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2023年版:有斐閣の編集者が新入生におすすめする本:経営学

こんにちは、有斐閣書籍編集第二部です。

3年前に好評をいただいたシリーズ記事「有斐閣の編集者が新入生におすすめする本」の続編として進めている企画。
今回は、経営学編です。編集部の部員1部員2に話を聞いていきます。

いま、新入生におすすめする1冊目

——前回(2020年)の記事から時間が経ちましたけど、いまあらためて新入生や初学者に「1冊目におすすめ」できる本はありますか?

部員1:前回お話ししなかった、ストゥディア・シリーズのラインナップをご紹介したいと思います。この間に出たものもありますので。

部員2:おぉ!!! ついに!!

――(!?)、いやいや、そういうのは私やりますから! なんでわざわざ仕込んだみたいな、大げさな登場を!

部員2:ショーワなの。ごめんね。

――まあ、私も昭和生まれですけども……

部員1:はい。本題、本題に参ります。ちょうど「1冊目」にぴったりな本ばかりなんですよ。まずは、『考える経営学』です。はじめて経営学を学ぶ人を対象にした入門書です。

この本の新しいところは、以下のような経営観・企業観の変化を前提としているところです。

「はしがき」『考える経営学』

――右側が「新しい経営観・企業観」ですね。たしかにこっちのほうが、なんとなく“イイ感じ”がします。

部員2:ヘイセイっぽい?

――や、もう令和も5年ですからね!?……それはともかく、左側はほら、やっぱり「管理」って感じするじゃないですか。あと「大企業」って雰囲気もあるかな。働く側からすると「寄らば大樹」ですかね。それに比べると右側は、新しくてまだ小さな企業とか、転職が当たり前自立した職業人の集まりが持つ雰囲気を感じます。

部員1:するどいですね~。おっしゃる通りで、右側がなんとなく好ましいと思われるくらいに、日本の社会も変化してきているんですよね。それに伴って、経営実務や経営学に求められるものも変わってきています
『考える経営学』は入門書なので、これまでの経営学が中心的に扱ってきた「管理」的な議論もきちんと踏まえていますが、近年の新しい見方・考え方も積極的に紹介しています。お若い学生さん方がこれを読んで、企業の活動や企業で働くことに未来を感じてくださったら、本当に嬉しいですね。

――未来を感じられる教科書って、いいですね!

部員1:もう1冊、概論科目の教科書をご紹介しましょう。同じストゥディア『はじめての経営組織論』です。組織論戦略論という経営学の二本柱の一方についての、これまた入門書です。

この本では、組織が何からでき上がっているのかということから丁寧に説明しています。1つ、本書の最初のほうに出てくるおもしろいところを特別にお教えしますね。組織の定義には、人が含まれません
……ちょっと意外じゃない?

――え? 意外も何も、だって「企業は人なり」とか、よく聞きますよ。

部員2:ショーワっぽい(笑)

――うっさいな! でもほんと、なんで人が含まれないんですか?

部員1:どうしてそう考えるのかは、本書を読んでのお楽しみにしておきましょう。こんなふうに、日常的な理解とは少し異なる観点から、組織について筋道立った見方のあることが学べて、とても勉強になりますよ。

部員2:理論的な内容ですが、だからこそ、じつはビジネスパーソンにもオススメです。会社で働いていると、組織に属していることに対して心がざわついたりすること、ありません?

――ある、、ありますね……めっちゃ、ありますなぁぁ!!!

部員2:なんかあったんですか?(笑) そんなとき、本書を読んでいれば、少し落ち着いて周りを見直せるようになるかもしれないと感じます。経営学って、経営する人(つまり経営者)にとっての学問という面がどうしてもありますが、それだけじゃないんですよね。本書を読むと、経営学ってどんな人にとっても「ためになる」学問だと実感します。

――これはもう……いま自分の中でマスト入りしました。積ん読の一番上に載せましょう!

部員2:で、読まない、と。

――読みます、すぐ読みますって!

こんな本が出ています

——「1冊目」にかぎらずに、「経営学の本が読みたい」「これから勉強してみたい」という人に、何かおすすめしてもらえますか?

部員1:ここまで経営学をお勧めしておいて、いきなり卓袱台をひっくり返すようなタイトルですが、経営学の危機という本が話題です。

――ほう、危機。タイトルはトム・クランシーみたいな雰囲気ですが。

部員1Management Studies in Crisisが原題の翻訳書ですが、経営学の研究者が、学界内部者の観点から、この分野の研究・教育が抱える問題点を縦横に論じています。

――佐藤郁哉先生の翻訳なんですね。話題というのも納得です。

部員1:経営学は、いわゆる「領域学」の一種で、対象を共有する多種多様な研究の集まりですから、厳格な体系がなく方法論的な制約も強くないといわれています。著者は、そういうことから生じる研究の誠実性(の欠如)や、実社会との関連などを、問題として取り上げているんです。

――人によって、大いに思うところがありそうなテーマですね。

部員1:いろいろと考えさせられますが、経営学に限らず、大きくは社会科学全体、あるいは理科系も含む学問全体の問題なのかなという感想も持ちました。研究不正のニュースなどが絶えない昨今ですから。

部員2:学問が社会でどう「役に立つ」のかって、きっと永遠のテーマですし、それをさまざまな観点から考察した本が話題になるのは、健全なことではないかとも感じるんですよね。

この本のここがおすすめ!

——ありがとうございました! 最後に、もうちょっと踏み込んですすめたい「これは!」ってありますか?

部員2『経営学の危機』のテーマは、最近さかんに論じられている「レリバンス」の問題ですね。有斐閣からも、これを取り上げた本が出ています(組織行動論の考え方・使い方)。

少し上級者向けなこともあって、研究者志望の学生さん研究成果を受容する側のビジネスパーソン、いずれにとっても有益な議論が含まれています。

部員1組織行動論という各論分野のテキストではあるものの、経営学全体を見渡す大きな視野で執筆されています。骨太な本ですが、ぜひ挑戦してみてください。

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