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「直感」文学

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「直感的」な文学作品を掲載した、ショートショート小説です。
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2017年11月の記事一覧

「直感」文学 *孤独島*

「直感」文学 *孤独島*

 この島に来る人は皆、「独りでいることが好きな人」ばかりだった。

 独りでいることが好きだというのに、その人たちが「集まる」っていうのは何だか可笑しな話だとも思うのだけど、それが前提条件としていると、皆その規律を守るのだった。

 ・人に話しかけない

 この島でなくても社会ではそれは普通にあるのかもしれない。
 特に僕がそれ以前にいた東京という街では。

 でもこの規律があることによって、僕は

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「直感」文学 *寂しいなんて嘘*

「直感」文学 *寂しいなんて嘘*

 「寂しい」

 私は特に意図した訳でもなく、そのような言葉を吐いた。

 マモルは少し困ったような顔を見せてから、「いや、でも行かなくちゃいけないから」と少し動揺しながら言うのだった。

 毎日の朝の決まりごと。

 私が彼を仕事へ送り出す時、私は決まって「寂しい」と口にするけれど、

 本当は「寂しい」なんて思ってはいない。

 彼にはちゃんと仕事に行ってもらわないと困るし、「寂しい」と言った

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「直感」文学 *雨なんて降らないって言ったのに*

「直感」文学 *雨なんて降らないって言ったのに*

 強く叩きつける音が耳の中に留めどなく入り続ける。

 天気予報では今日1日晴れる、と言っていたはずなのに、今私の視界の中には、その”今日”の雨が映し出されているのだった。

 「降らないはずじゃなかったの?」

 不意に漏れた言葉の中には、溜まりに溜まった不満が含まれ、また落ち込む心を隠せもしなかった。

 もちろん傘は持っていない。だって降らないって言ってたから。

 でもそれは私だけではない

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「直感」文学 *たまたまその時に僕がいた*

「直感」文学 *たまたまその時に僕がいた*

 Aが突然、

 「お前と旅行に行きたいんだ」

 と言い出した。

 僕は普通の感覚を持っている人間だから、「これは何か裏があるのではないか」と考えてしまう。

 だからそれを意のままに

 「突然なんだよ。お前、何か企んでるんじゃないだろうな?」

 と聞き返す。

 「いや、なんだよ、お前、それ。何にも企んでないさ。ただ、なんとなく温泉でも行きてーなーって思った時に、たまたまお前が横にいただ

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