世界にひとつ、ニューカレドニアの砂時計
「ああこれはnoteに書こう」と思って、下書きに放り込んである記事などごまんとある。だが大抵、いつのまにか忘却の彼方へ吹っ飛んでいってしまい、結果、旬を逃した記事たちはその行き場を失う。
今回は台風効果てきめん。先週、日本の台風のニュースを聞いて4年前のニューカレドニア新婚旅行のことを思い出したら、半年前に下書きに入れていた、この砂時計のことについて書きたくなった。
さかのぼること4年前の9月。新婚旅行で訪れたニューカレドニアの首都ヌメアから船にゆられること数時間。絶望的な船酔い後に待っていたのは地上の楽園、イル・デ・パン。
イル・デ・パン滞在の最終日。夕方のフェリーまでの待ち時間、Otto氏の発案で、海岸沿いのゴミ拾いをすることにした我々。黙々とゴミ拾いをするなか、北海道ミルクの飴の包み紙を発見して激おこしている様子のわたくしがこちら。
このとき、ゴミを拾うついでに手持ちのペプシコーラのボトルを綺麗に洗って、ビーチの砂を詰めていた。というのも、社畜時代によくぶらぶらしに行っていた東京の下町は谷根千。そこに砂時計専門店があって、たしかオーダーで砂時計を作ってくれたような気がしていたのでね。
帰国後、間違って捨てたりしないように、同じく島で拾ってきた綺麗な石とか貝殻とかと一緒に袋にくるんで、実家の私の部屋の片隅に保管。「次に日本に帰ってきたら砂時計を作ろう」と心に誓いつつ、バタバタと故郷を離れてフランスへと旅立った。ここまでが2019年秋のお話。
4年後。今年の1月から2月にかけて、Otto氏とともに念願の日本一時帰国を果たした。
実家の私の部屋は、たまに下の妹が東京から帰ってきたときに使うくらいなので、出て行ったときとほぼ変わっていない。ペプシボトルのあの砂も、そのままの状態で残っていた。よし、4年越しの思いを叶えよう。
私は1ヶ月くらい滞在できるけど、Otto氏は2週間で先にフランスへ戻るので、それを見送るついでに2泊ほど東京に滞在することにした。
東京にはトータルで約13年住んだけど、用事を済ませに行く場所、という感じで驚くほどに故郷感というものがない。大都会ゆえ?
両親にホームまで見送ってもらって、新宿まで。俺は実家でお留守番につき、Otto氏と水入らずのちょっ旅である。
壁紙にしたいレベルの旅のおとも。駅のニューデイズで母が好きなもの買っていいよと言ってくれたので、ただただ好きなものを放り込んだ結果がこちら。電車で食べるゆでたまごが好きすぎるんだってば。
初ジョッキ缶、いただきましてん。これすごいねえ。さすが世界のアサヒだわ。
いつも決まってお世話になるのは、中央区に住む叔母宅。
夜ごはんに焼き鳥をご馳走になって、大都会の夜景を見ながら帰宅。
翌日。Otto氏の帰国は羽田の深夜便なので、日中に砂時計プロジェクトの実現を図る。まずは銀座に寄り道して朝散歩。
銀座一丁目から有楽町にむかっててくてく歩いていると、Otto氏がある建物を見ながらふと、「ギュってなんだ?」とのたもう。ギュ・・・?
これのことか!GU。
爆笑してしまった。
昔はプランタン銀座、御用達だったんだけどな私。プランタンカードも持ってたくらいだし・・・。叔母も言ってたけど、銀座はどんどん変わっていて全然ついていけないよわたしゃ。
有楽町から山手線にのって、目指すは日暮里。谷中銀座まで。
商店街を進んで少しして、左方向に小道がある。たこ焼きやさんの隣が、目的の砂時計専門店、Sablier de Verrier(サブリエ・ド・ヴェリエ)。
店内には、所狭しと色々な種類の砂時計たちが並ぶ。
「あのぅ・・・こちらでこの砂を使って砂時計オーダーできますでしょうか?」とおずおずしながら尋ねると、「はい、できますよ」と女性の店員さんが快く対応してくださる。
こちらがオーダーメイドできるモデル。砂によってオーダーできるモデルが限られてくるようだけど、ニューカレドニアの砂をお見せしたところ、粒子がとても細かいのでたぶんどれでも大丈夫だろうと。
隣のOtto氏は「ユイの好きにすればいいから」と傍観体勢。私、大変優柔不断な性格なもので、Otto氏がオナカスイタと痺れを切らすくらい悩みに悩んで、結局、3分タイプの砂時計をオーダー。
フランスに戻るまで2週間くらいしかないけど、もし間に合えばで構いませんので・・・と、実家宛着払い用の配送料も支払いしてお店をあとにした。
ふう、4年越しのプロジェクト実現、とりあえずオーダーまでは完了。おつかれ私!ありがとOtto氏!(砂時計代は氏が払ってくれたラッキー)
こうしてひと仕事終えた後、ランチでもしようと浅草まで行ったけど、どこも信じられないほど激混みしていて入れなくて、歩きまくって結局田原町のコメダでランチをするという。。東京、まじで人多すぎじゃない?
夜、羽田までOtto氏を見送ったら、翌日は銀座と新宿で買い物をしてあっという間に東京滞在、終了。次回はもっとゆっくりしたいものだ。
時はあっという間にすぎ、フランスへ戻る2日前、憂鬱な気分まっさかりなところにそれはやってきた。
小さな小包を開けると、メッセージカードとともに、プチプチで厳重に梱包された砂時計がお目見え。
世界にひとつ、オーダーメイドの砂時計。
思い通りの仕上がり!素敵・・・!
たぶん通常よりもちょっと急ぎ目で作って送ってくださったのだと思う。お心遣いに感謝。
一万キロの距離を手荷物で大切に持ち帰って、北フランスでの私のご褒美タイムを支えてくれていますよ。
8月になっても相変わらず寒くてブルブル震える今年の夏だけど、世界でひとつのこの砂時計を手に取るたびに、あの青い海と白い砂浜を思い出してちょっとだけ温かくなった気がするのである。
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