見出し画像

日本のスタートアップに期待はしない

凄いネガティブなタイトルになってしまうが、しょうがない。
政府も支援してスタートアップで成功(ユニコーン企業を創出する)べく税金を使っている。

この記事は、大手医療機器メーカーで12年、ベンチャー企業4年で、スタートアップに転職して2年の僕が思う、
ユニコーン企業創出の理想(妄想)がとても難しそうだという話だ。



スタートアップの成功ってなに?


お金はある方がいい。それはアタリマエだ。
そして、スタートアップの成功とは、正確にはそれぞれの企業が定義することでもある。
ただ、スタートアップ支援、助成金、"10兆円規模のファンド"といった「資金」の話題がやはり多いことも事実であり、そこ(資金的な部分)が成功と考えられることも少なくないだろう。

日本の大手企業で”余らせているお金”を集めて「ファンド」と称し、スタートアップに投資する(いわゆるベンチャーキャピタル:VC)ことは、別に今回のように政府が取り組む前からずっと行われてきた。

また、NEDOの助成金不正利用が話題になったり、助成金も以前から活用されている。しかし使い勝手といえば、とくに不正のせいで余計な書類管理等が増えたNEDOの助成金はうんざりする。余計な書類仕事が増えて、資金サポートで感じるほどのスピード感はまったく感じられない。
そのせいかどうかはわからないが、NEDOやAMEDに応募する人も多くはない。競争相手が居ないのに通らないこともあるし、よく解らん。


内容を少し詳しく見ていくと…

政府が掲げている政策としては、

スタートアップへの投資額を2027年度には10兆円規模に引き上げるほか、スタートアップを10万社創出し、その中からユニコーン企業を100社創出することを目標に掲げている。

【まとめ】岸田内閣が発表した「スタートアップ育成5カ年計画」、59個の具体的な取り組み内容とは? | DIAMOND SIGNAL

2022年当時、ベンチャー企業が約10,000社に対してユニコーン企業6社だ。
ベンチャー企業を100,000社(10倍)に増やし、その中からユニコーン企業が100社になると良いなぁということ。
つまり、10倍の投資をしたら成功例は10倍になるだろうという理屈なんだが、明らかに無茶な話だと感じる。
ユニコーンになれる企業というのはそんな単純計算ではない。
恐らく創出されるユニコーン企業は10社から20社に増えるくらいの確立じゃないかと思う。そんな、お金を入れたら入れた分成功するのであれば、10倍どころか、もっとお金を入れたらいいし、とっととやればいい。あまりにも設定の根拠として疑問に思う数字だなと感じた。


もう少し現実目線で、この状況を考えてみる

政府が掲げた2022年10月当時で日本のユニコーン企業は6社とは、
プリファード、スマートニュースなどを言うが、
じゃあ、日本国民の皆さんは残りの4社の社名言えますか?

そういうものに税金使われようとしてますよ?
知らなくて大丈夫ですかね。(僕も知らなかったけど)

言えなくて当然だなって思います。
それらのユニコーン様は僕らの生活の何を変えてくれましたか?
いや支えてくれていますか?
スマホで見るニュースがヤフーからスマニューに変わった程度でしょ。

後は、10億ドル以上の「評価額」というのも気になる。
評価額ってなに?
というなんとも言い換えることのできないものだよね、
一般の人にとっては。

いうなれば、「なんか凄そう」程度だ。

その、なんか凄そうな企業を、同程度(上回らなくても)でも「成功」とされる目標なんだ。それを創出するために税金が大量に投資されるわけだ。
なんともおもしろい。

その一位のプリファードですら、1000人以下の雇用しか生み出していない。
ちなみに、ユニクロ(ファストリ)は32,000人以上。もちろんBtoBデータサイエンスとアパレルで全然違うことは承知だが、雇用を生み出しているという意味、国民が労働(納税)義務を果たすことへの貢献としての比較だ。

だから、
ユニコーン企業を創出するっていう目標設定自体がイマイチ
だよなって思う。

だって、それを達成すると何が起こるのかわかりにくい。

世界的な競争力?
円高になるの?
貧困は無くなりますか?
目の前の生活はどう豊かになるの?
それは僕が豊かになるの?
実際何が変わるんですか?
正直僕もわからない、教えて!!


だから政策自体に賛同できない


つまり政府自体がイマイチな目標設定しているということだ。
政府がそんなだから、スタートアップ企業も変な(ズレた)目標設定をしてしまいがちなんだ。
要は時価総額、評価額をナンボにするみたいな目標を立ててしまう。
そんな数字は自分たちでコントロールできない数字なので、それを追いかけたとて何もできない。
元来、時価総額をナンボにしよう!と始めた会社なんてないはず。
別のことを目標として掲げていたのが、
いつの間にかわかりやすい数字というものを追うようになっていった。


つまり金をばらまいて、目的を見失ったバカなベンチャー企業を量産したとて、ユニコーン企業は生まれない。



足りないのはお金じゃないんだ


実は足りないのはお金じゃなくて「考え方」なんだよ。
実は内閣の資料にも、「人材・ネットワーク構築」という部分があり、とても重要なことだ。そしてそれは正しい。

でも、そもそもの考え方が解っていない日本人に、ユニコーン企業を多く輩出できない日本人に、誰が誰にどうやって人材育成するっていうんだ。

その教師はユニコーン企業を作ったの?
吉本興業のNSCに似てるよね、未来のダウンタウンをつくるっていうけど、講師はダウンタウンじゃないし、ダウンタウンを作ってもいないって話と同じだよね。
そうじゃないよね。


別の視点で言うと、そもそも「何を目指すのか?」という中で、「ユニコーンを目指す」企業ってあんまりない。というか、もうそれはバカっぽい。

願わくば、
「結果的にユニコーン企業と呼ばれるようになっていた」が望ましい。


実際の話をすると

今現在、僕が所属するスタートアップも、資金調達をして、お金は多少ある。しかし考え方が上記と同じく”バカ丸出し”なので、調達を受けることが出来てハッピー!って思っている。
淡い期待として、調達先のVCがもっと介入してきてくれるかと思ったけど、日本のVCもバカだから、何も言ってこない。この計画で本当にそんな金額のお金を投資するなんて。。。
もう何も期待できない。俺の言うことも聴かない、もう助けてくれ。近々、結果が出るだろうけど、そう長くは居られないのかもしれないし、そうでもないのかもしれない。ただただバカバカしい状態だ。

はっ!つい愚痴が出てしまった(笑)


願わくばこうあってほしいという話

国策としてやるべきは、起業を分析することだろう。
起業のノウハウ、成功体験や失敗体験は、個人所有のノウハウになっている。何度も挑戦し、獲得するノウハウがある。

そういったノウハウと共に資金があれば、もう少し成長するスタートアップは増える可能性はある。

ただ残念なのは、ノウハウはすでに共有されている。

だが一番の問題は、そこから学ぼうとする経営者が少ないことだ。
それが現在のスタートアップ界隈で成功しない決定的な理由だと僕は思う。

なので、国策として人材育成・教育をすることで、期待はわずかに持てると思うが、あくまでも僅かだということ。


出る杭は打たれる日本文化


みんな仲良く手を繋いでゴールする徒競走は、もうなくなったらしい。
だけども、いまだに日本人に深く根付いている「出る杭は打たれる」文化。
その文化の中で、まさに”出る杭”である存在がユニコーンってのは矛盾すぎるだろ。


育ってきた環境が違うから

たかが5年程度の教育で、そのマインドが付くはずない。
起業家が起業を考えるに至る生まれてから少なくとも20年弱かかっている。
20年弱しみこんだ「出る杭は打たれる文化」を簡単に覆すことはできないんじゃないかと思う。
結局、今の比率と同じ程度(6/10,000社)の「出る杭」しか現れない。

今現在の子供たちは、多様性とか、出る杭とか、そういう類のものに寛容になってきているとは思う。(だが、いじめはなくなっていないが)

今の子供たちに、資金援助と正しいノウハウを叩きこみながら、ハンズオンしていく企業が10万社あれば、確かに100社くらいは出てくるんじゃないだろうかとは思える。


人数的にもかなり無理がないか?

10万社のスタートアップ、つまり10万人の創業者ということになる。
残念ながらそんな起業家の頭数も、それを支える周辺人材も、
この国には当然、十分な人数はおらんだろ。

つまり「創業者だけ量産」したとて、
政府が達成しようとしているユニコーン100社なんて、
とても成立しない数字じゃないか。


世の中のスタートアップのゴールはIPO?


いわゆるExit(出口戦略)だが、
多くのスタートアップはIPO(Initial Public Offering新規上場株式)を目標の一つとしている。
それは、先行して投資したVCなどへ利益を還元するためだ。

IPOした際に跳ね上がる株価上昇による差額がVCの投資対効果だ。
その効果が莫大なので、いろんな(そこそこ可能性のありそうなスタートアップ企業)にお金を投資し、リターンを得る。当たればラッキーな宝くじみたいなもん。大体そんな感じ。
そこそこに可能性のある企業ってのがミソで、放っておいてお金が増えればラッキー。一部を除いて、介入して成長させようとはしないことが多い。

IPOに至るまでの再現性を高めようとか、
ノウハウを共有し、IPO出来る確率を高めようとはしない。
少なくとも、現職の環境は何も変わらない。

このようにIPOやユニコーン企業を目指しているようでは
うまく行かない
ように僕は思う。


口では綺麗ごとを言うけど、諦めることだって重要

IPOを目指したり、多額の評価を受けることも、
実際に大きなお金を稼ぐことだって、ものすごいチャレンジだ。

そもそもIPOっていうのは、目的ではなく手段だ。
大きなことをするための資金を一般投資家からも広く募ること。

デカいクラウドファンディング(この説明、もはやこっちの方が解りやすいという矛盾感あるが)と同じなので、やっぱりIPOをゴールとするのは違うが、VCなどから資金調達をすると、どうしてもそうなりがちだ。VCから資金調達をすることのデメリットが、その利益の還元の義務を負うことだ。

もう一回いうけど、「もっと大きいことをやりたいから広く資金を調達する」ための方法としてIPOがあるんだ。

そういう超デカいクラファンに登録するだけでもいろいろな準備やシキタリ、関門突破が必要になる。それがIPO準備だし、ただただそういうものだ。

ただただ、お金を集める方法としてIPOというものがある。(厳密には、お金だけでなく、知名度や企業の安定感など、人を集めることにも寄与する)
いわゆる、「上場企業」というステータスだ。

その上場という高級クラブの”シキタリ”に従うことがどうしたって相性が悪いと思う人たちだっているし、それが気に食わないならやめてもいい。ただ、VCから資金調達を受けなければいいし、投資を受けた分のリターンをVCに与えられるほど利益を上げたらいい。


強すぎる創業者の想いにより、結果的に上手くいかない


松下幸之助とか、偉大な創業者像が日本人には刷り込まれている。
だから、創業者が持っている能力以上の仕事をしなければならず、
経営の失敗へと陥るケースも多くあるだろう。
創業フェーズの”小さい組織”であればまだ運用できても、人が多くなると途端にワークしなくなるのは、人のことが解っていない、勉強できていない、無知であることを知らないことが原因だ。僕の前職がそうだ。

創業者(アイディアを創出した人)は、必ず社長やCEOとしてトップであり続けなければならないわけではない。出来る人に譲ることが出来ないで、成長を止めてしまう(意図せず止まってしまう)ことなんてのはよくある。
創業者CEOが限界を感じ、それ以上の成長が出来そうな人にCEOを譲るなんてことは最近では聴くようになった。

IPOにこだわるのも、そのあとの成長を夢見るのも創業者だからってのがある。自分の想いを実現する会社なんだ、我が子のように思い、それが一人前になるのを自分の手で行いたい。
そういう強すぎる想いが、適切なExitを逃すんだ。

創業当時の想い、目的を見失わずに、果たしたいことに向かってほしい。
あなたは会社の目的、あなたの夢を実現したいのか、IPO社長になりたいのか、どっちだい?その夢はあなたが社長じゃないといけないのかい?


日本のスタートアップには期待しない


これまで書いたように、やっぱり日本人気質的に
スタートアップはあってないと思う。
日本人の良さ、強みってそこじゃない気がするんだ。

我が子を失敗と呼びたくないのか、
上手くいかないことを認めたくないのか。。。
でも本当に大事なことは、
そういう失敗の中から何を学ぶかだということだ。

日本の企業は、失敗できないし、失敗しないように計画を立てる。
だからスピード感が失われ、イノベーションが起こらない。

でもな、日本の国の中で、使える資源は自分たちだけなのか?
オープンイノベーションって、本当に言葉だけだよね。

僕が思うExit戦略はこうだ。

大学発ベンチャーや、アイディアを持ったベンチャー企業に投資をし、
大企業にM&Aをしてもらうことだ。

国策としてお金を投資するのは間違っていないが、其れとは目的が違う。
ユニコーン企業を創出するなんてことではなく、
大学などの技術から、実社会への応用となる部分に投資する。
それはつまりはスタートアップに投資するのと同じだが、
実はゴールが違う。

基礎的な検証(PoC)へ投資を行い、大企業が安心して(間違わない、失敗しない)M&Aできる「技術の確立」を「最小単位」で目指すこと。

IPOの滑り止めとしてのM&Aでは、ガバナンスやら組織の融合にコストがかかるが、初めからM&Aを狙えば、組織も小さく、それほど大企業との軋轢を生むほどではない。IPO目指して中途半端に大きくなった組織なんてのはとても扱いにくい。


多分、これならできる日本のスタートアップはあるはず。


大企業で起こっている事

今の日本の大企業からはイノベーションが起こらないと嘆いている。
つまり0 to 1が出来ない。

それは、大きくなった組織ではチャレンジできないし、
組織の動かし方、責任の持ち方も大きく違う
からだ。仕方がない。


逆に日本のスタートアップで起こっていること

国内スタートアップは、たぶん二極化されていて、
① 0→1 しようとして、0→0.001 にしかなっていない
➁ 0→1 はできても→10→100 といった拡大できない

①はまさにイノベーションの難しさや資金の無さが原因
➁は上述した、創業者の無駄なこだわり・能力の限界により成長できない

この両方を乗り越えて初めてユニコーンになるんだけど、
二つは力の使い方が大きくことなるわけ。
それを一人の経営者がやるのは、解っていたって簡単じゃないよ。


日本が税金を投じてやるべきこと

よって、スタートアップ支援として①に投資し、
0から1まで作ることに集中する。

それを大企業に譲渡(M&A)し、大企業が大きくする。

簡単なことなのに、あまりやられていないんだよな。
一人の起業家が夢見るんじゃなくて、国として産業・経済を大きくすると考えるなら、この方法だって良いじゃない。

何もユニコーン企業(0→1000)を無理やり創出しなくたって
いいと思いませんか?


さいごに


まぁ、ただスタートアップとか、起業がどうのこうのという話題なら
一般的にはそれほど気にしなくてもいいんだ。
でも、税金を使って支援するとなると、話は変わってくる。
そんなことにお金を使うくらいなら、

少子化問題何とかしろよ!とか、
俺たちの年金はどうなるんだ!とか、
ミサイル防衛どうすんだ!とか、
復興支援て本当に終わったんか?とか、

上げたらキリがないほど、
暮らしている中で、疑問や不安ってあると思うんだよね。

だからね、それを動かしている政治に無関心でいいのかな?

もちろんさ、日本のスタートアップに期待はしないよ。
だけど、日本の政治に期待しないってなるのはまだ早い気がするんだ。

だから僕は、誰が読んで、誰の共感が得られるかもわからない、
こんな記事を書いているんだ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?