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法改正の効果を体感しにくい声多数…職場の発達障害者への差別・偏見に関するアンケート結果③

筆者は世界自閉症啓発デーおよび発達障害啓発週間(4月2日~8日)に合わせて、「職場の発達障害者への差別・偏見に関する緊急アンケート調査」を実施しました。職場で発達障害者が受けた差別や偏見の状況を明らかにし、障害者雇用促進法の効果を検証すると同時に、障害者雇用訴訟に対する発達障害者の意識についても調査しました。

回答内容は回答者の個人的体験などを基にした印象を答えた主観的なものであり、必ずしも最新で正確な情報であること、普遍的であることを保証するものではありません。しかし意識調査とは、客観的でなくても断片的であっても、矮小化せず、当事者の声を拾い、可視化することが大事だと考えています。

その集計結果を発表します。今回は3回目で、障害者雇用促進法の効果についての意識調査です。

Q.障害者雇用促進法には差別禁止や合理的配慮に関する規定がありますが、あなたに対する差別や偏見は改善していると思いますか。

有効回答22件
とても改善していると思う 1件
まあまあ改善していると思う 5件
〇障害者雇用で工場で働いている。耳栓をしてもokだったり、水分を途中でとっても良かったり今までになかった配慮を受けている
〇障害者雇用で2社、働いた経験がありますが、露骨ないじめや差別に遭遇したことはありません。偏見については、個人差があるように感じます。
〇まだ経験していないので、期待を込めて。
〇合理的配慮を要請する機会は担保されるようになったとは感じているが、合理的配慮自体が要請者本人と要請先との本来の関係性(労働契約など)を前提としているため、本質は交渉の機会であり、交渉に臨む検討・準備・対応のコスト自体が要請者を軸に時には双方にとって「過重な負担」に繋がりやすい現実を垣間見るように成ったから。
あまり改善していないと思う 10件
〇配慮を得られず退職、転職を繰り返すする当事者が多いから。
〇障害をクローズにしているため、差別はない。ただ障害者は(うちの部署にはいない)かのような考えをしているように感じる発言が時々ある為、バレれば排除されると考えている。
〇障害者に対しての差別や偏見に関してのニュースを見聞きするから
〇配慮はしてくださるが差別や偏見自体はあると感じる
〇発達障害者や精神障害者をふるい落とすための「不適正スカウター」などのテストが企業に流行っている。
〇噂話は、直ってないから。
まったく改善していないと思う 6件
〇家族にも理解されていない
〇上にも書きましたが、精神の病気とひとくくりにされたり、会社に不都合なことがあればこちらのせいにされたり、とても障害者の立場を守っているとは言えないと思います。
〇現職の会社において差別禁止についての教育が効果的に行われたことはない。差別や偏見を持ってはならないと表層的な教育をされても、具体的にどんなことが差別や偏見にあたるのか理解できないレベルの人には効果がない。合理的配慮については存在も言葉も知らない人がほとんどである。
〇そもそも法定雇用率を守る気さえない余裕のない中小企業が多く、そういった中小企業に勤めると組織が大きくないがゆえに偏見が蔓延していることが多いため
〇特に合理的配慮について、配慮を求めるための仕組み自体が、発達障害者にとってフェアでない、合理的ではないと感じる。

Q.法定雇用率が2021年に2.2%から2.3%に引き上げられましたが、採用されやすくなったり、働きやすくなったりしたと思いますか。

有効回答22件
とてもそう思う 0件
まあまあそう思う 3件
〇障害者雇用の配分が増えることは良いこと。ただし農園や特例子会社のような「まとめて雇って社員から見えないところに飛ばす」考え方は全くなくなっておらず働きやすくなるかは疑問。
〇現在障害者雇用を受けている。制度として決められているのは心強い。
あまりそうは思わない 12件
〇障害物枠で採用されなかったから。
〇働きやすさに関しては変わっていないと思うから。
〇"現職は雇用率が満たせなくなっているが、障害者雇用や合理的配慮について自ら理解を深めようという姿勢はない。
労働者側としては、スキルがあり配慮事項において企業の負担感が少ない障害者はより働きやすくなったかもしれないが、そうではない人にはあまり影響がなさそうである。
周囲では、配慮の不足した会社からホワイトな会社へ転職して現職に感謝しながら働いている知人が複数いる一方で、理解されることを諦めて不遇な環境で働き続けている40代以上の障害者も多い。"
〇"障害者雇用の求人は2~3年前よりは増えたが微々たるものだし、
給与も普通の人とかなり差があり東京都で月給20万を下回ったり単純作業のみを要求し合理的配慮や差別がない求人を見つけること自体がかなり少ないため"
〇2021年に障害者雇用で転職活動を行っていましたが、職歴が増えるほど就職が困難になるのは変わりないと感じました。全体の雇用数は増えているかもしれませんが、個人的には厳しいものを感じます。
〇現在就活中ですがなかなか決まらないため。とても不安です。また雇用率も身体障害者がほとんどで精神・発達障害者の雇用率はかなり低いため。
〇企業側の認識や意識が乏しいと思うから
〇経歴を積めなかった30代以上の人物と労働契約などを結ぶ際に雇用主側が抱くで有ろう、社会通念上の契約リスクへの心理的ハンディ緩和等のフォローアップが別途で必要だと思っているから。
〇できれば精神よりは身体の人、見た目とかでわかりやすい障害者を採用したいという企業側の思惑に変化はないと感じる(企業で働いてての感想てす)
まったくそうは思わない 6件
〇求人票のミスマッチがひどい。障害があるのにフルタイムは無理だ。
〇よく分からない
〇変化は全く感じない。私が地方在住であることも影響しているかもしれない。

講評~雇用率が上がり、教育がされても…

法改正の効果を体感しにくい声が大半、という結果は、予想した通りでした。

「不適正スカウター」のサイトは私も見ていますし、これを数千社が導入しているという話も目にしています。サイトに「発達障害者や精神障害者をふるい落とすためのテスト」と明記しているわけではないですが、結果としてそのような特性のある人をふるい落とすことを意図しています。そういうテストを安易に導入する会社のカルチャーはどういうものでしょうか。

「地方では変化は全く感じない」という声も。この解決策がリモートワークだと思います。私もオポチュニティ創出のため頑張らなければ。

また「まあまあ改善していると思う」人であっても、「合理的配慮の交渉に臨む検討・準備・対応のコスト自体が、双方にとって過重な負担に繋がりやすい現実」や、「農園や特例子会社のような、まとめて雇って社員から見えないところに飛ばす考え方」を答えたのも引っかかります。

「差別や偏見を持ってはならないと表層的な教育をされても、具体的にどんなことが差別や偏見にあたるのか理解できないレベルの人には効果がない」という回答。筆者が障害者雇用訴訟の取材をしていても、被告会社が平等カルチャー浸透や無意識の偏見防止のための優れた研修プログラムを持っていたのですが、それはどのくらいの効果だったのでしょうか、と思うのです。

次回は、障害者雇用訴訟についての意識調査です。


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