブさん演出を一番受けてる役者だと思う。
面白い芝居ができないことを本人悩んでる?みたいだけど、あの我の強さで発することで普通の台詞を普通じゃなくさせるのは強みだと思うよ。あと僕と同じで年齢を重ねる度に深みが増してくタイプだと今回思った。
帰りの電車が一緒のことも多く、今までで一番色々話した。江里奈ちゃんが。ほぼ一方的に。ヨウシャベラハール。

末次祐季くん

出会って10数年。でも共演は3度目にしてがっつり絡むのは今回が初めてのスエちゃん。ノリがゴブさんに似てるし、一緒にいて楽しい。公演中も僕のふざけるのにいつも付き合ってくれた。土曜夜だっけ? 舞台袖でベテラン2人が近年にないくらい緊張を共有した(笑)。
翌週に別の公演を控えていたのもあって、彼なりの稽古ペースというかプランがあったのに僕はそれを汲んであげられなかった。申し訳ない。それでも変に我を通さず、譲るところは譲り、スベるところはスベる。それでも崩れない。とりあえず人前では。そんな彼の優しさと繊細さを僕は愛してる。

渡部新くん

今回初手合わせの役者さん。共通の知人もまぁまぁ多く、おしなべて評価が高い。シャイなのか稽古場でも劇場でも一人でいがち。芸人もやっているそうで、あの切り替え方や表情の作り方は納得のそれ。僕は普段控えめなのに舞台に立つとキレ散らかしたりする人が好きなので彼のことも好き。
そんな彼が「市さん面白い。僕いまハマってるんですよ」って言ってくれたのはすごく嬉しかった。個人的に、年下にウケるとすごく安心する。また一緒になんかやりたい。芋掘りとか。

小春千乃さん

今回初手合わせのゆきのん。ほわーっとしてる。最初に会った時から「あっ、この人独自のペースで生きてる方だ!」って分かった(笑)。でも読み合わせ中、台本の変更になった部分をまだ自己紹介も済んでないのに教えてくれた親切な人。
役づくりの説得力というか、成立のさせ方がすごい。なんでそこでそうする? みたいなことを気付いたら成立させてる技術。あと、竜盛くん演じる愉が言葉に詰まってる時に「…どうしたの?」って寄り添ってくる時の声や表情の温かさ。あんなん彼女だったらべったり甘えてまうわ。反面、ジンくんを勘違いさせる小悪魔っぷりを台本に書かれていないところで表現したりもする。日本にはまだまだ恐ろしい役者がいる。

榮竜盛くん

本作品の主人公。実在のモデルが同じ座組内にいることのしんどさ、背負ったものの重さたるや。僕は今回初めましてで、とても天然と聞いていたのですが、純粋かつ素直な人だと思いました。そこに流れる空気や人の気持ち、自分から湧き出る感情を素直に受け取り、かつ表現できる人。この人に傷つけられた人なんているんだろうか?ってくらい優しい。シャイ。無口。口下手。本番中、楽屋はおろか舞台袖でも台本を離さなかった。台詞覚えてなかったのかな。でもストイック。そして真摯。見倣いたい。ついでにスタジオ入って一緒にミスチルやりたい。

白井サトルさん

さとちんさん。と呼ぶのは僕だけ。今回の作品のモデルであり、心臓であり、血液であり、骨であり。
バンドのライブや映像含めると共演は4回目になるけど、こんなにも魅力的な男、俳優、先輩はいないよ。マジで。その男気、優しさ、率先してバカなことやるし、後輩のボケも優しく拾ってくれる。男として、役者として、こんなに敵わないと思った人もいない。変態としても。
自分が迷惑をかけている家族をモデルにした芝居を上演することに対する後ろめたさのみならず、実の父親を演じるプレッシャー、難しさも計り知れないくらいあったはずなのに、それを全く出さない。その強さ、周囲に対する気配り、盛り上げようとしてくれる姿勢はほんとにカッコよかった。
個人的には、号泣する王子演じる高校時代の衛を抱きしめる時の顔が、もう、言葉にならん。父親としての優しさ溢れる表情。たぶん舞台袖の方が見えやすかったんじゃないかな。この人の子供になってみたいとすら思って役所に養子縁組の用紙を提出しかけた。
ギタリストとしてもええ音出しまっせ。でもすぐ脱ぐ。

G.串田さん

お疲れじゃったね!!!!!
公演終了後、こんなに疲れて抜け殻になってるゴブさんを見るのは15年の付き合いの中で初めてだった。それだけずっと気を張ってたんだと思うし、自問自答を繰り返してきたんだと思う。ほんとは昨年末に上演する予定が、完成度を上げるためにここまで引っ張ったんだからその期間も長かったわけで、そりゃもうしばらく何もしたくなくなりそうなものだけど年内も来年もその先もフル稼働。この人の活動ペースを見る度に、とても自分にはできないなと思わされる。
ほんとはまだまだ書きたいことあるけど、これからもお付き合いも人生も続くだろうから、それらがひと段落した時にあらためて。



おしまい。旅は続く。

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